自己紹介・研究テーマとの出会い
ドイツ語を勉強し始めたのは大学に入ってからになります。私が高校生の時にベルリンの壁が崩壊して東西ドイツが統一し、今後ドイツ語はより重要な言語になっていくだろうと考え、大学一年生の時に第二外国語でドイツ語を選択しました。ドイツ語が持つ硬質で美しい響きに魅せられ、ドイツ・リートを聞いたり、ドイツ語の詩を原文で読んだりするようになり、大学二年次にはドイツ文学専修に進学しました。学部時代は特にゲーテやロマン派の詩、トーマス・マンの小説などを愛好していました。『ブッデンブローク家の人びと』をテーマに卒論を執筆し、卒論を執筆する過程で大学院に進んで勉強を続けることを決心しました。
修士課程ではベルリンのフンボルト大学に一年間の交換留学をする機会があり、留学先のドイツ詩の授業でヘルダーリンの後期賛歌に出会いました。ヘルダーリンの後期賛歌は、個々の語それ自体が聴き手の耳に迫るように強調され、言葉の流れに緊張や錯綜したもつれ合いをもたらす「固い結合」と呼ばれる独特のリズムを持ち、そこに強い魅力を感じました。またヘルダーリンの詩が持つ哲学的で深遠な詩想にも興味を持ち、ヘーゲル、ハイデガー、アドルノ、ベンヤミンらの美学・芸術論を読むようになり、修士論文ではヘルダーリンとヘーゲルの悲劇論の比較を行いました。
博士課程在学中にギーセン大学へ留学し、Gerhard Kurz教授の下で博士論文を執筆し、ヘルダーリンの諸作品の底に潜む「自己形成(Bildung)」のモチーフについて分析しました。ヘルダーリンにおけるBildungとは,静的・安定的状態と結びつく概念ではなく、対立する様々な「衝動(Trieb)」間の抗争の中で平衡状態を生み出そうとする終わりなき動的なプロセス自体を意味しています。
現在もヘルダーリンを中心に、近代ドイツの詩、詩学、美学などについて研究しています。
学生へ一言
ドイツ語の学習がまず何よりも全ての基礎となります。語学の学習は毎日少しずつコツコツと積み上げていくことが大事です。また広いアンテナを張って様々なことに興味を持つことも重要だと思います。在学中にはぜひ積極的に多種多様な文学作品、映画、演劇、アートなどに触れるようにしてください。大学での学びは高校までの学びとは異なり、教員が学生に与えるものではなく、学生が自分自身の問題意識にしたがって、自発的に見いだしていくものです。教員はただその手助けを行います。大学時代の4年間受け身の姿勢で過ごしてしまうと一生後悔することになります。充実した学生生活をお送り下さい。