はじめまして、英語学科4年の春日茜です。私は2015年の秋学期から2016年の春学期まで約9ヶ月間、イタリアのヴェネツィアで交換留学をしてきました。今まで長期留学をしたことがなく、まして帰国子女でもなかったため、高校生の時から漠然と大学に入ったら留学をしてみたいと思うようになりました。幸いなことに自分の希望の学科から合格をいただき、いざ留学先を選択する時になって、英語圏にするか非英語圏にするかはとても迷いました。もともと英語圏以外にも留学の選択肢がたくさんあるからという理由で大学選びをしたはずだったのに、周りの友人のほとんどが英語圏を選択しており、加えて私自身が英語力に自信を持てなかったことが原因でした。しかし、せっかく大学にいるのだから英語以外の外国語も習得したいという思いも強く、イタリア語の教授に背中を押して頂き、ヴェネツィア大学への交換留学に応募しました。
正式に留学が決まった後も、寮の環境があまり良くなかったため、現地の不動産屋さんと連絡を取って賃貸契約を結び、一人暮らしをしました。外国人だからという理由で断られたところも何回かありました。出国前だったので、時差の関係で日本では考えられないような時間に連絡が来ることも多く、物件は先着順だったため、めちゃくちゃな生活をしていたことを覚えています(この時に私の希望を快く受け入れてくれたスタッフの2人は、留学終了までずっと私のことを気にかけてくれていました)。出国直前までには語彙力を上げたい、と思っていたのですが、結局上げられずじまいでイタリアに行きました。
頭ではわかっていたことですが、到着して間もない頃は、文字通り右も左もわからない状態でした。ヴェネツィアの路地は迷宮みたいで、出かける度に迷子になるし、現地の常識も会話力も何もかもが欠けている状態でした。しかし、日常生活(スーパーやカフェなど)で出会うイタリア人の多くはあまり英語を話さないため、イタリア語でどうにかしなければなりませんでした。授業が始まると大学で日本語を学んでいる友人と出会い、イタリア語と日本語(と時々英語)で会話をしていました。彼らからは、語学のみならずイタリアでのルールやマナー、そして美味しいお店まで教えてもらい、帰国した今でもその交友関係は続いています。
実は一人暮らしをするのも初めてで、戸締りやゴミ出しなどのすべてが自己責任なので寮に住んでいる友人が羨ましくなったこともありました。しかし、一人暮らしだったからこそ、近所の人々と触れ合う機会が沢山ありました。観光地の中心に住んでいたからか、家を出て数秒でフランスからの観光客にフランス語で道を尋ねられ戸惑ったのも、今ではいい思い出です。たったの9ヶ月間の滞在ですが、落ち込んでいる時などは、イタリア人の陽気でおしゃべり好きな性格に何度も助けられました。帰国する頃になると、英語よりもイタリア語の方が日常会話はラクに感じるくらい、語学力が身につきました。今でも学術的な文献は英語の方が読みやすいですが、自分の感情を乗せて話す時にはイタリア語の方が便利に感じます。
ヨーロッパという陸続きの環境だと、国外への旅行も比較的短時間でできました。留学前に漠然と抱いていたEUとその各国へのイメージは、実際に目で見ることで良くも悪くも大きく変わりました。移民問題や所得の格差の問題も、ずっと身近に感じられるようになりました。
この留学を通じて、正直なところ英語力は伸びたかはわかりませんが、その代わりにイタリア語能力は伸ばせた実感がありますし、ヨーロッパでなければ(そしてイタリアでなければ)体験できない経験がたくさん出来たと感じています。犯罪に遭ってしまったこと、人種差別されたこと、ヨーロッパ各国の人々の自分の国へのプライドを感じられたこと、エスプレッソとワインをはじめとするイタリアの食文化にどっぷりと浸かれたこと、深夜まで時間を気にせずおしゃべりをしたことなどなど今となっては全ていい思い出です。
決して楽しいことばかりではありませんが、たとえ自分の専攻語の国ではなくても、語学力が多少足りなくても、後から補うことさえできれば充実した留学生活を送ることはできます!治安面や語学の面での不安もありますが、私は長期の交換留学を強くお勧めします。