報告 |
カリフォルニアの日系人強制収容所で生まれ、現在はハワイ大学で教鞭をとられているDennis M. Ogawa先生にお越しいただき、「日系アメリカ人 栄光の苦難の歴史を語る」と題して、ご自身の経験を交えたお話をしていただきました。
Humanities(人文学)の研究者である先生の試みは、歴史をhuman dramaとして捉え、人種的グループとしてではなく人間としてのあり方に焦点を当てることだといいます。ハワイと日本との間に生まれた特別な感情は、日本を訪れたカラカウア国王と明治天皇との関係から見て取れます。彼らは2人きりでの会談をおこない、政治的ではなく個人的な友情を育みました。1868年にハワイに移住した日本人のうち3分の1が日本に帰らずハワイに残ることを決めましたが、彼らがハワイで働き続け、将来の世代のために日系人コミュニティを支えることを自ら決めたことにカラカウアは感銘を受け、このことを天皇に話したといいます。また、カラカウアが自らも乗船していた船で生まれた日本人の子どもの名付け親になったことや、鎌倉時代に沈没した日本船の乗組員をハワイの人々が救った話など、ハワイと日本の初期の歴史は人間関係の物語であることが分かりました。カラカウアと天皇が話したとされるもう1つの話題は、ハワイの霊魂に関するものです。ハワイは非常にスピリチュアルな場所であり、山や木々、海にも霊が宿ると考えられています。先生がハワイ大学で教え始めた頃には日系1世がいまだ存命中で、日系3世の学生たちに祖父母へインタビューを行う課題を出したところ、多くの日系1世がハワイの霊について話したといいます。精神世界を重視する点でも、ここから得られたオーラルヒストリーは人間の物語であることが分かりました。
質疑応答では、強制収容所で生まれ育った先生の体験を軸に、自らのアイデンティティについての思いなどを語っていただき、貴重なお話を聞くことができました。(報告:英米文学研究科博士後期課程 三原里美) 参加人数:約40名 |
テーマ |
日系アメリカ人 栄光の苦難の歴史を語る |
講師 |
Dennis M. Ogawa (ハワイ大学教授) |
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カリフォルニア大学ロサンゼルス校(言語学部学士,米国研究学部修士及び博士)卒業。ハワイ大学言語学部助教授,同大学米国研究学部教授等を経て現職。その他,ハワイ日本文化センター副理事長,ハワイ日米協会理事,全米日系人博物館顧問等を歴任。その傍ら,1981年に日本ゴールデンネットワーク合資会社(CATV局)設立(現会長)。 カリフォルニア州出身の日系2世の母親と,日系1世の父親を持つ。第二次世界大戦中の1943年9月に,カリフォルニア州マンザナー日系人強制収容所で生まれ,終戦まで生活した体験を持つ。 |
日時 |
2019年11月20(水)17:20- 18:50 |
場所 |
上智大学6号館4階 6-402教室 |
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参加自由・申込不要 |
使用言語 |
英語 |
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