2018年度研究活動 | 所内研究活動

代表的な媒介言語の比較研究

  • 木村護郎クリストフ(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部ドイツ語学科教授)
  • 市之瀬 敦(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部ポルトガル語学科教授)
  • リサ・フェアブラザー(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部英語学科教授)
  • 井手(武田)加奈子(SOLIFIC共同研究所員)
  • シモン・テュシェ(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部フランス語学科教授)

概要

2009年度から2011年度まで3年間行ってきた本研究所の共同研究「媒介言語論の展開と深化」は、主に複数言語を使用する媒介、混成言語(ピジン・クレオール)による媒介、計画言語による媒介、覇権言語による媒介といった異なる媒介形態を比較することに主眼をおいた。その成果は共同研究者それぞれによる諸論考や著作の形で結実したほか、直接、比較を行った論考として『Sophia Linguistica』 60号に共同執筆による論文「比較媒介言語論序説」を発表した。
このような、異なるタイプの媒介形態の比較のほか、同一のタイプに属する個別言語が分布や社会背景の違いなどによってどのように異なる特徴をもっているかをより詳しくみていくことも媒介言語の把握のために不可欠である。この点は当初から視野に入れていたが、これまで重点的にはとりくんでこなかった。そこで2012年度より、ヨーロッパに起源をもつ代表的な媒介言語としての英語、フランス語、ポルトガル語、ドイツ語および日本語が異言語話者間のコミュニケーションにどのように使われているのかを比較し、またそれぞれどのような特徴および可能性、問題点をもっているかを問いとして設定した。
これまでそれぞれの言語については個別に研究が積み重ねられてきたが、その成果を、言語をこえて共有し評価するのがまず第一の課題となる。それをもとに、媒介言語としての共通点や相違点を明らかにしていくのがねらいである。具体的には、①各言語の普及機関の比較、②各言語の媒介言語としての機能に関する議論の比較、③各言語の媒介言語としての運用実態の比較を行う。そのことをとおして、媒介言語として非母語話者の間で使われる際の特徴が母語話者同士のコミュニケーションとどのように異なるかという、本共同研究の当初の問いを別の角度から検討することになる。
2017年度は、本共同研究メンバーが企画して言語管理に関するソフィア・シンポジウムの成果を刊行することが最大の目的であったが、個別の研究成果が収録されたこれらの刊行物を踏まえて、2018年度はそれらの成果を統合することをめざす。

 

比較統辞論の理論的・実証的研究

  • 加藤孝臣 (SOLIFIC正所員、上智大学言語科学研究科言語学専攻准教授)
  • 福井直樹 (SOLIFIC正所員、上智大学言語科学研究科言語学専攻教授)
  • 高橋亮介 (SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部ドイツ語学科教授)
  • 加藤泰彦 (SOLIFIC名誉所員、上智大学外国語学部名誉教授)
  • 上田雅信 (SOLIFIC共同研究所員、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院教授)

概要

理論言語学は、過去半世紀の間に著しい発展を遂げてきたが、その注目すべき成果の一つは、人間言語の普遍性と多様性とを、適正な方法論に基づいて正面から問うことができる理論的基盤を確立したことである。言語に普遍性が存在することは、言語が生物学的な種としてのヒトの特性として獲得・使用可能なものであるという事実からの必然的帰結であるが、その一方で、現実の言語には広範な多様性が存在する。言語の普遍的特性は何であろうか。また、言語の多様性の根源は何であろうか。
以上の問題意識から出発し、この共同研究では2012年度から2017年度にかけて、主にドイツ語・英語・日本語の実証的な比較、対照研究に基づきながら、「統辞法の原始演算」「否定と経済性との関係」「生物言語学のメカニズムの因果性」をはじめとする様々なトピックの扱いを通じて言語の普遍性・多様性の実相の一端を明らかにしてきた。さらには、「空間移動表現」「放出動詞」といったトピックを手がかりに、統辞論とレキシコンとの密接な関係にも着目し、語彙特性が様々な文法現象にどのように関与しているのかという点についても詳細な検討を加えてきた。こうした多彩な実証的成果を踏まえ、2018年度も、言語の普遍性・多様性や統辞論とレキシコンのインターフェイスをめぐる諸問題について、引き続き理論的な考察を深めていく予定である。

 

学習ストラテジー、学習スタイル、専攻分野の統計的関連性の研究:

CLILを枠組みとした高等教育における独語、仏語、西語、葡語、露語のカリキュラム、

指導法 評価システムおよび教材開発

  • 渡部 良典(SOLIFIC正所員、上智大学言語科学研究科言語学専攻教授)
  • 木村護郎クリストフ(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部ドイツ語学科教授)
  • 市之瀬 敦(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部ポルトガル語学科教授)
  • 原田 早苗(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部フランス語学科教授)
  • 西村 君代(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部イスパニア語学科教授)
  • 秋山 真一(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部ロシア語学科教授)

概要

学習ストラテジー(外国語を習得するために絵学習者が用いる大局的な方法)、学習スタイル(各学習者の外国語学習に対する性向)、および専攻分野(自然科学系、社会科学系、人文系)、これらの間に関係がみられるかどうかを統計的に検証する。究極の目標は、高等教育機関の外国語教育におけるカリキュラム、指導法、教材および評価システムの開発のための基礎データの分析結果に基づき、高等教育機関における外国語教育における指導、評価、診断および矯正に役立てるための教材を開発することである。本テーマは昨年度からの継続課題であるが、すでにデータ収集分析を行い、その結果に基づき卒業論文、小論文等を作成するための指導教材を作成している最中である。

 

教室習得における学習者の日本語能力と個人差要因との関係

  • 小柳かおる(SOLIFIC正所員、上智大学言語教育研究センター教授)
  • 峯 布由紀(SOLIFIC正所員、上智大学言語教育研究センター准教授)
  • 向山 陽子(SOLIFIC客員研究所員、武蔵野大学 グローバル学部 日本語コミュニケーション学科 教授)

概要

第二言語習得は外的要因(学習環境、教授法)と内的要因(学習者の特性)、言語形式の特性(発達段階、難易度)などが複合的に絡み合い、複雑なプロセスである。その根底には学習者の内的な認知的メカニズム、さらには脳内メカニズムが存在する。よって、本研究は、英語学習者に比べてまだ研究が少ない日本語学習者について、その複雑な習得過程を解き明かしていくことを目的としている。
2016年度より東北大学加齢医学研究所のメンバーと言語処理の脳内実験の共同研究を行っている。研究の目的は、学習者の熟達度の違いや個人差要因(作動記憶の容量)と言語処理における脳内活動との関係を明らかにし、第二言語習得に必要なインプットの処理スキルがどのように発達していくかを明らかにすることである。2017年度にfMRI(機能的磁気共鳴画像)を用いて、中国人の日本語学習者の脳内文処理実験のデータの収集を終えることができた。2018年度は、脳の画像データの分析(主として東北大チームが担当)と、それに関連する行動データの分析(主として上智大チームが担当)、および脳の活動と行動との関連性の検討(共同)を進め、学会の口頭発表や論文執筆につなげていきたいと考えている。

 

高度情報化設備の活用による新しい音声教育の開発と基礎研究

  • 北原真冬(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部英語学科教授)
  • 小松雅彦(SOLIFIC客員研究所員、神奈川大学外国語学部 英語英文学科 准教授)

概要

本研究は,2017年度の研究課題「高度情報化設備の活用による新しい音声教育の開発と基礎研究」の継続であり、引き続き、研究・教育用に運用するwebサーバおよびクラウドサーバを用いた様々な音声教育システムの開発と基礎研究を行うことを目的とする.
現在は北原研究室内で小規模なwebサーバを運用し,コンテンツマネージメントシステム(CMS)を利用した授業を今年度開講科目の全てにおいて展開している.MoodleやLoyolaに比べて軽量なシステムの利点は,リアルタイムでの編集がすぐに行えるところにある.また,様々なカスタマイズが可能で,柔軟な運用が行えることは,独自サーバの大きな利点である.例えば,コメント機能を利用し,授業内でも携帯電話からの書き込みによって,クラス内の議論を即時的に,かつ授業後にも記録が残る形でシェアできている.
一方で、音声学研究室の主な研究資源や卒論、修論、博論の指導は、すべて商用のサーバ上における同様のCMSで運用し、音声研独自のローカルなシステムを、webサーバとして公開することは行っていない。これは、セキュリティにまつわる様々なリスクを考えた際に、専任のテクニカルスタッフが常駐していない環境での運用が、近年、ますます難しくなっていることに起因する。
従って、2017年度までは独自のサーバを運用することに主眼を置いていたが、今年度からは、ローカルな環境では小規模な運用実験を行い、本格的な公開は商用サーバ上で行うことを目標にしたい。一方で、運用のコンテンツとなる音声や画像等の作成・編集を見据えて、より高精細なグラフィックや大量のマルチメディアデータに対応したデジタルスタジオの構築を目指し,機材の整備とノウハウの吸収に努めたい。コンテンツとしては、前年度と変わらず、音声教育,特にweb上での簡単な音声実験システムを構築し,手軽に多数の被験者のデータを取ることができるようなシステムを開発・運用することを目指す.もちろん,これは語学教育の様々な場面において応用可能である.さらに,音声実習課題や,発音向上プログラムの開発につながると考えられる。
また、近年の音声・音韻研究において,大規模なコーパス,音声データベースを用いた高度な情報処理による分析は有力な一分野を成している.本研究室においては,その分析手法を音声学教育の中で実践的に用いることで,様々な状況に対応出来る柔軟なスキルの育成と,チームワークによるアウトプットの増大を目指す.具体的にはPCサーバ上において研究資源を集中管理しながら,複数の端末からネットワークを介して共同作業を行う.