哲学思想系列
ヨーロッパを主とする伝統的な哲学思想を研究する系列です。本学の哲学科はとりわけドイツ哲学、スコラ哲学などの分野に長い研究の歴史をもっており、この系列の内容が研究の中核を占めてきました。具体的には古代ギリシア・ローマ、ラテン中世、英独仏の近世をへて現代までに至る西洋の哲学思想史、および形而上学、認識論、自然哲学、科学論、人間論、自然神学、論理学などの各専門分野などの研究が含まれます。ソクラテスやプラトン、アウグスティヌスやトマス・アクィナス、デカルトやカント、フッサールやハイデガーなど著名な哲学者たちの哲学、また存在や認識、言語と知識、現象学や科学哲学などの哲学の主要問題を、根本的かつ徹底的に追求していきたい人がすすむ系列です。発足当時、本学科のほとんどの教員は欧米人であり、西洋哲学研究の伝統は今日でも本学科のすべての系列の根本をなすものであることから、他の系列に比べて科目履修の仕方が優遇されています。
倫理学系列
現代の社会状況の中で哲学が果たすべき役割を考えるとき、「われわれは何をなすべきか」という実践的、倫理的な問いに応えることが、ますます重要になってきています。生命倫理、環境倫理、経済倫理、情報倫理、国際間倫理、世代間倫理から社会哲学や共同体論などまで、一般に「応用倫理」とよばれる分野が、20世紀以来多種多様な形であらわれてきました。その一方で、そうした応用倫理を支える基礎については、やはり古典的な倫理学を学ばねばならないということもくり返し主張されてきました。本学科の倫理学系列には、西洋や日本の倫理思想史、生命・環境・情報倫理などの応用倫理学、また社会哲学や政治哲学などの分野があります。本学科の特に重要な特徴としては、すぐに具体的行動に結びつくような実践的研究よりも、それらの行動を人間存在の根底から支えることのできる、基礎理論を重視しようとする視点があげられます。
芸術文化系列
芸術文化系列には、美学や芸術学ばかりでなく、キリスト教思想や仏教思想をはじめとする東西の文化・宗教・比較思想などの分野が含まれます。本学科の芸術関係科目の特徴は、音楽や絵画などに関わる具体的な作品論や分析論よりも、「美」や「芸術」などの基礎概念についての哲学的研究を中核にすえていることです。今日では哲学と美学・芸術学が分離してしまい、相互の対話が成り立たなくなっているような不幸な場面がしばしば見受けられます。本学哲学科ではあくまでも哲学研究を根本に置いて、きちんとした中核のある芸術研究を進めるべきだと考えています。ここでも、応用論に対する基礎研究重視という本学科の姿勢は一貫しています。また、東西の文化・宗教・比較思想の分野は、本学科だけでなく上智大学がその創立以来ずっとめざしてきた方向です。東西文化の学際的交流は、さまざまな社会問題にとって緊急の課題ですが、そのためには根本的な人間観や宗教観を知らねばなりません。芸術文化系列は表面だけの国際性でなく、人間存在の根底からの相互理解をめざします。