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研究コース紹介

ラテンアメリカ研究コース紹介

ラテンアメリカ研究へのいざない

 ラテンアメリカとは、南北アメリカ大陸およびカリブ海の島々のうち、アメリカ合衆国とカナダを除いた、残りすべての地域のことを指します。メキシコ、ブラジル、コロンビア、ペルー、アルゼンチン、キューバといった国々です。ラテン語から派生したイスパニア(スペイン)語、ポルトガル語、フランス語などを主に公用語とする文化圏の影響を強く受けていることから「ラテンアメリカ」の呼び名があります。日本からみれば地理的にはもっとも遠い地域ですが、100年以上も遡る交流の歴史も、日系人社会の形成を通じた密接な関係をもっているのです。こうした一見遠く、実は身近な存在であるラテンアメリカから、わたしたちはどのようなことを学ぶことができるのでしょうか。

 地域の特質ということでいうなら、何を置いてもまず、その混血性を挙げることができるでしょう。今日の世界では、多民族国家にしても移民にしても、特別めずらしい事柄ではありません。しかし、ラテンアメリカほどそれが地域の本質をなしているところは他にはないでしょう。先住民、ヨーロッパから植民者や移民としてやってきた白人、奴隷としてアフリカから連れてこられた黒人、そして移民・労働力として導入された日本人を含むアジア人。これらの人々が世界のあらゆる場所からそれぞれもちこんださまざまな文化や価値観が織りなすダイナミズムこそ、この地域の基層をなすものといえるでしょう。しかも、グローバル化が進む今日、今度はラテンアメリカ出身の人々が逆に南北アメリカ大陸といった地理的範囲を超えて世界各地に移り住み、独自の文化圏を日本を含むさまざまな場所で形づくっているのです。こうしたラテンアメリカの人々と社会は、その歴史的経緯から同質性が強調され、多様性の受容にはあまり馴染んでこなかった日本にとっては、ものの見方、考え方を相対化する上で格好の存在ではないでしょうか。

 他方、ラテンアメリカ諸国は広大な農地や資源に恵まれ、主要国が新興国として、国際経済を牽引する存在にもなっています。これまでは欧米諸国との経済関係が主流でしたが、今日ではアジアやアフリカ諸国など、太平洋を越えた貿易や国際協力関係を結んでいます。さらに、経済的パートナーとして世界から注目されているだけでなく、ラテンアメリカはその生物多様性の豊かさと多民族性ゆえに、環境問題への取り組みにも先進的な経験をもっています。地域社会と自然環境との共生をめざす開発モデルの構築は今日の世界全体の課題ですが、ラテンアメリカの人々の取り組みから私たちが学ぶことは大変多いのです。

 このように、ラテンアメリカについて学ぶことは、その多様な文化と社会、発展の可能性に触れるだけでなく、ヨーロッパやアメリカ合衆国を、そしてアジアや日本を相対化し、世界に対する複眼的な理解に資することはまちがいありません。ラテンアメリカから学び、ラテンアメリカから考えることで、それまでとは違った視点でものごとをとらえ、新しい発想と意見を発信することにつながるのです。

ラテンアメリカ研究コースの教育・研究上の理念

 以下の視点・手法をもってラテンアメリカ地域について研究し、同地域の総合的理解をめざすことを主たる目的とします。

(1)人文・社会科学の分野を中心にラテンアメリカ地域を研究し、地域の特質および多様性を探求する。

(2)地域の特質を踏まえつつ、ラテンアメリカ地域の特定の国やサブリージョンに固有の事象を考察し、その事象の持つ普遍的意味を問う。

(3)他地域、国際社会との関わり、または比較の観点から、ラテンアメリカ地域の特質を探求し、グローバル化時代における同地域の国家と社会、文化が生み出す新しいダイナミクスに迫る。

(4)確かな外国語運用能力を活かした調査、分析の方法を用いる。

ラテンアメリカ研究コースのカリキュラム

 本研究コースの科目は、イスパニア語(スペイン語)圏の国々を主たる対象とする科目と、ポルトガル語圏であるブラジルを主たる対象とする科目とに大きく分けられます。しかしながら、どの科目にもラテンアメリカという地域全体のことも念頭に置いた上で、ある特定の国やサブリージョンにおける事象についてもとらえようとする姿勢は共通しています。また、ヨーロッパや北米、あるいはアジアやアフリカなど、ラテンアメリカと他地域との関係について、そのなかで扱う科目もあります。イスパニア語学科やポルトガル語学科以外の学生にとっても、ラテンアメリカについて学ぶことの意義は大いにあるのです。

【導入科目】

 本研究コースを選択する学生が1年次からまず履修する「導入科目」では、以下の3つの科目を用意しています。本研究コースでどのようなことが学べるのか、そしてそこにどのような魅力があるのかという、いわばエッセンスを各教員が代わる代わる紹介していくものや、ラテンアメリカを研究する上での基礎として地域の歴史を学ぶ科目があります。

 

<科目例>

「ラテンアメリカ地域研究入門」「西米概史」「ラ米現代史概論」

【コア科目】

 「導入科目」で学んだ基礎をもとに、分野ごとの専門的な学びを深めていくためのものが、2年次以降に履修することのできる「コア科目」です。「人文科学系」と「社会科学系」の2つの系列で約30の科目が開講されています。各自の興味・関心に応じて計画的に履修し、その過程で自分の問題意識をさらに明確化し、研究テーマを絞り込んでいきます。2つの「系列」はあくまでも目安なので、これに縛られる必要はありません。

 

<科目例>

「ラ米先住民の歴史と社会」「ラ米政治社会特論」「ラ米経済概論」「ラ米経済特論」「ブラジル社会開発協力」「特講ブラジル社会開発論」「ブラジル社会概論」「アフロ・ブラジル文化論」「ブラジル文学」「ブラジル現代文学特講」

【演習科目】

 3、4年次には「演習」(いわゆるゼミ)という少人数制の授業が設けられています。これは担当する教員ごとにテーマが設定され、文献の輪読、発表、ディスカッションといった学生参加型の専門的な授業です。また4年次には、通常この「演習」の担当教員に指導を仰ぎながら、大学での学問の集大成ともいうべき長編の「卒業論文・卒業研究」の作成に取り組みます。「演習」における教員とのあいだの、また学生同士の関係の密度の濃さは、他の授業では得がたいものがありますし、大学時代に学んだ成果を「卒業論文・卒業研究」としてかたちに残すことは、必ずや後に「やってよかった」と思えるものです。ラテンアメリカ研究コースで提供される「演習」は、2つの系列で9人の教員がそれぞれ担当しています。

<科目例>

「演習(西米文学研究)」「演習(ラ米社会研究)」「演習(ラ米経済研究)」

「演習(ブラジル政治経済研究)」「演習(アフロ・ブラジル研究)」「演習(ブラジル社会研究)」

履修モデル

以下のモデルに従う必要はありませんが、参考にして自身の履修計画を立てましょう

ブラジルとコロンビアの社会問題を比較的観点から学ぼうとするポルトガル語学科生の場合(第二主専攻として履修)の例

(ポルトガル語学科生の場合:「ブラジル史」は第一主専攻科目として履修するので、ラテンアメリカ研究コース導入科目としては算入できません)

導入科目 ラテンアメリカ地域研究入門、西米概史、ラ米現代史概論
コア科目 ラ米先住民の歴史と社会、ラ米政治社会特論A、ラ米政治社会特論B、ラ米経済概論、ラ米経済特論、ブラジル社会開発協力、特講ブラジル社会開発論、ブラジル政治概論、ブラジル社会概論、アフロ・ブラジル文化論
演習科目 演習(ラ米社会研究)1・2

ラテンアメリカ諸国とアメリカ合衆国の関係を学ぼうとするイスパニア語学科生の場合(第二主専攻として履修)の例

(イスパニア語学科生の場合:「西米概史」は第一主専攻科目として履修するので、ラテンアメリカ研究コース導入科目としては算入できません)

導入科目 ラテンアメリカ地域研究入門、ブラジル史、ラ米現代史概論
コア科目 ラ米政治概論、ラ米政治社会特論A、ラ米政治社会特論B、ラ米経済概論、ラ米経済特論、ブラジル政治概論、特講ブラジル国際関係、ブラジル社会概論、カリブ地域文化論、ラ米産業論
演習科目 演習(ブラジル政治経済研究)1・2

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