自宅では主にアメリカ児童文学の翻訳を行い、上智大学では春学期の「翻訳論」を担当しています。また、甲府、東京、静岡などで、これまでに訳した本やその作者について語る講演会も行っています。演題は、『大草原の小さな家』の物語とその作者ローラ・インガルス・ワイルダー、『サウンド・オブ・ミュージック』の世界などです。
先生方が気さくに質問を受けて下さり、英語で語りあうチャンスを多く持てたことです。また、英文科の講義をとることもできたので、幅広い知識を得ることができました。後述しますが、アメリカへ留学する機会を与えられたことも良かった点です。
アメリカ留学です。その大学で、たったひとりの日本人だったので、日本語を全く使いませんでした。そこで、現在の仕事へのきっかけを見つけました。それが、ローラ・インガルス・ワイルダーの「小さな家シリーズ」の原作です。これらを訳したいという思いを募らせて帰国しました。
なぜ今の仕事(翻訳)を選んだかというと、日本語を書くのが好きだから。家で仕事ができ、時間が自由になるので、訳している作者に会いに行ったり、作品の舞台を訪れたり、その作品の周辺の研究、調査ができるからです。また、翻訳者には定年がありません。それから、訳す本を自分で捜し、自分で訳す自由もあります(出版社のOKが出なければ成立しないが、好きなものを手がけることができるのはうれしいです)
英語から日本語への文芸翻訳をしていると、アウトプットの日本語の重要性をひしひしと感じます。しかし、現在、英語さえわかればよいのだという考えが日本じゅうに蔓延しており、母国語を軽んじる傾向があるのは情けないです。結局、どっちつかずのセミ・バイリンガルになるのが落ちだからです。自分の言いたいことを、きちんとした日本語でしっかり伝えられる人間になってこそ、手段としての英語が役に立つと思います。
訳したい本が何冊もあるので、それらの翻訳を手がけたいです。書き下ろしの本を書いてみたいです。『金色のまぶた』と、タイトルだけは決めています。それから、『若草物語』のルイザ・メイ・オルコットのヨーロッパへの旅(1860年代と70年代)を写真と文章で再現してみたいです。また、ローラ・イガルス・ワイルダーのシリーズは語りの文学なので、これを音楽と朗読で再現化することです。
写真1:ウィーンにて
写真2:サウス・ダコタ州デ・スメットにて。ローラ・インガルス・ワイルダーの研究家、ウィリアム・アンダーソンと、ローラの住んでいた農地に生えるポプラの木の前で