イスラーム研究センターの目的、活動、沿革
イスラーム研究センターは、本学のイスラーム研究の蓄積を元に、これをさらに発展させるために2006年度に設立されました。学内においては、常設研究部門のアジア文化研究所と緊密な連携をとりつつ、総合グローバル学部と大学院グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻における教育活動とも協力して、研究教育の複合的展開に努めています。また、国内外の関連分野の複数の研究教育機関などとの協力も密にし、本学の海外カトリック・ネットワークも活かして、本学の枠を超え、イスラームに関わる多面的な研究を充実させ、その成果を社会に還元することを目指しています。
上智大学は1997~2001年度に科学研究費補助金によって実施されたネットワーク型研究プロジェクト「現代イスラーム世界の動態的研究:イスラーム世界理解のための情報システムの構築と情報の蓄積」に研究拠点の一つとして参画し、後、大学共同利用機関法人・人間文化研究機構(NIHU)が実施したNIHUプログラム「イスラーム地域研究」(第1期:2006~2010年度、第2期:2011~2015年度)でも拠点の一つを務め、この活動が本センターの開設と発展につながりました。このプログラムで、新しい地域研究概念として提唱された「イスラーム地域研究」について、センターは今後ともさらなる洗練と実質化を図っていきたいと考えています。
2016年度からは、人間文化研究機構の地域研究推進事業「現代中東地域研究」が開始され、センターはその拠点の一つとして、「中東的な<公共>の多元的展開と社会倫理」を研究課題に掲げ、人類学歴史学班・社会経済学班・政治社会学班の三つのグループを設けて、さらなる研究の充実を図っています。2019年10月からは同事業の一環として、若手共同研究事業「中東における旅行・観光の歴史的展開と現代の諸相」(研究代表者:近藤文哉)が開始され、研究会を積み重ねています。
また、2019年度には京都大学ケナン・リファーイー・スーフィズム研究センターと大学間連携研究を、「アジア・アフリカにおける諸宗教の関係の歴史と現状」を主題に掲げて開始しました。この連携研究は、2014年度から2018年度までは、NIHUプログラム「イスラーム地域研究」の中心拠点であった早稲田大学イスラーム地域研究機構と、イスラーム地域研究の継承を狙いの一つとして行ってきましたが、同機構の廃止に伴う学術協定期間終了に伴い、上智大学が「イスラーム地域研究」の時期から協力を密にしてきた京都大学との間で新たに提携を結び、継続的な研究を行うものです。
その他には、2016年度から2018年度に、学内学術研究特別推進費「重点領域研究」として「イスラームとキリスト教他諸宗教の対立・交流・融和の地域間比較研究」を掲げ、学内の様々な地域の研究者と共同研究を行いました。
「現代中東地域研究」とは
人間文化研究機構(NIHU)では、国内外の関係大学・機関と協力連携して現代中東地域研究に関するネットワークを構築し、我が国にとって学術的・社会的に重要な意義を有する現代中東地域の文化、社会、政治、経済、環境等の現状について学際的・総合的に調査研究を行う研究推進事業を進めています。この事業では、中東地域の現状を総合的に把握するとともに、重要課題について多角的視野からの解明を目指しています。
本拠点の他、国立民族学博物館、東京外国語大学、京都大学、秋田大学の全5拠点がそれぞれ研究課題を掲げ、各拠点を結んだネットワーク型の共同研究を実施しています。
研究課題:中東的な<公共>の多元的展開と社会倫理
グローバル化に伴う教育の普及やメディアの発達が公共圏の形成を中東各地にもたらし、民主化の推進力になるとする議論があります。しかし、その議論に反して、暴力的なイスラーム主義がそうした個と国家の中間領域から芽生えたことも事実です。今日的な中東研究の実践に当たっては、いわゆる「公共圏」の多元化や内部における異なるアクターの結びつきとせめぎ合いについて、多くの事例研究に基づいて包括的な分析を展開しなくてはなりません。上智大学拠点では、公共性の概念を一元的な理解から解き放ち、中東に根差した公共意識について倫理知識の資源化の面から多角的に探求します。
上述の中東地域における<公共圏>概念の批判的検討は具体的には、都市化や国内外への移住等が生み出す伝統的公共意識の変化、そうした社会の変化に伴って展開する新たなネットワークの形成、教育・福祉・宗教・市民社会運動・政治などを目的とした組織的運動など、多様な切り口が可能です。そして、それらを総括的に分析する総括的枠組みを確立することは、中東のみならず、広く現代的課題を解決するための基盤の形成につながると上智大学拠点は考えます。
「現代中東地域研究」拠点構成員
- 拠点代表者
- 赤堀 雅幸(イスラーム研究センター長、上智大学総合グローバル学部教授)
- 阿部 るり(上智大学文学部教授)
- 荒井 康一(上智大学アジア文化研究所客員所員)
- 稲葉 奈々子(上智大学総合グローバル学部教授)
- 岩崎 えり奈(上智大学外国語学部教授)
- 岡戸 真幸(人間文化研究機構総合人間文化研究推進センター研究員/上智大学研究機構イスラーム研究センター客員研究員)
- 久志本 裕子(上智大学総合グローバル学部准教授)
- 近藤 文哉(上智大学研究機構イスラーム研究センター特別研究員)
- 澤江 史子(上智大学総合グローバル学部教授)
- 辻上 奈美江(上智大学総合グローバル学部教授)
- 福永 浩一(上智大学アジア文化研究所共同研究所員)
- 山口 昭彦(上智大学総合グローバル学部教授)
研究分担者
- 新井 和広(慶應義塾大学商学部教授)
- 井堂 有子(日本国際問題研究所研究員)
- 柏木 健一(筑波大学人文社会系准教授)
- 川島 緑(上智大学名誉教授)
- 私市 正年(上智大学名誉教授)
- 北澤 義之(京都産業大学外国語学部教授)
- 塩崎 悠輝(静岡県立大学国際関係学部准教授)
- 高橋 圭(東洋大学文学部史学科助教)
- 三沢 伸生(東洋大学社会学部社会文化システム学科准教授)
- 三代川 寛子(東京外国語大学世界言語社会教育センター特任講師)
- 森本 一夫(東京大学東洋文化研究所教授)
- 村上 薫(日本貿易振興会アジア経済研究所研究員)
- 八木 久美子(東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授)
- Munir Jiwa(神学大学院連合イスラーム研究所所長・アメリカ)
- Alexandre Papas(国立社会科学センター研究員・フランス)
人類学・歴史学班
代表
- 赤堀 雅幸(上智大学総合グローバル学部教授)
拠点構成員・分担者
- 新井 和広(慶應義塾大学商学部教授)
- 岡戸 真幸(人間文化研究機構総合人間文化研究推進センター研究員/上智大学研究機構イスラーム研究センター客員研究員)
- 川島 緑(上智大学名誉教授)
- 久志本 裕子(上智大学総合グローバル学部准教授)
- 三沢 伸生(東洋大学社会学部准教授)
- 森本 一夫(東京大学東洋文化研究所教授)
- 高橋 圭(東洋大学文学部史学科助教)
- 三代川 寛子(東京外国語大学世界言語社会教育センター特任講師)
- Munir Jiwa(神学大学院連合イスラーム研究所所長・アメリカ)
- Alexandre Papas(国立社会科学センター研究員・フランス)
社会経済学班
代表
- 岩崎 えり奈(上智大学外国語学部教授)
拠点構成員・分担者
- 荒井 康一(上智大学アジア文化研究所客員所員)
- 井堂 有子(日本国際問題研究所研究員)
- 稲葉 奈々子(上智大学総合グローバル学部教授)
- 柏木 健一(筑波大学人文社会系准教授)
- 私市 正年(上智大学名誉教授)
- 北澤 義之(京都産業大学外国語学部教授)
- 福永 浩一(上智大学アジア文化研究所共同研究所員)
- 村上 薫(日本貿易振興会アジア経済研究所研究員)
政治社会学班
代表
- 澤江 史子(上智大学総合グローバル学部教授)
拠点構成員・分担者
- 阿部 るり(上智大学文学部教授)
- 塩崎 悠輝(静岡県立大学国際関係学部准教授)
- 辻上 奈美江(上智大学総合グローバル学部教授)
- 八木 久美子(東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授)
- 山口 昭彦(上智大学総合グローバル学部教授)