研究紹介:ドイツ現代演劇 ~ドイツ演劇はエキサイティング!~
「ドイツ」の文学や芸術というと、情感豊かな詩や深遠な思想があり、音楽にしても、静的でクラシカルなイメージが優勢かもしれません。私自身もはじめはそんなイメージでドイツ文化に関心を抱いていた気がします。でも実際にドイツ文学に触れてみるとゲーテやシラーが「戯曲(ドラマ)」というジャンルで多くの優れた作品を残していて、美しく深いだけでなくダイナミックな表現に満ちていて、これが実際に舞台作品になったらどうなるんだろうと好奇心を膨らませて、学生時代の研修や留学に出発したことを思い出します。
ドイツ語圏の舞台芸術は、日本人の感覚からするとちょっとびっくりするくらい躍動感があって斬新です。もとより、ドイツに限らずヨーロッパの演劇は、日本の伝統芸能とは違って、まず言葉の芸術である「文学」が第一で、その的確な解釈表現としての「演劇」という正統的な考え方があるのですが、とくにドイツの現代演劇では、その解釈表現がとてもはじけていて、はじけとんでいるのに真に迫っていて、もとの文学作品を大胆に解体しながら、はっとさせられるような新解釈が見事に成立しているのです。そんなエキサイティングな舞台表現に、ドイツ演劇の圧倒的な魅力があると思います。
みなさんへ! ~英雄を必要とする国が不幸なんだ~
ドイツの劇作家で演出家のベルトルト・ブレヒト(1898-1956)は、天才的なウィットに満ちた演劇作品で世界に大きな影響を与えました。ブレヒト原作『ガリレイの生涯』で、教皇庁と対立し異端審問にかけられたガリレイは地動説を撤回。これに憤った弟子が、「英雄のいない国は不幸だ!」と嘆くと、ガリレイは、「違うぞ、英雄を必要とする国が不幸なんだ」と返します。この「ドラマ」で、単純なヒーローではなく肯定面と否定面を複雑に合わせ持つ人間として描かれるガリレイが発する言葉から、皆さんも是非、知性の自分磨きをしてください!
(ベルトルト・ブレヒト作/岩淵達治訳『ガリレイの生涯』岩波文庫)