<政治社会学班>「ムスリム同胞団の国際的影響に関する研究会」(2018年6月23日(土)上智大学)
2018年度報告
【日時】2018年6月23日(土)10時00分~12時00分
【場所】上智大学四谷キャンパス2号館6階、615a会議室
ムスリム同胞団やそれと類似する組織、あるいは同胞団の影響を受けた諸活動は、世界各地に広がりを見せている。上智大学拠点で2018年9月7日(金)に開催予定のワークショップでは、やはりイスラーム世界に浸透するサウジアラビアのワッハーブ派と、同胞団系組織の間での近年の対立をテーマとした講演が予定されている。
しかしイスラーム主義運動の理念と活動の実態は各地域によってさまざまであり、それぞれの地域ごとの個別の状況を踏まえて議論することは、テーマをより深く理解するうえで重要である。本研究会の趣旨は以上の問題関心を踏まえ、ワークショップ当日前に、発表予定の若手研究者が事前報告を通じて各自の発表内容を充実させるとともに、議論を深めることにあった。
福永浩一による「―ムスリム同胞団の危機を読み解く―サラフィー主義運動の政治参加との比較」と題する報告は、エジプトのムスリム同胞団の近年の動向と、同国内のサラフィー主義系勢力であるダアワ・サラフィー協会とヌール党の政治参加を論じるものであった。
須永恵美子による「ムスリム同胞団の影響からみるジャマーアテ・イスラーミーの研究の可能性」と題する報告では、パキスタンの政治政党ジャマーアテ・イスラーミーの概況と国際ネットワーク、さらにムスリム同胞団の交流史を論じた。
塩崎悠輝による「東南アジアにおけるワッハーブ派とムスリム同胞団の影響」と題する報告では、マレーシアとインドネシアにおける、同胞団系組織のマレーシア・イスラーム党や繁栄公正党及びワッハーブ派系組織のLIPIAの現地への浸透について論じられた。
今回の各報告を通じて、サウジアラビアのワッハーブ派がイスラーム世界に浸透した際の現地化の視点と、同胞団系組織の間での政治思想の相違という比較研究の必要性が確認された。いずれの課題についても、9月の講演会で各発表者が新たな研究成果を持ち寄ることが期待される。
文責:須永恵美子 日本学術振興会特別研究員RPD