上智大学 大学院 グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻(SGPAS) Sophia University, Graduate Program in Area Studies, Graduate School of Global Studies

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修了後の進路

博士前期課程の修了生は、博士後期課程への進学のほか、研究機関、開発援助機関やNGOなど国際協力関連の仕事や、民間企業など多岐にわたる分野で活躍しています。

博士後期課程の修了生の多くは大学や研究機関での研究職に従事しています。

SUGPAS ALUMNIからのメッセージ

地域研究専攻を修了してさまざまな分野で活躍するSUGPAS ALUMNIを紹介します。

貝塚 乃梨子

貝塚 乃梨子(カイヅカ ノリコ)さん

一般社団法人Social Compass理事
昭和女子大学国際文化研究所客員研究員/
環境デザイン学科非常勤講師

2013年3月 博士前期課程 修了

Q1 現在のお仕事について教えてください。

一般社団法人Social Compassでデザインや映像制作、アーティスト支援、イベントプロデュース等の仕事をしています。2013-2020年までカンボジアを拠点に活動していましたが、現在は日本を拠点にカンボジアやラオス、ミャンマー、南アフリカなどのNGOや民間企業、政府機関等と連携しながら、環境問題や保健教育、医療、地方の活性化など、アート・デザインを通じて様々な社会課題に取り組んでいます。2020年からは昭和女子大学環境デザイン学科の非常勤講師として、課題解決のためのデザインを教えています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

大学院時代は、カンボジアの初等社会科教育におけるナショナル・アイデンティティ形成について研究していました。とくに、社会科の国定教科書において、カンボジア人として身につけるべき意識や考え方がどのように記述され、それが実際の教育現場でどのように教授されているのかを調査していました。カンボジアの社会科教育は日本と異なり、道徳、公民、歴史、芸術といった多岐に渡る内容が含まれており、他国との比較という面でも学びの多い2年間でした。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

大学院修了後は平和中島財団の奨学生(プノンペン王立大学客員研究員)を経て現在の職に就きました。様々な国の方と一緒に仕事をするなかで、異文化を理解する姿勢と、コミュニケーション能力はとても大切だと感じています。また、大学院の時に出会った先生方や友人とは今でも一緒に仕事をしたり、相談できる相手として、とても貴重な存在になっています。

(2023年7月掲載)

金 信遇
ジャカルタ出張時に訪問した
東アジア・アセアン経済研究センター

金 信遇 KIM SHINWOO(キム シンウ)さん

ジェトロ・アジア経済研究所
アソシエイト研究マネジメントオフィサー

2016年3月 博士前期課程修了

2022年9月 博士後期課程単位取得満期退学

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 アジア経済研究所で研究マネジメント業務を担当しています。入所後、最初の4年間は科研費の獲得支援と採択後の管理業務を担当し、競争的資金の獲得・運用の全体の流れを学ぶことができました。現在の中心業務は研究所広報と研究成果の発信です。学術界に向けての発信だけでなく、中高生を含む若い世代やメディア、市民社会など、幅広い層にアジ研の研究成果を届けられるように日々工夫しています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 大学院時代は、現代チュニジアの社会経済に関心を持ち、特に国内の地域間格差について研究していました。博士前期課程では、教育の地域間格差に関する修士論文を執筆し、博士後期課程では、フランス保護領期(1881年~1956年)の統計資料や現代のセンサスを使って、過去100年間の地域別人口分布と人口移動、その他の社会経済データからチュニジア社会の変容について研究しました。
 大学院を満期退学したいまも博士論文の執筆を進めており、「地域」と「格差」の観点から現代チュニジア社会を説明することを目指しています。
Research Map

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 地域研究専攻では、研究地域に関する深い知識や地域研究の方法論、フィールドワークの手法に関する授業だけでなく、学外の人を交えた研究会合への参加、シンポジウムの企画・運営、助成金獲得に関する勉強会など、一人前の研究者になるための様々なトレーニングが行われます。学外の研究機関での仕事を始めてから、どこででも通用する訓練を受けたことを日々実感しています。
 もうひとつの大きな収穫は「ひと」です。ゼミ発表がうまくいかず落ち込んでいたときに相談に乗ってくれた同期、研究計画に何度も赤ペンをいれてくださった先輩方とは今もつながりがあり、勉強会を開催したり、お互いの仕事に協力したりしています。自身の研究地域だけでなく、アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカといった多様な地域のことを研究する同期、先輩との交流は、私の研究と人生の幅を広げてくれています。

(2023年5月掲載)

岡田 紅理子
アミの神父と撮影(2019年)

岡田 紅理子(オカダ クリコ)さん

ノートルダム清心女子大学 キリスト教文化研究所 教員

2010年3月 博士前期課程修了

2019年3月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 岡山市にあるノートルダム清心女子大学で教員をしています。キリスト教文化研究所に所属しているので、ゼミはありませんが、キリスト教の歴史や聖書の基礎を学ぶ「キリスト教学」という科目を中心に、自分の研究テーマに通ずる宗教実践や文化人類学の関連科目も担当しています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 台湾においてキリスト教人口は10%にも満たないのですが、全人口の約2%を占める先住民族の8割間では日本植民地時代後からキリスト教が信仰されています。それがなぜなのか、ということについて、アミというエスニック・グループについて、カトリック教会を事例として分析しました。
 修士論文では、特に先住民族の約半数が移住している都市部において、アミがカトリック信仰をなぜ今も世代を超えて継承しているのか、かれらの都市生活と信徒共同体での活動に着目して検討しました。 博士論文では時代を遡って、多神崇拝と精霊祭祀をしていたアミが、いかにして一神崇拝を行うキリスト教を理解し得、入信を選択したのかについて、かれらの日本植民地経験から分析しました。
 地域研究専攻ではフィールドワークがとても大切にされ、私も博士前期課程では1〜2ヶ月単位の短期調査を4回ほど実施しました。
 博士前期課程修了後に一旦は民間企業に就職しましたが、その後、博士後期課程に戻りました。博士後期課程在学中に実施した2年間の長期調査では、想定外のトラブルに見舞われましたが、たくさんの人に助けられて、博士論文を完成することができました。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 「地域研究」という名がついていますが、そこには、自分の調査地が属する地域区分の専門的知識を広く深く身につけるにとどまらず、他の分野・地域を横断しながら、自分の調査地とそこで生きてきた人々、また自分自身が身を置いている生活世界について包括的かつ内在的に理解していく、という意味が込められていると思います。
 先生たちからは、研究教育活動における作法や技法はもちろんですが、(抽象的な言い方ですが)調査者である研究者と調査対象者、あるいは教員と学生といった関係を超えて、他者と信頼関係を築き、他者に寄り添い、公平かつ対等に向き合っていくための、人としてのあり方を学びました。いまだに試行錯誤なので「生かされている」とまでは言えませんが、そういう姿勢を同僚である教職員や学生と関わるときに意識しています。
 地域研究専攻では、先生たち、同期、先輩・後輩と、分野、地域、ゼミを超えて関わるなかで、思いもよらない気づきと視点が加わり、たくさんの点が生まれ、点と点が結びついて線ができ、面が広がっていきます。
 私は、学部ではキリスト教のいわゆる「土着化」を神学的に学び、留学した台湾の先住民族の日常的実践から「土着化」を検討しようと大学院に進学しました。進学当時、地域研究専攻にはまだ「東アジア」を地域とする先生がいらっしゃらなかったのですが、博士後期課程までずっと台湾をフィールドとして研究を続けることができました。それが可能だったのは、上智の地域研究専攻だったから、ということに尽きると思います。自分の研究テーマを自由に探究でき、それに応えてくださる多彩な先生たちがいらっしゃる研究環境にいたからこそ、頭の柔らかさとフットワークの軽さが培われました。今でも研究を継続できるのは、そのおかげです。

(2023年5月掲載)

登利谷 正人

登利谷 正人(トリヤ マサト)さん

東京外国語大学 教員

2017年3月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 東京外国語大学国際社会学部地域社会研究コースで教員をしています。
 アフガニスタンとパキスタンを中心とした南アジアの地域研究、および近現代史について様々な研究をしています。
 大学では、南アジア地域のムスリムの共通語であるウルドゥー語を専攻言語として教えるとともに、アフガニスタンやパキスタンの地域事情や近現代史の講義や、パシュトー語の授業などを担当しています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 大学院に入学した当初は、18世紀中期のアフガニスタンを中心とした政治史について研究していました。
 大学院在学時に、パキスタンのペシャーワルに留学したことで、アフガニスタン・パキスタンの間にまたがる様々な人的交流と、同地域の文芸をめぐる問題、さらには近代以降にこの地域に大きな影響を及ぼしたイギリスの統治政策と現地での対応に関心をもち、パキスタンやアフガニスタン、インド、イギリスなどで調査を実施しました。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 地域研究専攻は多様な地域やディスプリンを専門とする先生や大学院生が集まっていたため、自分が研究対象とする地域以外の事情や、様々な研究手法に触れることができました。そのため、研究関心を広げながら、専門とする地域や研究方法に関わりなく議論する素地を自然と身につけることができました。これは、現在の仕事で大学の同僚や学生たちと関わる上で、非常に良い刺激であったと実感しています。
 また、地域研究専攻は、先輩・後輩に関わらず、研究や調査に関することだけでなく、日常の些細なことも含めて気軽に話すことができる良い雰囲気でしたので、充実した大学院生活を送れたと思っています。

(2023年5月掲載)

ANTONY SUSAIRAJ

ANTONY SUSAIRAJ(アントニー スサイラジ)さん

南山大学人文学部人類文化学科 教員

2016年9月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 現在南山大学人文学部人類文化学科で教員をしています。専門分野は南アジア、インド社会と文化などです。南山大学では主に地域の文化と歴史(南アジア)、異文化コミュニケーション、在日インド人を対象にしたフィールドワークなどの授業を担当しています。
 また、インド社会に関する様々なテーマについての研究を続けています。インドの大学と協定を結び、研究協力も行っています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 博士論文の研究テーマは「スワミ・ヴィヴェーカーナンダの普遍宗教論 ― 多宗教国家インドにおける宗教的調和と宗教間対話のために」でした。
 インドは世界の中で宗教、文化、言語の多様性が際立つ国の一つです。このため、インドは世俗的な民主主義国家として宗教の自由もありますが、インドの各地域では毎年宗教の名の下に集団的な暴力行為や宗教上の争いが続いています。このような宗教的な問題を解決するために、インドの哲学者で宗教指導者であるヴィヴェーカーナンダの宗教的調和と普遍宗教の思想の影響について研究しました。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 指導教員である赤堀先生、ヴェリヤト先生のゼミでは研究方法、論文の書き方などを学び、専攻の先生方の現地でのフィールドワーク調査についての講義などから学問的な調査方法を学びました。そして、様々な地域を対象に研究をしていた大学院生達の研究発表からも色々な研究テーマについて学びました。
 大学院で学んだことは、現在、教員・研究者としての仕事に大変活かされています。また、学生達と一緒に在日インド人を対象にしたフィールドワークやインドでのフィールドワークも楽しみながら行っています。

(2023年5月掲載)

三代川 寛子
マセノ(ケニア)のコプト病院にて

三代川 寛子(ミヨカワ ヒロコ)さん

東京外国語大学大学院 総合国際学研究院 教員

2006年3月 博士前期課程修了

2009年3月 博士後期課程単位取得満期退学

2016年3月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 博士後期退学後は、上智大学カイロ研究センター(日本学術振興会カイロ研究連絡センター内に設置)に2年間、大学共同利用機関法人人間文化研究機構地域研究センター(「イスラーム地域研究」プロジェクト上智大学拠点)に5年勤務したので、単位取得退学後も随分長く上智大のお世話になりました。
 現在は東京外国語大学のアラビア語専攻で教員をしています。主専攻のアラビア語の授業に加えて、中東の民族・宗教マイノリティについての講義、ゼミを担当しています。他には学部生の短期・長期留学関連、教養外国語アラビア語関連の業務を担当しています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 大学院では、エジプトに暮らすコプト正教徒の文化ナショナリズム運動について研究しました。第一次大戦後の対英独立運動では、ムスリムもコプトも同じエジプト人だとして両者の連帯が訴えられましたが、そうした思想・運動の源流を探るため、19世紀末ごろから始まったコプトの知識人による文化ナショナリズム運動を分析しました。
 現在も引き続き同じテーマに取り組んでいますが、最近はコプト正教会のサブサハラのアフリカにおける宣教活動について調査を始めました。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 今では大学院生の数が減っているようですが、私が院生だった頃は地域研究専攻には大学院生が多数在籍していたので、中東地域およびそれ以外の地域を専攻とする院生と交流を持つことができました。その人脈には今でも時々助けられています。
 また、上述の人間文化研究機構のプロジェクトなどをはじめとして、外部資金による研究プロジェクトが常に動いていたので、研究会が活発に行われており、そうした研究会の運営手伝いなどを通して他大の隣接分野の研究者・大学院生と交流を持てたことは貴重な経験でした。

(2023年5月掲載)

飛内 悠子

飛内 悠子(トビナイ ユウコ)さん

盛岡大学文学部社会文化学科 教員

2009年3月 博士前期課程修了

2014年3月 博士後期課程修了

2014年3月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 2018年4月から盛岡大学文学部社会文化学科で教員をしています。社会文化学科には社会学、フランス、ドイツ文化、政治学、現代思想、歴史学、考古学など様々な分野を専門とする教員がいますが、そこで文化人類学を担当しています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 博士前期課程在籍時はスーダン共和国の首都ハルツームに住む南スーダン(当時のスーダン南部)人の言語変化について、フィールドワークをもとに明らかにしようとしました。
 また後期課程に入ってからは南スーダン共和国の独立を契機に多くの人が南スーダンに向かったため、主なフィールドを南スーダンに移し、ハルツームから南スーダンに「帰った」人々の生活再建の過程を見るとともに、内戦をはじめとしたさまざまな理由により移住を繰り返す人々と彼らが信仰するキリスト教との関係について研究しました。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 博士前期、後期課程を通じ、様々なことを学びました。特にフィールドにいかに向き合うのか、その姿勢を教わったと思います。
 また上智の地域研究専攻には中東、アフリカ、東南アジア、ラテンアメリカといった様々な地域、そして様々な学問分野を専門とする先生方と学生が集まっています。そうした環境の中で勉強できたことで、自分が専門とする地域や学問分野に限らず、様々な視点のありようを知ることができました。
 現在の勤務先である盛岡大学の社会文化学科もまた、様々な分野を専門とする教員が集まっています。地域研究専攻で学んだからこそマルチディシプリンな職場にすんなりなじめたと思います。

(2023年5月掲載)

溝渕 正季

溝渕 正季(ミゾブチ マサキ)さん

広島大学大学院人間社会科学研究科 教員

2008年3月 博士前期課程修了

2012年9月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 博士課程修了後、ハーバード大学(2013-2014年)や名古屋商科大学(2014-2021年)を経て、2021年4月からは広島大学で教員をしています。
 これまで主に中東地域の政治・軍事・安全保障問題、イスラーム政治運動、中東をめぐる国際関係などを対象に研究を続けてきました。
 広島大学では「宗教政治社会論」、「西アジア近現代史」、「戦争と平和に関する学際的考察」、“Middle East Politics and Islam”、「現代中東研究」などの授業を担当しています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 大学院時代から現在と同じテーマについて研究を続けてきました。きっかけとなったのは2001年の9.11米同時多発テロ事件で、高校三年生であった当時の私は中東やイスラームについて強い興味と関心(今思えばほとんど「オリエンタリズム」的なものではありましたが)を持つようになり、その後、大学生の時にイラク戦争を目の当たりにするなかで、徐々に研究の道を志すようになっていきました。
 大学院時代にはシリアやレバノンへの留学も経験しました。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 今から思えば、自分の能力や将来への不安から、妙に肩肘を張った小生意気な学生であったと自覚しておりますが、そんな私を先生方には暖かく見守っていただき、本当に自由に好きなことを研究させていただきました。とりわけ、「地域研究とは何か?」、「地域といかに向き合うべきか?」、「地域研究はディシプリンたり得るか?」といった答えの出ない問いを巡って、時にお酒を片手に、先生方や院生たちに夜遅くまで延々と議論に付き合っていただけたことは、今となっては非常に大きな財産となっています。
 大学院時代に自身が経験したような自由でアットホームで知的刺激に満ちた研究環境を、現在、自分自身が大学教員となり、大学院生たちと日々接するなかで、少しでも作っていけたらなと思っています。

(2023年5月掲載)

若松 大樹

若松 大樹(ワカマツ ヒロキ)さん

トルコ共和国国立メルスィン大学 教員

2003年3月 前期課程修了

2011年9月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 トルコの地中海岸の町にある国立大学で教員をしています。
 2011年に博士課程を修了した後、トルコのさまざまな大学で教員として勤務した後、2019年に現在の職場に着任しました。イスラーム学部基礎イスラーム学科の学科長を務めています。普段は大学で研究・教育活動を行うとともに、人事案件や学事などの学務をこなしています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 主にトルコに居住するアレヴィーと呼ばれる宗教的少数派のアイデンティティ問題について、文化人類学的視点から研究していました。ある時はムスリム、ある時は非ムスリム、またある時はトルコの民俗宗教など、周辺の政治的・経済的・社会的状況に応じてさまざまに自己規定を変化させる彼らは、オスマン朝時代から今日まで差別の対象となってきました。
 博士前期課程では彼らが運営する文化協会が出版する出版物を調査し、博士課程では東部アナトリア地域でクルド系のアレヴィーの村落にて長期のフィールド調査を行いました。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 大学院時代には、さまざまな分野・地域を研究する先生方や同期、先輩、後輩と気軽に交流する機会があったことから、コミュニケーションする力が得られたという点は大きいと思っています。
 また上智大学は他大学と比べても国際性が豊かで、教員も学生もさまざまな国の出身者が多かったため、異文化を肌で感じながら違和感なく学生生活を送れたことによって、海外で生活し、そしてしっかりと適応するための能力を養うことができた点は、いまの仕事に大きく役立っているのではないかと感じています。

(2023年5月掲載)

岩坂 将充
トルコ・アンカラにある「7月15日民主主義博物館」。
未遂に終わった2016年クーデタへの人々の抵抗を記念
した博物館は、後退する民主主義のもとでの政軍関係を
理解するうえで、必見の施設といえる。

岩坂 将充(イワサカ マサミチ)さん

北海学園大学法学部政治学科 教員

2003年3月 前期課程修了

2011年9月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 2019年から北海学園大学法学部政治学科で教員をしています。
 博士後期課程満期退学後は、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2014年からは同志社大学高等研究教育機構に勤務していました。
 現在の勤務先では比較政治学をおもに担当していますが、中東政治論という科目も設置し担当しています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 トルコに焦点をあて、博士前期課程・後期課程ともに政軍関係を研究してきました。トルコでは長らく政治に対する軍の影響力が強い時代が続いていました。そこで、軍がクーデタのようなかたちで政治に介入した要因について、将校らを取り巻く状況からの分析を試みました。
 現在では、2000年代以降のトルコの政治状況、とりわけ民主主義の進展や後退に注目した研究に取り組んでいますが、大学院時代の関心から引き続き政軍関係の変化についても分析をしています。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 自分とは異なる国や地域、分野を研究する同期や先輩・後輩と楽しく活発に交流できたことが、私が大学院で得たもっとも大切な経験だったと思います。また、そうした仲間たちと自由に議論できる雰囲気や環境が整っていたことも、とてもありがたかったと感じています。
 それと同時に、先生方が開く研究会への参加などを通じて学外の研究者や大学院生と顔見知りになれたことは、いまにいたるキャリアに大きなプラスになりました。

(2023年5月掲載)

高橋 圭
撮影:リック・ロカモラ
写真集『マイノリティとして生きる―アメリカの
ムスリムとアイデンティティ』出版記念セミナー
(2022年12月4日)より。
https://islam-gender.jp/news/364.html

高橋 圭(タカハシ ケイ)さん

東洋大学文学部史学科 教員

2010年3月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 東洋大学文学部史学科で教員をしています。学科は日本史、西洋史、東洋史と専攻に分かれていますが、私は東洋史学専攻に所属してイスラーム世界の歴史を幅広く教えています。
 研究については、ここ最近は現代アメリカに暮らすムスリムの信仰や実践をテーマに取り組んでいます。2016年から17年にかけては1年半アメリカに研究留学にも行き、以後、毎年夏はできるだけ現地で過ごして調査を行っています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 私は歴史学を専門としていて、大学院では近代エジプトにおけるスーフィズムと呼ばれる信仰運動と、それを実践するスーフィー教団の歴史をテーマに研究を行いました。
 また在籍中は2年ほどエジプトにも留学をしました。語学(アラビア語)の勉強と史料の収集が主な目的でしたが、振り返ってみれば、現地社会に暮らし、異文化の中で試行錯誤する経験ができたのが留学の一番の成果だったと思っています。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 何よりも学際的な環境に身を置いて勉強できたことが、その後自分の研究の視野を広げたり、共同研究に参加したり、また大学で様々な関心を持つ学生の教育にあたったりする際に大いに活かされていると感じています。
 授業を受けるだけでなく、いろんな分野や地域を学ぶ他の学生たちと切磋琢磨できたことも、とても大事な経験だったと思います。
 また先生方は学外との共同研究にも積極的に関わっており、そうした共同研究にも参加させてもらい、学外とのネットワークが広がったことは、現在の仕事にそのままつながっています。

(2023年5月掲載)

水谷 裕佳

水谷 裕佳(ミズタニ ユカ)さん

上智大学グローバル教育センター 教員

2005年3月 博士前期課程修了

2009年3月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 博士号取得後、北海道大学アイヌ・先住民研究センター等での勤務を経て、2013年度から上智大学グローバル教育センターで働いています。
 同センターでは、先住民族や地理的境界に関する日本語および英語開講の全学共通科目を担当すると共に、留学や国際交流関連の業務に従事しています。
 研究では、米国領の周縁地域(米国メキシコ国境地域や太平洋の島嶼部など)に居住する先住民族の歴史的体験、先住民族が主導する文化復興の取り組み、文化復興や歴史の再解釈を支える展示活動のあり方、といった事項を取り上げています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 私は学部時代から、米国メキシコ国境地域のエスニシティにまつわる課題に関心を抱いてきました。
 大学院では、同国境地域に居住する先住民族ヤキのうち、米国側の集団であるパスクア・ヤキ・トライブに着目して研究を行いました。米国連邦政府による上記トライブの認定プロセスや、国境地域に暮らす人々との関わりに触れながら、米国メキシコ国境地域における先住民族と国家や地域との関係性を考察しました。博士論文を基にした著書『先住民パスクア・ヤキの米国編入―越境と認定』(北海道大学出版会、2012年)は、地域研究コンソーシアムの登竜賞に選ばれました。
 また、在学中には、カリフォルニア大学バークレー校で調査、研究を行う機会にも恵まれました。自身が先住民の学生と議論を交わしたり、地域の先住民コミュニティでボランティア活動を行ったりする中で、私の視野は大きく広がったと思います。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 地域研究専攻の先生方は、専門分野について緻密に指導してくださる一方で、学生の自主性や個性を尊重し、自由に研究することを応援してくれました。他の学生の姿を思い出してみても、やはりのびのびと学んでいたように思います。
 奇遇にも母校の上智大学に職を得た私自身も、学生の自主性や個性を重んじながら、学びや成長を支援するよう心がけています。

(2023年5月掲載)

田代亜紀子

田代 亜紀子(タシロ アキコ)さん

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院 教員 

2001年3月 博士前期課程修了

2015年3月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 2015年4月から北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院で教員をしています。博士後期修了後は、(独)東京文化財研究所、(独)奈良文化財研究所でそれぞれ4年半、特別研究員(アソシエイトフェロー)として文化遺産国際協力事業を担当してきました。主に東南アジア地域の担当だったのですが、大学院でのネットワークや経験に大きく助けられました。

 現在は、語学授業を担当しながら、大学院では文化遺産国際協力論、観光と国際交流などの授業を担当しています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 東南アジアの遺跡保存政策と地域社会をテーマに研究を続けています。学部の時、インドネシアに留学する機会があり、ボロブドゥール遺跡を対象とした卒業論文を書いたのですが、そこでボロブドゥール遺跡とアンコール遺跡群(カンボジア)の保存政策に関する共通点を知りました。そこで、博士前期課程では、アンコール遺跡群を対象にし、遺跡保存と住民をテーマに、論文を書きました。さらに、博士後期課程に入学する前に、タイ調査のための研究助成金を1年間得たこともあり、博士課程では、インドネシア、カンボジア、タイの3カ国での遺跡保存政策に関する研究テーマを設定しました。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 先生方はもちろんのこと、様々な地域を対象にした先輩と後輩にいろいろ助けていただきました。また、タイ、カンボジア、インドネシアからの留学生も在学していたので、語学や文化について彼らから直接学べることも大きかったです。

 東南アジア地域の遺跡保存分野では、既に上智大学の名が、各国の文化行政機関に広く知られていたので、調査は非常にスムーズに進みました。一方で、上智大学の名を背負っているという責任も強く感じました。大学院が都心部にある、という地理的条件も最高だと思います。都内で開催される様々な研究会に参加して知見を広げることもできますし、アルバイト先も大手出版社、研究所、省庁など研究や就職に役に立つ場所が選べました。

(2015/12/1掲載)

東海林充

東海林 充(ショウジ ミツル)さん

キーコーヒー株式会社

2013年3月 博士前期課程修了

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 入社当初より、キーコーヒー関東工場(千葉県船橋市)製造課に所属しています。現在は世界中から輸入されたコーヒーの生豆を焙煎する業務を担当しています。簡単に言うとコーヒーの味をつくっている工程です。関東工場は、全国に4カ所ある工場のなかで最も生産量が多い主力工場で、月間でおよそ1,000トンを製造しています。コーヒーの杯数に換算すると、月間でおよそ1億杯(10g/杯換算)となります。
 焙煎の目的は、ただ単に生豆を煎ることではなく、それぞれの生豆が持つ特性を最大限に引き出すように煎り上げることです。コーヒーの味は、生豆の品質はもちろんですが、焙煎手法や焙煎の度合い(焙煎温度・焙煎時間など生豆への熱の伝わり方)によっても変わります。そのため、タイプの異なる焙煎機を使い分けて、理想の味わいを再現しています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 インドネシア・中部ジャワに位置する都市ジョグジャカルタで生活するベチャ夫と、そこに暮らす人々の「声」を通じて、ベチャがどのような文脈で、どのように評価されているのかを検証し、街が発展する中でその時代に適応していこうとするベチャの社会的存在意義、そしてジョグジャカルタのベチャ像にかんする今日的側面の一部を描くことが研究テーマでした。
 ちなみに、ベチャ(becak)とはインドネシアの自転車タクシーの呼称です。大人1人、ないしは2人が乗ることができる客席が前にあり、後ろから運転手がこぐ形がインドネシアでは一般的です。インドネシア国内において、ベチャはかつて「卑しい職業」「非人道的な職業」というレッテルが貼られ、その一方で「庶民の足」「道路の王様」としても親しまれてきた乗り物でした。近年ジョグジャカルタでは、そのベチャを対象とした新たな規制が生まれ、同時にベチャを保護しようとする動きも見られるようになりました。この流れはこれまで規制対象外であったジョグジャカルタのベチャの環境が変化しつつあることを意味しており、また従来描かれきたインドネシア国内におけるベチャのイメージ像との乖離が見られました。そこには「卑しい職業」としてではなく、また「庶民の足」としてでもない、新たな役割が付与されていると考え、上述のテーマを研究テーマとしました。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 キーコーヒーはインドネシア・スラウェシ島北トラジャ県に直営のコーヒー農園、『パダマラン農園』を持っており、コーヒーの栽培を行っています。現在も数名の社員が現地駐在しています。学部・院とインドネシア研究を行ってきたこともあり、ゆくゆくはパダマラン農園での業務に携わることも考えられます。また、現地駐在となれば言語はもちろん、文化・慣習の異なる地での業務となり、特に仕事に対する考え方や姿勢は日本とインドネシアとでは異なるため、思考の柔軟さが求められます。その点は地域研究を通じて十分養われてきたと思います。

山元一洋

山元 一洋(ヤマモト カズヒロ)さん

特定非営利活動法人ジーエルエム・インスティチュート

2012年3月 博士前期課程修了

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 博士前期課程を修了して4年目になりますが、既に2つの仕事を経験しています。まず、修了直後に外務省に入省し、政府開発援助(ODA)の技術協力事業の管理・調整に2年間従事しました。事業を制度面から支える仕事で、具体的には、海外ボランティア事業の見直しや定期的な行事に日本の援助実施機関である国際協力機構(JICA)と取り組んだり、技術協力を実施するための手続きの管理を行ったりしていました。また、入省当時は、現在一つの援助手法になりつつある、ODAを活用して中小企業等の海外展開を支援しようという動きが始まった頃で、企業の行うプロジェクトの監理をするとともに、試行錯誤を繰り返しながら新しいスキームを創り上げていくという貴重な経験を積むこともできました。

 現在は、国際協力分野で活動するNPOに転職し、東京の事務局でプロジェクト管理から総務や広報まで、多岐に亘る仕事に携わっています。今の職場は比較的小規模で、国内の常勤職員は2人しかおらず、起こる全てのことに対して主体的にならざるを得ず、最近では経営についても考えていかなければと思うようになりました。具体的な仕事は、海外プロジェクトの進捗管理や外務省などのドナーとの調整、イベントの企画・実施、ニュースレター作成やホームページの更新、会員の管理、外部からの照会への対応など、説明しきれない程多くの仕事があります。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 大学院では、ブラジルにおける公教育の民主化について研究しました。公教育の民主化とは、市民の参加を通じて地域の特徴に適した教育を実現し、ひいては市民権の構築へと繋げようとするもので、1988年の民政移管を契機にブラジルで政策として進められてきました。ポルトガル語学科で学んでいた頃にゼミでこの政策に関心を持ち、参加型の学校運営における学校とコミュニティの関係性を考察することを通じて、政策の目的が実現し得るのかを研究するために地域研究専攻に進学しました。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 大学院では、論文を執筆する作業や、多くの研究者と接する機会を通して、学術的な知見に加えて論理的に考える力や、説明する力が得られたと思います。特に、在学中に現地調査を3回、ブラジルで行われた国際会議での発表も経験したことで、海外で仕事をする際にも役立つ形でこうした能力を高めることができたと思います。

 今の仕事でも、大学院での経験が大いに活かされています。プロジェクトを立案する作業は大学院での研究と通じており、細かな調査や分かり易い説明を追求する過程は、何度も経験したフィールドワークや論文の執筆、研究内容の発表とほぼ同じといえます。また、今の仕事は、プロジェクトの受益者や関係機関など、様々な背景を持つ人々と関わるため、客観的且つ慎重に物事を捉え考えることが求められた大学院での経験が役立っています。

中村典

中村 典(ナカムラ ノリ)さん

在カンボジア日本大使館

「草の根・人間の安全無償協力」外部委嘱員

2012年3月 博士前期課程修了

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 在カンボジア日本大使館の「草の根・人間の安全無償協力」の外部委嘱員として勤務しています。「草の根・人間の安全無償協力」とは、開発途上国の地方公共団体、教育・医療機関、並びに国際及びローカルNGO(非政府団体)等が途上国で実施する1,000万円以下の小規模案件に対して資金協力を行うものです。私は医療・水・職業訓練・文化分野を担当しておりますが、医療分野の案件が主で、カンボジア各州の保健局関係者や保健関係のNGOと協同して案件をサポートしています。案件の緊急性精査、及び案件のフォローアップのための現地調査が業務の約半分を占め、その他は報告書作成や必要書類のやり取りといった業務です。国際協力の支援側と、支援を受ける側との橋渡しをするこの仕事は、国際協力を様々な視点から俯瞰することが、大変意義のあるお仕事です。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 1979年に大分県で発信された地域振興を目指した運動である「一村一品運動」が、カンボジアにおいてどのような制度枠組みで実施されているか、また現地調査を通じた「一村一品運動」が実施される現場を描き出すことで、カンボジアの「一村一品運動」が目指す地域振興の有効性や弱点を検討することを研究テーマにしました。 カンボジアの「一村一品運動」の製品の中でも、とりわけ自らの食文化に対する興味より、カンボジアの伝統的調味料として使用される魚醤油「プラホック」に注目しました。カンボジアというとポルポト時代、地雷、貧困等、負の固定概念が一般的に抱かれがちですが、現地の人々の日常生活はそればかりではありません。魚醤油生産を行う現地の方々と関わる中で、自然の中で生きる人々の精神的豊かさを知る機会が多くあり、自分の持っていた狭い見識・価値観を広げる意味でも大変意義のある2年間でした。

Q3 大学院で得られたこと、いまの仕事に活かされていることなどあれば教えてください。

 大学院卒業後、中国・日本・カンボジアと3カ国での業務経験をしてきましたが、業務内容は異なれどいずれの業務でも、コミュニケーション能力、問題察知/解決能力、仕事効率化能力が問われるなと実感しています。とりわけコミュニケーション能力、及び問題察知/解決能力の部分は、大学院での現地調査を通じて培うことが出来たのではないかと思います(もちろん、まだまだ修行は足りません…)。

  当時は大学院を卒業して直ぐに国際協力の方面に行きたい!という希望があったのですが、別のご縁があってIT会社に就職しました。希望が実現するまで少し遠回りになりましたが、当時自分の興味とは真逆の分野と捉えていたIT会社には、自分が出会ったことのない世界があり、沢山のバックグラウンドを持った素晴らしい先輩方に出会えました。そこでの経験は現職で生かせる部分も多々あり、これからも狭い世界に留まらず、自分の興味以外の分野も積極的に見て切り拓く姿勢を意識的に持ち、前進していきたいなと思います。

辰巳頼子
長男と次男と

辰巳 頼子(タツミ ヨリコ)さん

清泉女子大学 教員

2000年3月 博士前期課程修了
2010年3月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 清泉女子大学文学部地球市民学科で教員をしています。子どもが小さくて海外での調査になかなか行けていませんが、フィリピンの南部のムスリム地域で、若い世代の人たちに話を聞きながら、イスラームの信仰についての調査をしてきました。東日本大震災以降は福島県からの避難者の調査も東京で行っています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 フィリピン南部のふつうの高校生や大学生にとって、イスラームを学ぶとはどういうことなのか、なかでも、イスラーム学を極めようと考えてアラブ地域に留学する学生たちは、どういう人生設計を描いているのか、に興味を持ち、彼らの留学先に居候して留学生活を共有することもしました。フィリピン南部の一部は治安が悪いと言われる地域でしたので、現地に貼りついての長期調査は難しかったのですが、マニラやエジプト(フィリピンムスリムの留学先)で、いろいろな人に助けられながら調査しました。

Q3 地域研究専攻の魅力、上智の地域研究だから得られた知識、経験などあれば教えてください。

 東南アジア研究、中東研究の両方の授業をとり、先生方や友人に多くを教えられました。直接私のフィールドとは関係のないラテンアメリカ地域の授業にも参加し、地域を超えて存在する問題にも目を向けることができました。

 中にいたころはよくわからなかったのですが、まわりからは上智は自由だね—明るいねーとよく言われました。たしかになにかを窮屈に思うことなく、のびのびと自分のしたいことに没頭できたことは本当に貴重でした。あたたかくアットホームな雰囲気を先生方がつくりだしておられるのではないでしょうか。

 大学院生になると、研究会や勉強会が学外でも多くあります。自由な場に身を置くことで、学外にもネットワークができていったと思います。

堀場明子

堀場 明子(ホリバ アキコ)さん

財団法人笹川平和財団 主任研究員

2009年9月 博士号(地域研究)取得

Q1 現在のお仕事について教えてください。

 笹川平和財団で主任研究員をしています。タイ深南部紛争の解決のために、現地NGOや周辺国のNGOと連携して平和構築事業を行っています。また、以前は、衆議院議員の政策担当秘書をしていたので、政界における女性の活躍に関する事業も担当しています。

Q2 大学院時代の研究テーマについて教えてください。

 インドネシア東部マルク州における宗教が争点となった紛争の分析を行っていました。同じ民族でありながらイスラーム教徒とキリスト教徒の住民が、どのような経緯で暴力に加担し、互いに戦い、紛争が拡大してしまったのか、聞き取り調査をもとに、その地域の構造的問題からナショナルなレベルでの政治的な紛争への関与まで幅広く研究してきました。

Q3 地域研究専攻の魅力、上智の地域研究だから得られた知識、経験などあれば教えてください。

 地域研究は、言語を習得し、文化、慣習、宗教など身をもって体験し、そこに暮らす人々と信頼関係を構築しながら、その地域についての知識を深めていきます。特に上智大学では、その地域のことであれば、政治、経済、歴史、文化と多角的に理解することが求められていると思います。それは、単なる地域の事情に詳しいだけではなく、あらゆる観点から地域の問題を分析し、住民に寄り添う視点を持ち、解決しようとする実践型の研究をしている教授陣が多かったからではないでしょうか。私の場合、紛争直後のマルク州で、住民と生活を共にし、問題解決に取り組む姿勢を忘れず研究を続けてこられたのは、上智大学の地域研究で学んできたからだと思います。

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