2022年07月20日 10:51:15
台湾北東部に残る金瓜石鉱山は、日本統治期に開発された金山である。しかし1987年の閉山から30数年が経過し、過去を記憶する住民が少なくなってきた。そこで一部の住民は、自身や前世代の記憶を頼りに過去の鉱山施設を模型にして展示する私設展示館を開設した。 彼らが模型を製作する際に依拠した過去は、自らの体験、他世代との交流のなかで得た情報、それらが混在したもの、古写真など、多様である。それらの過去は、歴史研究によって明らかにされた史実と同一とは限らない。そうした特性をもつ過去をもとに製作された模型も、過去に存在した鉱山施設の形状と同一とはならない可能性がある。それでもなお、過去の物質化を実践する住民の思惑はどこにあるのか。住民は、過去を可視化することに、どのような意義を見出しているのだろうか。本発表では、金瓜石鉱山における住民による新たな歴史実践について、オーセンティシティの観点から話題提供したい。