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第19回研究会報告

日時:2003年12月6日(土)9:00-11:45
場所:神戸大学六甲台キャンパス(文学部155演習室)
出席者:8名

1. 事務連絡・情報交換

(1)研究会の今後の運営方針について議論がなされ,いくつかの財団に対して助成を申請する必要があるとの意見が出され,その可能性が検討された。最終的な結論には至らなかったので今後の検討をメーリングリストなどを通じて行うことが確認された。

(2)今回の研究会には岡山市在住で一橋大学博士課程在籍の山口裕子氏が参加された。山口氏は,研究されている東南スラウェシ州ブトン島を中心に分布するブトン語文献にジャウィ文字が使われていることからジャウィ文字に関心を持たれたとのことであった。

(3)山口氏より同じく岡山市から来られたテグー・セハヌディン(Teguh Sehanuddin)氏が紹介された。テグー氏は文書保存修復技術の専門家で,吉備国際大学社会学部文化財修復国際協力学科に在籍されている。スンダ地方で作られている樹皮紙ダルアン(daluangまたはdaluwang)の実物を持参されてきたので見せていただく。外見的には和紙に似た紙を製本したもので,テキストはジャウィ文字で表記されている。スンダ地方では第二次世界大戦の後しばらくまでダルアンが生産されていたとのことで,テグー氏はダルアン紙の技術の継承とダルアン文書の保存に努力しているとのことであった。ダルアン紙はタパの原料でもあるカジノキ(Broussonetia papyrifera,コウゾ属)から作られた「紙」であるが,漉くのではなく叩き延ばして紙状にしたもので,製作方法の詳しい説明もあった。スマトラ島の樹皮紙の存在はよく知られているがジャワ島でもこのような紙が使われていたことは初めて知ったことであり,衝撃的であった。(注:テグー・セハヌディンの片仮名表記は本人の希望によるものである。)

(4)事務局より,次号のニューズレターにおいてテグー氏によるダルアンについての紹介,坪井氏による今回の講読テキストのまとめを掲載したい旨,依頼がなされた。

2. テキスト講読

Jubilee Address by Perak ra'iyats, June, 1887. JSBRAS (1886) No.18, pp. 369-371. テキスト・翻字案提供:坪井祐司.1887年のヴィクトリア女王即位50周年記念に際してペラク在住の住民たちから送られた祝辞である。テキストの中心部分は4連1組のパントゥンの形式をとった韻文となっている。前回に講読したペナンからの祝辞と比較すると,美辞麗句に流れて内容が空虚なように感じられた。ヴィクトリア女王がキリストの庇護を受けていると言明されていること,現地駐在の理事官(resident)Hugh Lowの名前が言及されていることが目に付いた。

3. 今後の活動

次の第20回研究会は,日程は6月12-13日に東京大学駒場キャンパスで予定されている第71回東南アジア史学会研究大会の前後の日程にあわせて開催し,講読するテキストは今後メーリングリストにて会員の意見を聴取して決定する。事務局は,次回研究会にあわせて次号のニューズレターの発行をする予定である。

(文責:青山 亨)