VOL.28
2020年卒業
みずほ銀行デュッセルドルフ支店
田畑里沙子さん

ドイツ語を学んだ先の未来

初めまして。ドイツ語学科2020年卒の田畑里沙子です。私は現在、ドイツ・デュッセルドルフにて銀行員として働いています。

学生時に先輩方のブログを読み、ドイツ語を学んだ先にある未来に胸をときめかせていたので、この場で発信できることを大変嬉しく思います。ドイツ語学科での4年間とその後の進路について振り返りながら、こんな進路選択もあるということを皆さんにお伝えできれば幸いです。

ドイツ語学科での4年間

在外履修制度に惹かれ、幼いころからの夢だったドイツ語圏への留学が実現できるドイツ語学科に興味を持っていましたが、ドイツ語に触れたことは入学まで一度もありませんでした。入学してからは想像以上にドイツ語漬けの生活が始まり、その難しさに心が折れそうになりながらも、日々の授業が楽しく充実したキャンパスライフであったことを覚えています。

2年次には念願の海外生活を体験し、半年間オーストリアに留学しました。留学生活への期待値が高かったからでしょうか。初めての長期留学は思っていたものとは違い、やはり日本が恋しいと感じていました。ドイツ語が思うように伸びず、友人がたくさんできるというわけでもなく、現地にいるのになぜか蚊帳の外のように感じていました。このブログを読んでいる現役生の中には、留学中に同じような違和感を感じた方もいるのではないでしょうか。それでも、ずっと見たかった景色が見れて、長年の夢が叶い、総じて満足のできた半年間でした。一方、このときは自分がまたヨーロッパに戻ってくるとは思ってもいませんでした。

もし20歳の自分に戻れるのなら、もう少し行動に移してもよかったかなと思います。ドイツ語があまり伸びないと感じていたのなら、それを打開するために現地にいるからこそできたことがあったはずです。大学のイベントに参加したり、ボランティアをしたり、留学は自分で作るものだと思います。そして、ドイツ語も現地にいるからできるようになる、ということはありません。留学を通して初めてそのことに気が付くことができ、帰国後にドイツ語へのモチベーションが上がっていきました。

帰国後

帰国後、3年生となり、本格的に進路について考え始めました。ドイツ語の検定試験を受ける準備を始めたり、ドイツ語で日記をつけ始めたりしました。副専攻として言語学を選択した私はその分野の面白さに少しずつのめり込んでいきました。

上智大学には様々な言語学の分野が存在し、それぞれの道を極めた先生方がいらっしゃいます。色々なゼミを取る中で言語学を研究したいという気持ちが強まり、大学院進学が私の中で次なる目標となりました。

そして、ドイツ語も少し伸び、ドイツ語圏にて研究するという選択肢が見え始めてきました。周りが就職活動を始め、進路が決まっていく中で自分だけどうなるかわからないという状況に漠然とした不安を抱いていました。そんな中、大きな救いとなったのが先生方・先輩方の存在でした。ドイツ語学科には実際に日本以外で就職をしたり、進学をしたりするロールモデルの先輩方がたくさんいらっしゃいます。具体的に何が必要でどうすればよいのか、そういったアドバイスをいただけたことで漠然としていた不安が薄れ、どうすれば自分のやりたいことを実現できるのかを自分で考えることができるようになりました。私は学問上、ドイツ語よりも英語のほうがストレスなく使える言語だったこともあり、英語で研究できるヨーロッパの修士課程を調べ、受験しました。ドイツはもちろん、オーストリアやルクセンブルクなども候補として受験しました。今後大学院受験を考える方へおすすめしたいことは、大学名ではなく研究内容に注意深く気を配ることです。その理由は次項にてご説明します。

大学院入学

卒業後、ご縁のあったコンスタンツ大学に入学し、言語学の修士課程をスタートさせました。正直なところ、大学はどこにあるかも知らず、とにかく研究内容だけで決めた大学でした。ちなみに、私は多言語教育に興味があり、その分野に精通していた専攻を選びました。良い選択だったと今、心から思います。ヨーロッパ中の大学を調べ、自分の関心ある分野を選択したことで、これがやりたいことだとはっきり分かったためです。大学院生活は正直なところとても大変でした。卒業できないのでは、と何度も思いましたし、成績もとても良いものではなかったからです。それでも、自分で学びたいことが明確だったため、やめるという選択肢はありませんでした。

また、2度目の長期留学は、在外履修とは全く違う生活でした。正規生として生活していたこともあると思いますが、ドイツ語にも自信が少し持てるようになったことで、アルバイトをしたり、近所の人との付き合いが始まったり、日本にいるときと同じような生活を送ることができました。大学院生活で出会った友人たちとの出会いも素晴らしいものでした。言語学研究を通した教育支援や医療支援など、皆熱い思いをもって研究に取り組んでいました。世界中から集まった同世代の仲間たちに大きな刺激を受けながら、研究できた2年間は自分の財産です。大学院は個人で学びを深めることが多いという印象でしたが、コンスタンツでは一緒に課題をしたり、論文も助け合ったりと学生同士の繋がりが強いところも魅力的でした。

無事に卒業できた際に同じ専攻の仲間とパーティーをした時の写真です。

コンスタンツで撮った一枚です。ドイツの冬は長く暗いというイメージがあるかと思いますが、こんな素敵な夕焼けが見える日もあります!

大学院卒業後

卒業後の進路を考え始めたとき、日本に戻るという選択肢は自分の中でありませんでした。ドイツでもう少し頑張ってみたい!その気持ちで就職活動を始めました。ですが、現実はそう簡単ではありませんでした。私は就労経験がまだ無い、いわゆる新卒でした。ドイツでは就労経験があることを前提としている企業が多く、新卒で経験のない私を取ってくれる企業を探すのはとても大変でした。

それもそのはずです。ここはドイツ。ドイツ語ができ、英語ができ、その上で何ができるのか、が求められます。しかし、自分の現状を変えることはできないので、私はここで頑張りたい、という自分の気持ちのみを優先して就職活動を始めました。最終的にご縁のあったみずほ銀行にて現在の職につきました。言語学とはまったく違う分野ですが、ドイツ語・英語・日本語を毎日使い、仕事ができる環境は幼いころに憧れていた自分の姿です。大げさかもしれませんが、夢が叶ったと感じています。

今、自分の目指してきた姿を実現できているのも、ドイツ語学科での4年間があったからだと思います。ドイツ語を学び、ドイツで暮らすという選択肢が増えました。在外履修に行ったことで、海外に行くことがすべてではなく、どこにいてもコツコツと努力を続けなければ、見たい世界は見れないことに気が付きました。言語学を学んだことで学問の楽しさに気がつくことができました。先生方のおかげで、漠然とした目標を現実にする方法を学ぶことができました。先輩方のおかげで、自分にも可能性があるかもしれないと気が付くことができました。

大学という場所は規模も大きく、人との関わりが良くも悪くも浅く広くなるというイメージがありました。しかし、ドイツ語学科に入り、先生や先輩方との距離の近さにとても驚きました。やりたいことがあったとき、親身になって相談に乗ってくれる素晴らしい環境があります。

私が高校生のとき、一番に悩んでいたのは目標と現実のギャップです。こうしたいという目標はあるし、モチベーションもあるけれど、それをどう実現できるのか。はたまたそれは実現可能なのか。ドイツ語学科には、このギャップを解決してくれる環境があると感じています。

現役生の皆さん、やってみたいことがあるのであれば、ぜひ一度、先生や先輩方に相談してみてください。私は決して優秀な学生ではありませんでしたが、ドイツ語が好きだったので、積極的に相談するようにしていました。先生も先輩もきっと親身になってくれると思います。大事なことは小さなことでも行動に移し、不安の根源を減らしていくことだと思います。誰かと比較せず、今の自分に何が必要で、それにはどのくらいの時間がかかるのか。冷静になると意外と答えは見えてきます。

そして、ドイツ語学科のつながりは卒業後も続きます。私はドイツに来てからたくさんの先輩方に出会いました。一人で渡独した私にとってドイツ語学科のコミュニティの存在はとても心強いです。

長くなりましたが、ドイツ語学科の魅力は伝わりましたでしょうか。挑戦してみたいという気持ちがあるときが、行動するベストなタイミングだと思います。焦らず、自分のペースで、そして周りに頼りながら、目標実現のためのステップを思いっきり楽しんでみてください。

Machen Sie Ihren Weg(自分の道を切り開きなさい).

コンスタンツでは90歳のドイツ人女性と暮らしていたのですが、その方からいただいた大切な言葉です。ドイツ語を学んだことでたくさんの出会いがあり、多くの新しい経験ができました。周りと異なる選択は勇気のいることですが、今チャレンジしてよかったと心から思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。