私は2015年にイスパニア語学科を卒業後、外務省に専門職(スペイン語*)区分で入省し、現在は在ベネズエラ日本国大使館で働いています。担当は、政務(ベネズエラ内政・外交)、総務(館内横断事項)、儀典(大使通訳など)、広報文化(日本文化を紹介する事業の実施など)なので、てんやわんや走り回りながら頑張っています。儀典や広報文化の業務ではテレビやラジオに、時に通訳として、時に自分の言葉で、日本や政策のことをイスパニア語で発信したり、また、政務の仕事では、ニュースや新聞、最近ではツイッターなどのSNSも含めつつ、日々前例のない新しいことが起き続けるベネズエラで一体何が起きているのか、ということを東京(外務本省)に報告するための書類を作成したりしています。もちろん、イスパニア語は、パソコンのキーボードで文字を打つことくらい、仕事にとって欠かせないツールです。当然ながらうまく通じないこともあり、またスペインのイスパニア語とラテンアメリカ各国のイスパニア語は単語や用法が違うものもあり、四苦八苦しています。(例えば、本当にちょっとしたことですが、スペインではespresso, cortado, americanoと呼ばれるコーヒーの種類は、ベネズエラでは同じものをcafé negro, marrón, guayoyoと呼んでおり、「イスパニア語」と呼ばれる言語の変化とイスパニア語学習の奥の深さ(底なし!)を感じました。)
インターネットで世界中とつながることのできる時代とはいえ、言語も文化も風習も異なるラテンアメリカで日本人が暮らす・仕事をすることは楽ではありません。しかしながら、私が今地球の反対側の異国の地で無事に仕事ができているのは、まぎれもなく大学時代にひいひい言いながら闘ったイスパニア語のおかげであり、基礎科目や大変な思いをしながら課題を頑張った経験のおかげだと思います。
入学当初、ラテンアメリカでは働きたいけど明確なビジョンがあった訳ではない私からの受験生や在校生の皆さんへの小さなアドバイスとしては、今、将来何をするかなんて具体的に考えられない方も、とりあえず全力で大学の講義を吸い込んでみたらいい、ということです。上智大学の講義で得た知識は社会人になってから思い返すとものすごく貴重です。講義を楽しんで受けて得た知識は、一生ものの糧となり、当時はいつ役に立つのかわからなかった知識も、ふとした瞬間、仕事や私生活に役に立ったりしています。
私個人の経験が皆さんの選択肢を少しでも広げ、また、受験生や在校生の皆さんの学生生活がより豊かで楽しい学生生活となることを心よりお祈り申し上げます。ちなみに、私個人としては、一人でも多くの後輩とイスパニア語圏、イベロアメリカ圏で出会えることを期待しています。
*外務省内では「スペイン語」という呼称が使われています。