調査・研究

<社会経済学班・政治社会学班>第3回合同研究会

2017年度報告

【日時】2017年10月22日(日)14:00-17:00
【場所】上智大学四ツ谷キャンパス 2号館603会議室
【プログラム】
飛内悠子(中央学院大学)「解題 “Debating Darfur in the World”」
佐伯美苗(日本赤十字社)「解題 “Circuits of Knowledge Production on Darfur”」

 今回の研究会はダルフール問題の背景を理解するために、二つのテキストに関する発表と討論が行われた。二つのテキストはいずれもスーダン出身の人類学者、ロガイア・ムスタファ・アブーシャラフの著作である。現在はジョージタウン大学カタール校教授を務めており、ダルフール問題やアメリカ合衆国のスーダン人コミュニティに関する研究を行ってきた。2017年11月3日に上智大学で開催される研究会において、ダルフール問題に関する発表を行うことが予定されている。
 初めに、佐伯氏よりダルフール問題の背景、歴史的経緯、難民問題等について概説された。スーダン共和国西部に位置するダルフール地方で2003年以降激化しているダルフール紛争は、数十万人の死者、難民が出ており、現在も続いている。背景には、現地の資源や多様な民族の関係、全国的な「アラブ化」政策をはじめとするスーダン中央政府の政策等がある。現地の社会、スーダンという国家の中央政府と複数の地方の間で歴史的に継続してきた軋轢についての知識がこの問題を理解していくためには必須である。
 一つ目のテキスト“Debating Darfur in the World”は、アメリカ合衆国とカタールにおいてダルフール問題がどのように理解され、どのような反応に帰結したのかを論じている。人種問題が極めて重視されるアメリカ合衆国では「アラブ人がアフリカ人(黒人)への民族浄化を行っている」という理解が広まり様々な圧力や制裁へと帰結していった。著者はこれをスーダン中央政府の反発を呼び起こす「深刻な歪曲」「単純化」であると批判する。対照的にカタール政府の対応は、対話を推進し、スーダン中央政府とダルフール住民の平和共存を推進するものであるとして評価している。
 二つ目のテキスト、“Circuits of Knowledge Production on Darfur”は、ダルフール社会についての記述が誰によって行われ、どのように流通していったのかを論じている。植民地化以前の伝承、英国の植民地行政官、文化人類学者、スーフィー教団等の例を示した後、現代の人道支援NGOによる単純な善悪二元論を批判している。そして、(著者自身が属している)アメリカ合衆国在住のスーダン人コミュニティがNGO等の単純化した言説に巻込まれながらもインターネットを駆使して世論に影響をもつ様子を描き、最後にスーダン政府が法的知識を啓蒙して被害者を救済する努力をしていることを評価している。
 討論では、複雑な背景をもつダルフール問題について理解を深めるべく現地社会についての質疑が重ねられた。また、著者の背景、スーダン中央政府に近い富裕な階層の出身で、アメリカ合衆国で育ち、カタールで雇用されていることがその言説の形成に深く作用しているのではないかということも指摘された。


文責:塩崎悠輝(マレーシア国際イスラーム大学)

調査・研究

  • 上智大学・早稲田大学共同研究 アジア・アフリカにおける諸宗教の関係の歴史と現状
  • 上智大学 イスラーム地域研究(2015)
  • 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構
  • 国立民族学博物館現代中東地域研究拠点
  • 東京外国語大学拠点
  • 京都大学拠点
  • 秋田大学拠点
  • 早稲田大学 イスラーム地域研究機構
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