ドイツ文学科の魅力
ドイツ文学科で何を学ぶのか
皆さんは、「ドイツ文学」の扉の前に立っています。この扉の向こうに広がっているのは、ドイツ語圏(ドイツ・オーストリア・スイス)の文学だけではありません。
なぜなら優れた文学作品には、歴史、哲学、音楽、美術、映画、スポーツ、食に至るまで、文化のすべてが含まれているからです。ドイツ文学科に入学した皆さんは、ありとあらゆるドイツ語圏の文化を学ぶチャンスを手にしたのです。
ドイツ文学の旅を楽しむためには、まずドイツ語をしっかり学ぶ必要があります。ドイツ語に「難しい」というイメージをもっているかもしれませんが、好奇心と想像力、辞書さえあれば、心配はいりません。「ドイツ文学」の世界に一歩踏み出してみましょう。
ドイツ語圏における人と社会の創られ方を「知る」ための4つのこと
POINT1
言葉を徹底的に習得し、その背景にある思想を「知る」ドイツ語Ia授業風景
POINT2
テクストに入り込み、ドイツ語の音や響きの先にその心象風景を「知る」ドイツ文学入門I授業風景
POINT3
ネイティヴ教員による授業を通して異文化の魅力を「知る」ドイツ現代文化論授業風景
POINT4
異文化との比較を通して、他者の視点から、自文化の枠組みを俯瞰し、越境への可能性を「知る」文献演習Va授業風景
卒業論文
「卒業論文紹介」2021年度卒業 斎藤明仁さん
卒業論文テーマはどのように見つけましたか?
きっかけは学科の文献演習の講義でした。多和田葉子さんの作品はそれ以前よりいくつか読んでいましたが、講義でドイツ語の作品を精読するにつれ、いっそう多和田さんの作品の面白さを感じ、卒研で扱おうと決めました。
卒業論文の内容を教えてください。
多和田さんの最初の戯曲である『夜ヒカル鶴の仮面』(Die Kranichmaske, die bei Nacht strahlt, 1993)における主体の複数性・ゆらぎについて分析しました。多和田作品というと、その類稀な言語表現に焦点が当たることが多いですが、同時にその身体表象も特徴的で見逃せないキーワードのひとつであるように思います。
執筆中に大変だったことは?
先行研究の蒐集です。卒論執筆当時、『夜ヒカル』を中心に扱った論文は数本しか存在せず、そのためテーマ設定や構成に時間がかかり、執筆を開始したのは提出締め切りの僅か二週間前でした。しかし、提出ぎりぎりまで教授が細やかにご指導してくださり、自分の納得のいく研究を仕上げることができました。
在学している後輩たちに一言お願いします。
してはいけない研究というものは存在しません。文学科だからといって、文学作品に留まっている必要もありません。多様なジャンルの藝術に触れ、自分にとって宝物になる作品を見つけてみてください。その出会いは、みなさんの人生に(ほんの少しだけかもしれないけれど)きっと彩りを添えてくれるはずです。
卒業生の活躍
過去の卒業論文のタイトル一覧
2022年度
- 日本とドイツにおける情報統制について―戦時中から現在に残るプロパガンダを紐解く―
- レジリエンスとして読む『夜と霧』
- ドイツのフェアアインと日本の総合型地域スポーツクラブの比較について
- 多角的な視点からの優生思想のあり方について
- ドイツロマン主義オペラ史におけるウェーバー作曲《魔弾の射手》の位置付け
- エンデ『はてしない物語』における人間的成長について
- 映画『ヒトラー最後の 12 日間』及び『帰ってきたヒトラー』から見て取れるドイツ人の歴史認識の変化及び今後の展開について
- オペラ『魔笛』にみるモーツァルトの本質
- アイヒェンドルフの抒情詩から見るロマン派の夜の世界
- ドイツにおけるカバレットの笑いと政治性
- フィリップ・オットー・ルンゲ ―ルンゲの目指した風景画とは―
- エルゼ・ラスカー=シューラーの初期の詩に登場する⺟的存在から考える故郷
- ミュージカル『モーツァルト!』における光と影の描写
- 「オペレッタの社会的影響・役割及び日本での受容」〜『こうもり』による国と時代を超える笑いとは〜
- グリム兄弟とファンタジーのモティーフ-メルヒェン・伝説・神話を手がかりに―
- 「モーツァルトのオペラとフリーメイソン性」―『魔笛』・『ドン・ジョヴァンニ』から見るモーツァルトのジェンダー観―
- 愛に関する抒情詩とキリスト教との関係―アイヒェンドルフの抒情詩の解釈から―
- 映画/プロパガンダを通して見えてくるナチスの政策
- ハイネ恋愛詩における「愛」の存在について
- 日独オリンピック記録映画から見る政治性と芸術性~レニ・リーフェンシュタール『オリンピア(1936)』・市川崑『東京オリンピック(1965)』~
- ドイツロマン派の抒情詩と音の世界
- 森から読み解く『グリム童話』-ドイツにおける自然観の変遷
- プロパガンダの推移とナチスドイツの独自性
- Kurzgeschichteから考察するヴォルフガング・ボルヒェルトの家族観
- ニーチェ思想はナチズムを生んだか―最も過酷な思想家の歪められた虚像と実像―
- フケー『ウンディーネ』における「水の精」の変化と意義
- 「第七の十字架」における自然的存在としての羊飼いのエルンスト―キリスト教及び共産主義思想との関わりを視野に入れて―
- 退廃という烙印を押された芸術―大ドイツ芸術展と退廃芸術展の比較から考えるヒトラーにとっての芸術とは―
- 食から読み解く19世紀ドイツ市民階級の様相-トーマス・マンの小説『ブッデンブローク家の人々から』―
- 「ローレライに隠れる詩人たちの想い」
- サブカルチャーにおけるナチス及びヒトラーの表象と受容〜水木しげる『劇画ヒットラー』を中心に〜
- 『ブッデンブローク家の人びと』を服飾から紐解く
- ヴェニスに死すにおける美学―文学と映画の比較を通して―
- Ballade における演劇的要素
- ナチスと近代美術―「大ドイツ芸術展」と「退廃芸術展」から考える芸術批評のあり方―
- 多和田葉子作品は「エクソフォン文学」と呼べるのか
- ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』における 目に見える世界と目に見えない世界
- ナチスのプロパガンダと女性政策―第三帝国の女性たち―
- 歌詞から探る東宝版ミュージカル『エリザベート』におけるエリザベート像
- ファウスト伝説から読み解くドイツ宗教改革の文学への影響
- 日本とドイツの新語・流行語から見る国民意識の違い
2021年度
- マルティン・ルターと宗教改革の精神
- 現代に生きる人々における森の重要性
- ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの薬草療法
- 少年ウーリを中心に見る他者を介した自己理解〜ケストナー著「飛ぶ教室」より〜
- ドイツ語圏スイスの言語事情
- ワイマール期における「新しい女」と 女性の社会進出について ~イルムガルト・コイン『人工シルクの女の子』の作品分析から~
- 『朗読者』におけるハンナの罪のとらえ方
- ドイツのオーガニック思想について
- 19 世紀ドイツにおけるアントロポゾフィー(人智学)思想がドイツ・オーガニック化粧品に与える影響
- ドイツにおける第一次女性参政権運動による女性の権利について~教育を受けることによる女性の変化~
- 抒情詩にみるバロックの二元性
- 「新しい女」のエクリチュール~ヴァイマル共和国時代の女性像と現実~
- T4作戦「安楽死」と優生思想
- エゴン・シーレの美学
- レーニ・リーフェンシュタールの「美学」 ~プロパガンダ映画との矛盾を巡って~
- 『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ』から見たクリムトの人間観
- 『牡猫ムル』のイロニーについて
- 主体のゆらぐ舞台 ~多和田葉子『鶴面の、夜に煌らか』(Die Kranichmaske, die bei Nacht strahlt)の試み~
- バウハウスの理念と現代性
- シュティフターの作品にみる人間教育と自然
- Übersetzungen japanischer Begriffe in Manga:Anhand von Yotsuba&! und Moresukine
- ドイツの歴史と文化が築いた動物保護から見出す日本の動物保護の未来
- ナチス政権下におけるドイツ人国民の意識について
- Der Weg der Individuation Emil Sinclairs in Hermann Hesses Demian
- グリム童話における魔女像と役割
- 『変身』誕生の背景にあるカフカの人生
- 日本マンガから見るドイツ語のオノマトペ~吾峠呼世晴『鬼滅の刃』を題材に~
- 「アンネの日記」から読み解くナチ時代の人種差別の実態
- オペラ『魔笛』の中に秘められたモーツァルトの理想
- ヘッセ文学における「両極性」~『車輪の下』の読解から~
- カフカと生活、そして文学の関係性の変遷について~『流刑地にて』と『断食芸人』から読み解く~
- 戦後ドイツにおける歴史認識及び歴史教育の形成過程と展望
- ケルン大聖堂から見るドイツ社会の変遷
- マイセン磁器と東西交流
- 歴史から考察するドイツの食文化の変遷〜食の多様化と伝統継承〜
- 「三文オペラ」に読むベルトルト・ブレヒトの演劇論
- グリム童話における女性像の反映
- ケストナー文学の目的〜風刺と児童文学の共通点〜
- Unterschiede in den religiösen Ansichten zwischen dem japanischen Anime Heidi und dem Original
- 『デミアン』からみるヘルマン・ヘッセの内面世界
- シュリンクが法学に関する見解を『朗読者』に込めた意図は何か
- Kirchenmusik und Kirchenlieder
- ウド・リンデンベルク(Udo Lindenberg)とドイツ東西問題
- 戦前の日独フェミニズム~平塚らいてうとクララ・ツェトキンの人生を通して~
- 『マルテの手記』中の「放蕩息子の物語」に見る「愛」とは
- 『モモ』における主人公モモの特徴と時間について
- パウル・ツェランの生涯と彼の作品から見る母への愛 ・エーリッヒ・ケストナーとナチスドイツ~彼の生き方や作品を通して~
- ドイツにおける「芸術音楽の位置づけ」と Bildung 概念との関係性~ベートーヴェン作・曲『悲愴大ソナタ』を手掛かりに~
- ドイツ近代デザイン史に浮き上がるドイツの自然観
- ベートーヴェン『第九交響曲』における隠されたメッセージとは
- E.T.A.ホフマン著「くるみ割り人形とねずみの王様」とバレエ『くるみ割り人形』との繋がり
- カフカの動物物語研究:人間が人間である根拠とは
- エルゼ・ラスカー=シューラーにとって「創作」とは何か
- ルートヴィヒ・クリストフ・ハインリヒ・ヘルティー(Ludwig Christoph Heinrich Hölty,1748-1776)作「五月の夜」(die Mainacht)の詩「五月の夜」の音楽家による解釈について
- シューベルトとブラームスによる歌曲《5月の夜》の比較
- 『ファウスト』におけるファウスト博士の救済について
2020年度
- グスタフ・クリムトが描く⼥性像の変容―⻩⾦様式以降の絵画に着⽬して
- ゲーテ『色彩論』は後世の人々によってどのように引き継がれたのか
- ホフマンスタールとウィーン世紀末
- „Die Ermittlung“ von Peter Weiß und die 68er-Bewegung
- 『モモ』から読み取る現代人への示唆
- 東ドイツの国家体制とシュタージ
- パウル・クレー―線の獲得
- 冷戦時代を生きた劇作家ハイナー・ミュラーと、戯曲『ハムレットマシーン』の意義
―作家・作品とその上演を巡って― - ヘルマン・ヘッセの女性遍歴と『ナルチスとゴルトムント』の女性像
- 『ブリキの太鼓』にみるギュンター・グラスの内省とメッセージ
- 童話モチーフのディズニー映画とグリム童話から見る社会の変化
- Autoreduzierte Stadt Freiburg: Über das Konzept der „Stadt der kurzen Wege“
- カスパー・ダーフィト・フリードリヒ『氷の海』
- ハインリヒ・ベル のクルツゲシヒテについて ―『あの頃オデッサで』を中心に
- 19 世紀の音楽潮流におけるブラームスの立ち位置―なぜオペラを作曲しなかったのか
- 「ドイツ的」の意味形成にプロイセンが与えた影響
- 地域に根付いたドイツのスポーツ文化のこれから―日本がスポーツ大国になるためには
- マイセン磁器誕生と日本磁器について―磁器取集に熱中したアウグスト強王―
- 文学に投影された魔女の姿
- ナチスの宣伝政策について―歴史を踏まえて宣伝方法に迫る
- グリム童話とディズニー作品における関連性―「ラプンツェル」と「白雪姫」を中心として
- ラフィク・シャミを通して見るドイツの「移民文学」
- リルケと美術
- ナチス・ドイツにおけるプロパガンダ―メディア(ラジオ)とプロパガンダ政策について
- 19世紀の恋愛抒情詩からみる男女の愛の姿について―ロマン派とロマン派以後の詩を比較して
- Das Image Japans in deutschen Medien: Eine stilistische Analyse zu Zeitungsartikeln über das Ritual zur japanischen Inthronisierung
- 日本におけるグリム童話の受容について
- 文学から見る東ドイツの社会と自由 ―東ドイツが残したものとは
- カフカの『変身』と『審判』における内面的問題の表出
- フランツ・カフカの人生観から読み解く『変身』
- サッカー審判員フェルティヒ氏の嘆きを読んで―歴史から見るドイツサッカーの在り方
- オーストリア皇后エリザベートの生涯とそのミュージカルでの描かれ方
- アンナ・ゼーガース『第七の十字架』から読み取るナチス・ドイツ
- ナチスと抵抗運動
- 民衆の熱狂におけるメカニズム―ヒトラーおよびナチス・ドイツの手法
- ナチズム批判文学から読み解く、語りとしての詩
- ノヴァーリスの死生観
- ドイツ語圏のカフェ文化―人間と社会における効用
- ドイツ詩における音響効果について−ロマン派とハイネ−
- ゲーテの叙情詩における女性像
- ドイツの自然観について
- 戦後ドイツ文学とその社会的背景から読み解く“東西格差”
- 『砂男』における「不気味さ」とホフマンの意図
- 多⽂化共⽣国家としてのドイツ−異⽂化間教育という観点から