自己紹介・研究テーマとの出会い
~私の研究遍歴~
学部の時の卒業論文ではブレヒトの教育劇を取り上げました。文学作品とその受容者の関係に関心がありましたので、ブレヒトが教育劇を創作した際、上演後に観衆にアンケートを行い、その結果を踏まえて作品の改作を行っていたことを知り、改作の際の意図をブレヒトの演劇理論と関係づけて考察しました。
大学院に入ってからは、受容美学という文学理論を研究のテーマとしました。受容美学は1960年代末から70年代にかけてドイツで注目された研究上の立場ですが、文学テクストの構造と読みの構造の関係を論じたヴォルフガング・イーザーを主に取り上げ、イーザーの理論をマックス・フリッシュやカフカの作品に適用することを試みました。
大学院を満期退学した後は、ドイツのミュンヘン大学に留学をしました。そこでゲーテの小説『親和力』のゼミナールに参加し、ゼミのレポートの作成のため、ゲーテの著作を集中的に読み進めたのが、ゲーテを研究対象の一つとするようになったきっかけです。ゼミの先生に評価されたのに勇気づけられて、そのレポートで論じたことを基礎にして、後に博士論文を執筆することができました。
博士論文を執筆する過程で、ゲーテの友人であったフリードリヒ・ハインリヒ・ヤコービのスピノザ主義をめぐる著作を読む機会を得ました。ヤコービの新しいスピノザ解釈が同時代の文学者、哲学者に大きな影響を与えたことを知り、現在はヤコービとカント、ドイツ観念論の哲学者の関係について調べています。