満洲班大連調査報告 (上田貴子)

研究分担者・上田貴子さんによる大連調査報告です。
2014.10.04

満洲班大連調査報告

1.概要
・参加メンバー:西澤泰彦・坂部晶子・上田貴子、ゲスト:永井リサ
・日程:2014年8月23日―26日
・調査概要:
今回の調査は大連を舞台にして、西澤による建築物・都市を読むという研究手法が紹介され、日本の植民地大連が今にどう継承されているかを読み解いていった。同時に、現在大連大学で教鞭をとる永井さんとの研究交流を通じて、今後の満洲班の活動の方向性を議論した。

2.見学リスト
・23日土曜日、寺児溝を見学訪問。
・24日日曜日、旧満鉄図書館、旧満鉄本社見学、大連市図書館、大連駅前・中国人街・ロシア人街を見学。王子平女史による旧満鉄図書館案内
・25日月曜日、大連港と星が浦を見学。
・26日火曜日、大連病院、ロシア人墓地・南山を見学。

3.全体を通じて話題にのぼったこと
今後の都市開発プランの多くが、超高層化を計画している。その谷間に保存建築がある。これらのおりあいをどうつけていくのか? 同様に近代建築を多数保存している上海と比べると、大連が個々の建物を個別に保護建築に指定しているのに対し、上海では保存街区を決め、面的保存を計っている。これによって不整合を解消している。

移民の流入による都市の巨大化、移動により期待される高層住宅の購入者、これらによって前の時代の建築物が洗い流されようとしているかのようだ。

現時点で、いくつかの地点で、植民地時代の建築のデザインを流用した再開発がされている。近江町社宅群をまねた南山路のアパート。南山麓の住宅をこわして、そこに再建された南山という住宅地。

また、中山広場の周辺の建物のうち近年たてられた広東開発銀行は広場の雰囲気にあうよう西洋古典建築風である。また人民文化宮(文化館)も西洋古典建築風にリニューアルされている。大連病院も古いデザインを流用して新館をつくっている。

植民地時代のデザインが大連の特徴だという意識で再開発されている。その肯定的利用は東北のハルビン、長春、瀋陽と比べて最も積極的といえる。ただし、大連市政府などの認識は、「洋風建築」「近代建築」が大連の特徴というもの。それを再開発に適用。「植民地時代のデザイン」という認識ではない。これについては、今後議論の余地がある。

4.今後の方針
満洲における移動を考えるにあたり、多民族の活動が重層的に存在した地域であるという視点から取り組む。国境で区切られてしまうのではなく、国境をこえる人々をも含めるべき。列強支配下でのボーダレスな人の動きとそれによって生み出された社会や文化に着目。次年度以降に、極東ロシアへの調査を考える。

5.今後のスケジュール
10月末に今回の調査および今後の方針をふまえて、具体的活動について打ち合わせを行う。
議題は、1月~2月ごろに研究発表会をもつ。その内容について話し合う。

(2014年8月30日:文責・上田貴子)

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