<社会経済班> 2016年度第1回研究会
2016年度報告
【日時】2016年7月29日(金)17時半~19時
【場所】上智大学四ッ谷キャンパス2号館603室
【報告者】村上薫(アジア経済研究所)
【タイトル】「トルコ地域研究と公共圏概念の可能性:『トルコの公共性』研究会を振り返って」
概要:
本研究会は、NIHU「現代中東地域研究」上智大学拠点の第1回研究会であり、「公共圏」を共通テーマとして研究プロジェクトを開始するにあたり、企画された。公共圏を各自の研究・問題関心にひきつけつつ共同研究を行っていくためには、公共圏の理論的射程とアプローチ、中東地域研究における公共圏をめぐる議論と意義についての理解が必要だと考えられたからである。報告者はトルコの公共圏に関して研究実績をもつ村上薫(アジア経済研究所研究員)であり、「トルコ地域研究と公共圏概念の可能性:「トルコの公共性」研究会を振り返って」と題した報告を行った。
報告は3つからなり、①公共圏と公共性ということばでカバーされる問題の広がりと奥行き、②報告者がアジア経済研究所で2009年に組織した「トルコの公共性」研究会とその研究成果である『アジア経済』の特集号(2011年4月号)における研究の背景とねらい、問題関心と課題について報告がなされた。そのうえで③報告者の論文「トルコの公的扶助と都市貧困層―『真の困窮者』をめぐる解釈の政治」(『アジア経済』)における問題関心と反省点が報告され、実証研究に公共圏をもちこむことの面白さと難しさが提示された。
質疑応答では、公共圏論が個人よりも集団を焦点とするのではないか、討議・交渉・合意の相互的な過程を見るべき、公共圏論では主体・アイデンティティ・属性が独立変数ではないかといった報告者の問題提起を受けて、活発な議論が繰り広げられた。また、公共圏概念の意義、市民社会概念との類似性、主体の問題などをめぐり、意見が交わされ、公共圏に対する理解が深められた。
(文責:岩崎えり奈・上智大学外国語学部教授)