調査・研究

<政治社会学班>第1回ロヒンギャ難民問題に関する研究会

2017年度報告

【日時】2018年2月17日(土) 14時00分 ~17時30分
【場所】上智大学四ツ谷キャンパス2号館615a室

 ロヒンギャは、ミャンマー西部のラカイン州に居住するムスリムである。ロヒンギャ難民問題は、2017年8月にミャンマーから数十万人の難民がバングラデシュへ移動したことで世界的に広く知られるようになった。ロヒンギャ問題は従来から存在しており、歴史、ミャンマー政府の少数民族政策や宗教政策を踏まえることでより深く理解しうる問題である。また、ロヒンギャ難民はすでに世界各地に離散しており、各地のロヒンギャ難民の状況を把握することもまたこの研究会の趣旨である。

 根本敬による報告「ロヒンギャの歴史叙述はどこまで可能か?」は、15世紀以来のラカインの歴史、ムスリムと仏教徒が対立するようになっていった経緯、歴史上の異なる時期にラカインに移住してきたムスリムから成るロヒンギャの重層的なアイデンティティについて論じた。また、独立後に政府がロヒンギャを国民として扱おうとしたもののやがて除外されるに至った経緯も論じた。

 斎藤紋子による報告「ミャンマーにおけるムスリム:彼らが抱える問題からヤカイン(ラカイン)問題を考える」は、ミャンマー国民の中のロヒンギャではないムスリム、主にインド系のムスリムについて論じ、彼らがミャンマーの国籍法においてどのように位置づけられているのかを示し、ロヒンギャが国籍付与の対象から除外されていった経緯、近年になってそのことがロヒンギャに対する暴行事件などにつながっていった経緯も解説した。

 塩崎悠輝による報告「マレーシアにおけるロヒンギャ難民問題:難民の公共圏への参加のための諸課題」は、マレーシア政府がロヒンギャ難民に公的な地位を与えてはいないが実質的に居住を黙認していること、ロヒンギャ難民がマレーシア社会の一員となることができるようにイスラームNGOが教育などの支援活動を行っていることを報告した。

 佐伯奈津子による報告「アチェ社会によるロヒンギャ難民「歓迎」」は、船舶でインドネシアのスマトラ島アチェに逃れてきたロヒンギャ難民が、現地の地方政府やNGOによってどのように受け入れられ支援されてきたかについて、その背景や経緯を含め報告した。

 小野道子による報告「パキスタンにおけるロヒンギャ・コミュニティに関する報告」パキスタンのカラチ市にロヒンギャの人々が居住するようになった経緯、生業や生活空間の現状、彼らの法的な地位や身分証がないことで被っている様々な不利益について論じた。

 いずれの報告からも共通して示されたのは、ロヒンギャの問題がミャンマー国内でも離散先の国々でも、法的な地位や身分証をもっていないことと結びついていることであった。そのために移動や教育、医療、政府からの支援等が制約されていることが確認された。



文責:塩崎悠輝 マレーシア国際イスラーム大学

調査・研究

  • 上智大学・早稲田大学共同研究 アジア・アフリカにおける諸宗教の関係の歴史と現状
  • 上智大学 イスラーム地域研究(2015)
  • 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構
  • 国立民族学博物館現代中東地域研究拠点
  • 東京外国語大学拠点
  • 京都大学拠点
  • 秋田大学拠点
  • 早稲田大学 イスラーム地域研究機構
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