2017年度研究活動 | 所内研究活動

代表的な媒介言語の比較研究

  • 木村護郎クリストフ(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部ドイツ語学科教授)
  • 市之瀬 敦(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部ポルトガル語学科教授)
  • リサ・フェアブラザー(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部英語学科教授)
  • 井手(武田)加奈子(SOLIFIC共同研究所員)
  • シモン・テュシェ(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部フランス語学科准教授)

概要

2009年度から2011年度まで3年間行ってきた本研究所の共同研究「媒介言語論の展開と深化」は、主に複数言語を使用する媒介、混成言語(ピジン・クレオール)による媒介、計画言語による媒介、覇権言語による媒介といった異なる媒介形態を比較することに主眼をおいた。その成果は共同研究者それぞれによる諸論考や著作の形で結実したほか、直接、比較を行った論考として『Sophia Linguistica』 60号に共同執筆による論文「比較媒介言語論序説」を発表した。

このような、異なるタイプの媒介形態の比較のほか、同一のタイプに属する個別言語が分布や社会背景の違いなどによってどのように異なる特徴をもっているかをより詳しくみていくことも媒介言語の把握のために不可欠である。この点は当初から視野に入れていたが、これまで重点的にはとりくんでこなかった。そこで2012年度より、ヨーロッパに起源をもつ代表的な媒介言語としての英語、フランス語、ポルトガル語、ドイツ語および日本語が異言語話者間のコミュニケーションにどのように使われているのかを比較し、またそれぞれどのような特徴および可能性、問題点をもっているかを問いとして設定した。

これまでそれぞれの言語については個別に研究が積み重ねられてきたが、その成果を、言語をこえて共有し評価するのがまず第一の課題となる。それをもとに、媒介言語としての共通点や相違点を明らかにしていくのがねらいである。具体的には、①各言語の普及機関の比較、②各言語の媒介言語としての機能に関する議論の比較、③各言語の媒介言語としての運用実態の比較を行う。そのことをとおして、媒介言語として非母語話者の間で使われる際の特徴が母語話者同士のコミュニケーションとどのように異なるかという、本共同研究の当初の問いを別の角度から検討することになる。

2015年度は、本共同研究メンバーが企画して9月に行われた言語管理に関するソフィア・シンポジウムで研究の成果を発表した。2017年度は、研究の成果をまとめて刊行することが最大の目的となる。

 

比較統辞論の理論的・実証的研究

  • 加藤孝臣 (SOLIFIC正所員、上智大学言語科学研究科言語学専攻准教授)
  • 福井直樹 (SOLIFIC正所員、上智大学言語科学研究科言語学専攻教授)
  • 高橋亮介 (SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部ドイツ語学科准教授)
  • 加藤泰彦 (SOLIFIC名誉所員、上智大学外国語学部名誉教授)
  • 上田雅信 (SOLIFIC共同研究所員、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院教授)

概要

理論言語学は、過去半世紀の間に著しい発展を遂げてきたが、その注目すべき成果の一つは、人間言語の普遍性と多様性とを、適正な方法論に基づいて正面から問うことができる理論的基盤を確立したことである。言語に普遍性が存在することは、言語が生物学的な種としてのヒトの特性として獲得・使用可能なものであるという事実からの必然的帰結であるが、その一方で、現実の言語には広範な多様性が存在する。言語の普遍的特性は何であろうか。また、言語の多様性の根源は何であろうか。

以上の問題意識から出発し、この共同研究では2012年度から2016年度にかけて、主にドイツ語・英語・日本語の実証的な比較、対照研究に基づきながら、「統辞法の原始演算」「否定と経済性との関係」「生物言語学のメカニズムの因果性」をはじめとする様々なトピックの扱いを通じて言語の普遍性・多様性の実相の一端を明らかにしてきた。さらには、「空間移動表現」「放出動詞」といったトピックを手がかりに、統辞論とレキシコンとの密接な関係にも着目し、語彙特性が様々な文法現象にどのように関与しているのかという点についても詳細な検討を加えてきた。こうした多彩な実証的成果を踏まえ、2017年度も、言語の普遍性・多様性や統辞論とレキシコンのインターフェイスをめぐる諸問題について、引き続き理論的な考察を深めていく予定である。

 

学習ストラテジー、学習スタイル、専攻分野の統計的関連性の研究:

CLILを枠組みとした高等教育における独語、仏語、西語、葡語、露語のカリキュラム、

指導法および評価システム開発のための基礎研究

  • 渡部 良典(SOLIFIC正所員、上智大学言語科学研究科言語学専攻教授)
  • 木村護郎クリストフ(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部ドイツ語学科教授)
  • 市之瀬 敦(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部ポルトガル語学科教授)
  • 原田 早苗(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部フランス語学科教授)
  • 西村 君代(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部イスパニア語学科教授)
  • 秋山 真一(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部ロシア語学科教授)

概要

学習ストラテジー(外国語を習得するために絵学習者が用いる大局的な方法)、学習スタイル(各学習者の外国語学習に対する性向)、および専攻分野(自然科学系、社会科学系、人文系)、これらの間に関係がみられるかどうかを統計的に検証する。究極の目標は、高等教育機関の外国語教育におけるカリキュラム、指導法、教材および評価システムの開発のための基礎データを収集分析することを目的とする。最終的には本学以外で4か国以外の外国語へも敷衍することを目指し、高等教育機関における外国語教育における指導、評価、診断および矯正に役立てるためのシステムを開発することである。

 

教室習得における学習者の日本語能力と個人差要因との関係

  • 小柳かおる(SOLIFIC正所員、上智大学言語教育研究センター教授)
  • 峯 布由紀(SOLIFIC正所員、上智大学言語教育研究センター准教授)
  • 向山 陽子(SOLIFIC客員研究所員 武蔵野大学グローバル学部特任教授)

概要

第二言語習得は外的要因(学習環境、教授法)と内的要因(学習者の特性)、言語形式の特性(発達段階、難易度)などが複合的に絡み合い、複雑なプロセスである。その根底には学習者の内的な認知的メカニズム、さらには脳内メカニズムが存在する。よって、本研究は、英語学習者に比べてまだ研究が少ない日本語学習者について、その複雑な習得過程を解き明かしていくことを目的としている。

これまで本研究では、学習者の言語適性と熟達度との関係を中心にデータ収集や分析を行ってきた。2017年度は、引き続き、学習者の中でも特に上級者の言語適性や動機づけなどの個人差要因との関係を調べるため、データ収集や分析を行う。初中級の学習者と比較しながら、上級に到達するために必要な個人差要因を探る。

また、言語適性や動機づけなどの個人差要因から熟達度との関係を見ていくのとは対照的なアプローチで、学習者の熟達度の違いを個人間の差と見て、それを軸に学習者の脳内活動がどのように異なるかという研究課題についても検討する。特にインプット処理における脳の活性化領域と認知的なメカニズムにおける心理的特性がどう対応しているかを調べ、第二言語習得に必要なインプットの処理スキルがどのように発達していくかを分析する。この課題については、東北大学加齢医学研究所のサポートを得て2016年度にすでにfMRI(機能的磁気共鳴画像)を用いた共同研究をスタートさせているが、上智サイドで心理実験の準備や行動データの分析をする必要がある。

 

高度情報化設備の活用による新しい音声教育の開発と基礎研究

  • 北原真冬(SOLIFIC正所員、上智大学外国語学部英語学科教授)
  • 小松雅彦(SOLIFIC客員所員、神奈川大学外国語学部准教授)

概要

本研究は,2017年度初頭に予定されている音声学研究室の移転に伴い設けられる新たなサーバ室において,研究・教育用に運用するwebサーバおよびクラウドサーバを用いた様々な音声教育の開発と基礎研究を行うことを目的とする.

現在は北原研究室内で小規模なwebサーバを運用し,コンテンツマネージメントシステム(CMS)を利用した授業を今年度開講科目の全てにおいて展開している.MoodleやLoyolaに比べて軽量なシステムの利点は,リアルタイムでの編集がすぐに行えるところにある.また,様々なカスタマイズが可能で,柔軟な運用が行えることは,独自サーバの大きな利点である.例えば,コメント機能を利用し,授業内でも携帯電話からの書き込みによって,クラス内の議論を即時的に,かつ授業後にも記録が残る形でシェアできている.

以上の実績を踏まえ,よりセキュアで大規模なサーバのシステムを開発・運用することが第一の目標である.近年ではスケーラビリティや保守の利便性を考えて,サーバをDockerコンテナなどで仮想化することが一般的になりつつある.サーバ仮想化にまつわる様々なノウハウを吸収しながら,Dockerコンテナの運用に努めたい.その上で,音声教育,特にweb上での簡単な音声実験システムを構築し,手軽に多数の被験者のデータを取ることができるようなシステムを開発・運用するところまでを目指す.もちろん,これは語学教育の様々な場面において応用可能である.さらに,音声実習課題や,発音向上プログラムの開発と,それに必要な基礎研究を進めたい.

また,音声分析,統計,作図などに関するさまざまなスクリプトや自主開発プログラムを音声学研究室内の共有サーバに置き,適切なアクセス権限を設定して,それらを必要とする大学院生・研究所員が自由にいつでもアクセスできるようにしたい.さらに,これらの置き場をサーバ上のプライベートクラウドとして実現し,容量制限や課金などを気にすることなく,研究資源にはどこからでも平等かつ迅速にアクセスできるように環境を整備したいと考えている.