研究会・出張報告(2008年度)

   研究会

日時:2009年3月9日(月)15:00~17:00
場所:上智大学2-630a号室
発表:イツハク・ワイズマンItzchak Weismann
   "The Islamic Other: Fundamentalism and Sufism in the Muslim World and Beyond"
概要:
 20世紀に入り、近代やグローバル化と呼ばれる現象を経験してきたナクシュバンディー教団は、イスラームの内部に生じたムスリム同胞団などを中心に、スーフィズムを批判するさまざまな改革運動と接触し、ときには衝突や論争が生じ、またときには協調関係を構築するなど、複雑な展開を見せてきた。そればかりではなく、近年北米を中心とする多宗教的が混在する状況の中で、「非ムスリムのスーフィーNon-Muslim Sufi」の出現や、「タサウウフの無いスーフィズムSufism without Tasawwuf」などの現象が見られるようになった。
 グローバル化に伴い、ナクシュバンディー教団が原理主義者だけでなく他宗教と接触する中で、ナクシュバンディー教団のシャイフたちが、それらに対してどのように挑戦し、どのように共生の道を探っているかを、世界各地の事例を挙げながら論じた。20世後半以降、新たなシャイフの形態として北米に住むインド系のナクシュバンディー教団に関する事例をとり挙げ、心理学をはじめとする西洋近代的な学問体系との結びつきについて論じた。
 Weismann氏は、「近代」や「グローバル化」という状況を考えるとき、ナクシュバンディーであることのもっとも重要な要件が、「ムスリム」であることを示し、前近代のシャイフを中心とする師弟関係やイジャーザの問題はもちろん、「アブラハム的理解」に依拠しながら、合衆国に拠点を置く教団組織を事例に、キリスト教徒もユダヤ教徒も取り込んでいくという状況を説明した。また、シリアでは、ハマー暴動などに象徴される事件があったにもかかわらず、クフターローがアラウィー派の世俗主義体制側と共存している事例や、デーオバンド派との協調関係などを挙げ、スンナ派以外のセクトやナクシュバンディー以外の教団組織とも共存している状況を説明した。
 (若松大樹・上智大学大学院外国語学研究科博士後期課程)