報告 | ディビット アンバラス先生(North Carolina State University)をお迎えして、アメリカ・カナダ研究所と科学研究費基盤(A)「二〇世紀東アジアをめぐる人の移動と社会統合( 「社会史(New Social History)」は、それまでエリート中心に描かれてきた歴史を、一般大衆の側から捉え直すこと(History from the below)に始まりました。1963年にE.P.トムスンが著した『イングランド労働者階級の形成』では、階級を強く意識しながら文字を残さなかった民衆を「救い出す」ことが試みられました。また「言語論的転回(Linguistic Turn)」以後は、フーコーらポスト構造主義者が言説を重視した分析をおこない、カルチュラル・スタディーズにおいてはセルトーが日常生活における権力への抵抗を、ポストコロニアリズム研究後はストーラーが植民地こそが宗主国を規定するという視点を打ち出しました。他にも女性史から女性性、男性性を問題化するジェンダー史への展開、スピヴァクのサバルタン・スタディーズなど、実に多くの研究が社会史に影響を与えてきました。1990年代からは、都市、お墓、隔離場所などの「空間」から事象を問い直す「空間論的転回(Spatial Turn)」、移動をコントールする「境界」に着目した「ボーダー・スタディーズ」、さらには開かれた「海」に着目する「海洋の歴史」などが展開されました。そのような流れを受けて移民研究も、国民国家を中心に据えたEmigration/Immigration studies(出/入移民研究)から、よりグローバルな移民の動きを捉えたMigration studiesへ、さらには「移動」そのものを問題視するMobility studiesへと発展してきています。近年では、個人や家族などミクロな存在がいかにグローバルな経験をしたかに着目したグローバル・マイクロヒストリー(Global Microhistory)の視点をもった研究も見られます。 アンバラス先生はこれまで、日本における「盲目の人々」、中国に渡った「不良少年」、「海賊の女性」の移動経験などを研究していらっしゃいました。ジェンダー、移動空間、周辺性、空間・領域に着目した先生のご研究は、アメリカ社会史の流れを日本史研究に巧み取り入れた研究であることが今回のご講演からよくわかりました。(文責:松平けあき) |
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講師 | David Ambaras (Associate Professor of History at North Carolina State University) |
演題 | アメリカ歴史学における社会史研究の展開と課題 |
日時 | 2017年6月23日(金)17:00〜18:30 |
場所 | 上智大学 図書館7階721A アメリカ・カナダ研究所 |
使用言語 | 日本語 |
予約 | 要予約 メールかお電話で研究所までお申し込みください。 |
共催:基盤研究(A)「二〇世紀東アジアをめぐる人の移動と社会
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