佐藤 朋之 教授

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自己紹介・研究テーマとの出会い

~大学生だった自分→大学生になるみなさんへ~

入学したのは今とは別の、ずっと実務的な学部です。しばらくは、それなりに熱心に専門の勉強をし、また大学オーケストラで、入学後に始めた楽器をがんばって練習していました。そのうちにどうしたわけか、ドイツ関係の学科の人たちとつきあう機会が多くなりました。またチャンスを得て、はじめての外国暮らし、ドイツ留学をすることもできました。

そのときの体験が決定的でした。ひとつはオペラハウスに足を踏み入れたこと。もうひとつは、たまたま「ドイツ・ロマン派」のゼミに出たことです。それまで大学では、まともに文学の授業をきいたことがなかったので、ドイツ文学をしっかり読んだのも初めてでした。そこでふれた「ロマンチック」な文学には、(ドイツ語もろくにできなかったので)わけがわからないことばかりなのに、ふしぎと心惹かれました。そして歌劇場は、何もかもがきらびやかで美しく感動的でした。こんなにすてきなオペラやバレエをずっと見ていたい!文学の勉強は(音楽ほどではありませんでしたが)けっこうおもしろいので、もっといろいろ調べてみたい!そのうえビールがうますぎる!ドイツの地でこう思ったことが現在につながっています。今も毎日、音楽を聴き、本を読み、お酒を飲み続けています。

大学に入るときに漠然と考えていたのはぜんぜん違う道を進むことになりましたが、それだけに大学というところが、思いもかけぬ、人との出会いや学びを与えてくれるワンダーランド(ドイツ語だと「ヴンダーラント」)であることを実感します。自分が大学で何をしたいのか、はっきり見定められない方もいらっしゃるでしょう。そういう人こそ、まずはわたしたちの大学、学部、学科にいらしてください。本学での学びの中で、みなさんの目の前には、想像もしなかった光景がひらけていくはずです。みなさんが「ドイ文」ならではの、驚きや感動、そして新たな目標をつかむお手伝いをさせてもらいたい、わたしたちはそう願っています。

今は、留学はもとより、あたりまえの(はずだった)授業や友だちとの親しい行き来すらままならない状況です。そんな中で、コロナの憂いのなかった過去を語り、未来への期待をあおることには、大きなためらいがあります。それでもあえて、困難が終わったそのあとを信じて、この文を書きました。

管弦楽部時代(今はもうぜんぜん弾けません)
管弦楽部時代(今はもうぜんぜん弾けません)

みなさんへ!

~大学で《ドイツ》を学ぶとは?~

日本とドイツの国民性は似ている、それは真面目で勤勉なところ、などという話はよく耳にします。ほんとうにドイツ人がそうであるかはともかく、両者が共通点をもっているのは事実だと思います。ドイツは長年近隣の国々、とりわけフランスに対して、強烈なコンプレックスを抱いていました。あらゆる意味で周辺諸国に甚だしく立ち後れているという意識が、軍事的、政治的な軋轢を繰り返し生じさせるともに、(特に18世紀後半から19世紀に)芸術・科学大国としてのドイツというイメージを無理矢理作りあげ(ある程度は実質も、ですが)、さらには大きな経済発展を実現しました。このことは日本が、海の向こうの国々に対する劣等感や度を過ぎた競争心から国力をむやみと増強し、ときに(反省すべき)悲劇的な歴史を辿ったこと、にもかかわらずその後、ありえないほどの経済的繁栄を遂げるにいたった、近現代の道のりと重なって見えるのではないでしょうか。大学でドイツ語やドイツの文化を学ぶということは、わたしたち自身の足もとを再認識することでもあるのです。

ウィーン国立歌劇場、開演まぎわの客席
ウィーン国立歌劇場、開演まぎわの客席

出版物紹介

  • 『キリスト教・カトリック独和辞典』(単著)

    『キリスト教・カトリック独和辞典』(単著)

    上智大学出版 2016年

  • 『《悪魔のロベール》とパリ・オペラ座 ―19世紀グランド・オペラ研究』(共編著)

    『《悪魔のロベール》とパリ・オペラ座 ―19世紀グランド・オペラ研究』(共編著)

    上智大学出版 2019年