研究会・出張報告(2008年度)

   出張報告

期間:2009年3月10日~24日
国名:フィリピン
出張者:川島緑

概要:
 フィリピンのキターブや、その他イスラーム関連文献の収集、および、イスラーム書の保存・収集・出版状況の調査を目的として、マニラ首都圏、および、南ラナオ州マラウィ市とその周辺で資料収集・調査を行なった。マニラには3月11日、および、19-23日の6日間滞在し、マニラ市キアポ地区のイスラミック・センター、ゴールデン・モスク周辺で、イスラーム関連文献を収集するとともに、モスク関係者やイスラーム学校関係者に対して聞き取り調査を行なった。フィリピン国立図書館ではフィリピンのイスラーム書の所蔵につして調査を行なうとともに、マルティメディア部門において、米国統治初期の南部イスラーム地域に関する植民地行政文書を調査し、20世紀初頭の比米戦争写真コレクション(ギヴンズ・コレクション)を閲覧し、ミンダナオ関連の一部写真の複写を行なった。さらに、フィリピン大学総合発展研究センターを訪問し、同センターのミンダナオ研究プログラムの研究活動について聞き取り調査を行い、同センター発行のフィリピン・イスラーム関連資料を収集した。また、アテネオ・デ・マニラ大学リサール図書館、および、マニラ市内の書店で文献調査と資料収集を行なった。
 南ラナオ州マラウィ市には、3月12-18日まで7日間滞在し、ミンダナオ国立大学ホステルに宿泊して、同大学図書館、同マミトゥア・サベル研究センター、同アガ・カーン博物館等でミンダナオのイスラーム文献に関する資料調査を行なった。また、市内のイスラーム学校やイマームを訪問し、イスラーム文献の保存・収集状況について調査を行なうとともに、同市の公設市場内のイスラーム関連商品販売店でイスラーム書を購入した。さらにラナオ湖南岸にあるビニダヤン町、バヤン町を訪問し、19世紀初頭にこの地域で活動した聖者、ムハンマド・サイード(ハジ・サ・ビニダヤン)の墓やモスクを見学し、この聖者に関する地元の伝承について聞き取り調査を行なった。また、ダンサラン学院ピーター・ガウィン記念研究センター図書館で、イスラーム文献に関する調査を行い、資料の複写を行なった。
 マニラ首都圏、および、南ラナオ州において、大学や国立図書館ではイスラーム書の体系的保存・収集はほとんど行なわれておらず、ウラマーやイスラーム学校関係者などが個人的に所蔵している場合が多い。現地研究者と協力しつつ、所有者の理解を得てこれらの個人所蔵資料のリストを作成し、保存することが必要である。
 (川島緑)