報告 |
今回の研究会では、和田光弘先生(名古屋大学)をお招きし、近著『記録と記憶のアメリカ:モノが語る近世』(名古屋大学出版会、2016年)について、その主要な論点をお話しいただきました。同書は、植民地時代から独立革命期にかけてのアメリカの歴史を、斬新な方法論と独自の史料論を駆使して描き出しています。今回の発表では、近世アメリカ史をめぐる事実史(記録)と記憶史(記憶)を、「モノ」概念を中心に据えて包括的に理解する、という同書のユニークな分析枠組みについてご説明いただきました。また、デジタル史料の活用など、最新のアプローチを採用することで、新たなアメリカ史像を構築していく可能性が示されました。発表後の質疑応答では、「モノ」という鍵概念の有効性について、実践的な史料論の観点から活発な議論が行われました。また、記憶の構築/再構築のプロセスや、大西洋世界という分析枠組の意義についても、さまざまな意見が出ました。ひとつひとつの史料を丹念に読み解いていく、という基本的な作業を地道に続けることが、歴史をよりよく理解するうえでいかに大切なのか、あらためて確認するよい機会となりました。 |