研究の目的
近代は人の移動の時代である。東アジアは西洋近代との接触以来、人の大移動に見舞われてきた。20世紀前半は植民地化、帝国化、戦争の大波、20世紀末はグローバル化の大波に襲われ、人の大移動が生じた。本研究は20世紀東アジアをめぐる社会変動、人の移動、社会統合の連関構造を解明するものである。具体的な目標は以下の3点である。
- 20世紀東アジアを帝国化、帝国崩壊、冷戦、グローバル化等の社会変動で時代区分を行い、各国家・地域の時代ごとの人の移動の多様な有り様と連関構造を明らかとする。
- 各時代各地域における移民等「移動するマイノリティ」の経験とそのホスト社会での社会統合の有り様を明らかとする。
- 歴史的、地域横断的に比較研究し、グローバル社会や環太平洋の文脈にある東アジア独自な歴史的地域的な「移動するマイノリティ」の社会統合の有り様を明らかとする。
研究の方法
本研究は学際的かつ国際的な共同研究を行う。メンバーは社会学、歴史学、地理学、人類学、民俗学という様々な研究領域の研究者からなる国際的で学際的な共同研究班である。
- 共通テーマのもと6研究班毎にそれぞれの具体的なテーマを分担して研究を進める。
- 年3回のワークショップ、数回のサブ研究会、特別研究会等を開催して議論を重ねる。
- 海外の研究協力者とのネットワークを生かし、国際的で学際的な共同研究を行う。
期待される研究成果と意義
冷戦期の東アジアでは人の国際移動が制限されていた。そのために、従来の人の移動研究は、20世紀末のグローバル化による人の移動研究に関心が集中されていた。本研究は、20世紀初頭からの一世紀に及ぶ人の移動と社会統合の歴史性と地域性を比較研究する。
- 20世紀東アジアに通底する人の移動と社会統合に関する新機軸を探る。
- 人の移動と社会統合を歴史的でグローバルな視点からその独自性を明らかとする。
- 20世紀東アジアをめぐる人の移動と社会統合の具体的な研究を提示することでこの領域の新境地を開拓する。
- 21世紀東アジア社会の歴史的地域的な独自性とグローバル性を明らかとする。
- 本研究の成果を国際的に発信するだけでなく、広く社会全般に発信していく。
本研究は科学研究費補助金・基盤研究A(課題番号:25245060)の助成を受けている。