著者と語るシリーズの第三回目は、廣田秀孝先生(ニューヨーク市立大学)をお迎えし、先生の近著『Expelling the Poor』についてお話しいただきました。学部の卒業論文を発展させ、出版にたどり着くまでのご苦労を、ユーモアを交えながらお話しくださいました。アメリカにおける移民批判の言説は、人種や宗教という思想的な理由でなく、貧しさという物質的条件に由来するものであり、アメリカは移民に対し非常に厳しい国であった点を、ご指摘なさいました。「アメリカ人とはなにか」という問いに、思想的でなく物質的な視点で臨み、「自分の力で稼ぐことが出来る人」という実力主義的な要素が、「アメリカ人」というアイデンティティーに関わっていたことを、非常に明快に提示しておられました。現在のアメリカに通底する理念が、実は19世紀の移民政策を萌芽にしていることが、分かりました。
また出版に至るまでのプロセスも具体的な事例を通してお話しくださりました。アメリカで学術出版を出版する方法や出版事情についての説明もあり、今後アメリカで論文を出版する予定の研究者にとって、有益な情報でした。学部生からも非常に示唆に富んだ質疑があり、有意義な時間でした。(報告者:皆川祐太、文学研究科英米文学専攻博士後期課程3年)
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