研究会・出張報告(2008年度)

   研究会

日時:2008年12月13日(土)13:00~17:00
場所:京都産業大学12号館5階 12521教室

発表1:13:00~15:00
 杉山佳子(上智大学)
 「フランス保護領チュニジアにおける教育改革―言語、宗教、ライシテ(1883-1908年)」(日本語)→報告①
 コメンテーター:工藤晶人(大阪大学)
発表2:15:00~17:00
 Hamdi Murad (Balqa applied Sciences University, Islamic Shariia Collage)
 "Amman Message: The fact, the True of Islam"(英語)

報告②
 2008年12月13日京都産業大学(12号館12521)で実施された、「イスラーム主義と社会運動・民衆運動」の研究会に参加し、ヨルダンのイスラーム主義運動の実態や、ヨルダンが中心になって推進する「アンマン・メッセージ」プロジェクトの概要を説明した。
 特に、ムラド氏自身も起草に加わったヨルダン政府の「アンマン・メッセージ」の内容が詳しく説明された。論点は、(1)近年のイスラームが直面する危機の実態に対する認識、(2)イスラームの本来的性格の確認、(3)イスラームにおける過激主義、(4)今後のイスラーム諸国の課題などについてであった。(1)については、イスラームに対して、イスラームを敵として描き出すような勢力による悪意ある攻撃があり、同時にイスラームを信仰するとしながらその名の下に無責任な行動をとる者による攻撃があることを指摘した。(2)に関しては、イスラームが皮膚の色、人種、宗教の違いにかかわりなく、(アダムの子孫としての)全人類的な立場をとっており、正義(アドル)を主張しながらも他者の権利を尊重するような寛容に特徴づけられることを強調した。(3)について、イスラームは元来、過激主義や極端主義や狂信主義に対し反対する立場をとってきており、それはこのような行動が逆に否定的結果を引き起こすということを予見する理性を覆い隠すものであるとし、近年のテロリズムも批判した。(4)に関しては、正しくイスラームの内容を伝える指導者の育成とイスラーム諸国のあいだの連携が必要であり、ヨルダンの王室もムハンマドにつながる正統な立場から、イスラーム本来の主張が理解されるよう努力しているとした。
 参加者からはヨルダンが積極的にイスラームの問題にかかわる背景についての質問や、実際に過激派が登場するヨルダン社会の現状などについての質問が寄せられ、活発な議論が展開された。ムラド氏は、この報告により、日本のイスラーム研究者との有意義な意見交換の機会を得て、日本のイスラーム研究者のイスラームに対する高度な理解と関心の所在を確認することができ、イスラーム研究の国際的交流の重要性を改めて確認することができたとした。
 (北澤義之・京都産業大学)