小松原 由理 教授

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自己紹介・研究テーマとの出会い

ドイツ語との出会いは大学からになります。英語が外国語のすべてだと思っていたのに、英語も独自なシステムの一言語にすぎないことを、ドイツ語を知ることで相対化できたことは大きかったと思います。また、ヨーロッパ文化の広がりや複雑な歴史と文化に魅力を感じました。研究者への道を選ぶ決定的な出会いは今振り返れば大学院に進学してドイツに留学した時からだったかもしれません。ちょうどミレニアムだったので20世紀を回顧するイベントがヨーロッパ中で企画されていた中、20世紀展というベルリンの3大美術館が連携した企画展があり、ドイツの20世紀アートの膨大な作品を直接目にする機会があったのですが、その「暴れ方」が明らかにこれまでの世紀の中で異様な目立ち方をしていたのです。もちろん、何でもありの現代アートに近づいているといえばそれまでなのですが、これまでのヨーロッパ美術の伝統をここまで解体し、新しい何かへと向かう衝動は何だったのか。彼らが明らかに共有していた巨大なパトスを肌で感じました。それ以降、20世紀初頭の前衛芸術運動=歴史的アヴァンギャルドをテーマに据えて、様々な角度で研究を続けています。

留学時代の一枚
ドキュメンタの屋外アート

みなさんへ!

今日は様々なヒト・モノ・コトに、ネットで簡単に出会える時代です。でもそれを本当に「出会った」とみなさないでほしいと思います。直接五感を使って、それ自体を受け取ることで、はじめて理解できることがある、それは人間が何かを知るということの本質ではないでしょうか。新型コロナの世界的感染拡大により、軽々しく対面至上主義を掲げることはできなくなりましたが、なお一層、一つ一つの出来事の奥行きを想像して、理解しようと思う根気強さが必要な時代です。異文化に向き合うには、もう一度自分自身の常識や理解を疑い、新たな自分を作り出す力が必要です。その力を培うことに、日々の授業の一つ一つがつながっていることをぜひ意識して、どんな制約や障害があろうと、それを言い訳にせず、むしろ大きな跳躍へのバネとする逞しさをもって、学びと成長を決して止めないでほしい、そう心から願っています。

出版物紹介

  • 『イメージの哲学者ラウール・ハウスマンーベルリン・ダダからフォトモンタージュへ』

    『イメージの哲学者ラウール・ハウスマンーベルリン・ダダからフォトモンタージュへ』

    丸善出版2016年

  • 『〈68年〉の性―変容する社会と「わたし」の身体』

    『〈68年〉の性―変容する社会と「わたし」の身体』

    青弓社2016年