報告 |
ジェラール・ブシャール教授(ケベック大学シクチミ校)は、カナダのケベック州を代表する知識人の一人。今回の来日に合わせて「ケベックのライシテ」についてのご講演をお願いした。
講演では、ケベックの歴史と社会にふさわしいライシテのモデルが提示された。ケベックのライシテは、1960年代の「静かな革命」における「脱宗派化」によって国家と宗教の制度的な分離が目指されたことに起因する。近年の論争は、公務員が職場で宗教的信仰を表明できるかをめぐるものだが、公務員の宗教的権利を認めることによって制度的な分離が脅かされるわけではないとブシャール教授は主張する。宗教的標章の着用は権利として認められるのが原則だが、高度の中立性を体現すべき権威ある者については一定の制限を設けることは「高次の理由」に適う。「妥当な調整」にもしかるべき制限は設けられているので、その範囲のなかで権利を認める交渉がなされるべきだ。ブシャール教授によれば、このような特徴や指針を持つケベックのライシテは、この地域が歴史的にフランス及びイギリスの影響を大きく受けてきたことに大きく関係しているという。 「妥当な調整」は具体的にはどのようになされるのか、「妥当な調整」への反対に政府はどう対応しているのかなど、会場からも積極的に質問が出され、活発な議論がなされた。 |