アルジェリア出張報告(2016年10月28日~11月6日)
2016年度報告
期間:2016年10月28日~11月6日
国名:アルジェリア(ブーサーダ)
出張者:私市正年(上智大学総合グローバル学部教授)
ブーサーダ市の郊外、ハーミルには1862年に建設されたZawiya al-Hamilがある。 このZawiyaでは植民地期を通じてアラブ・イスラーム教育がなされ、アルジェリアにおけるアラブ意識やイスラーム文化の伝統が維持された。ここの青年たちが、1948年、非合法下で発行していた新聞al-Ruhは、これまで全く知られていなかったアルジェリア人民衆の植民地支配に対する認識を伝えるきわめて貴重な資料である。
本調査では、この資料の読解と分析を行い、2016年度中に予定している出版の準備を行った。この調査からわかった重要な点は、Zawiyaという組織の生徒たちが、シャイフ層や親の世代とは異なり、植民地支配に対する激しい批判的考えをもち、武装闘争を志向していたことである。この解明は、従来のZawiyaは親植民地的であったという説をくつがえすばかりか、FLN(民族解放戦線)の武装闘争開始前にすでにFLNと同じ方向をめざす青年たちが存在していた事実を明らかにする意義がある。