出張報告
- スペイン出張報告(2017年3月2日~3月8日)
国名:スペイン
出張者:野口舞子(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科・博士後期課程)
概要:
本出張において、出張者はスペインのマジョルカ島およびイベリア半島東海岸地域においてイスラーム史跡や博物館訪問を含む現地調査と、マドリードの書店において文献調査を行った。
マジョルカ島パルマ・デ・マジョルカは、1229年にアラゴン連合王国のジャウマ1世が征服するまで、3世紀以上にわたりイスラーム勢力下にあった。しかし、イスラーム期の建物はアラブ浴場跡を除き、多くの場合、征服後に取り壊されるか、別の建物に転用されてしまい、現在ではあまり様子を知ることはできない。転用された建物としては、アルムダイナ宮殿(要塞から転用)や大聖堂(モスクから転用)などが挙げられる。この他に、市壁や入り組んだ路地などから当時の様子がしのばれる。以上に加え、マジョルカ博物館においては、来年以降イスラーム期の展示が始まるという有益な情報を得た。
パルマ・デ・マジョルカの中心アルムダイナ宮殿とカテドラル
パルマ・デ・マジョルカ旧市街の通り
デニアとアルメリアでは、イスラーム期に使用された城塞が史跡となっている。現地調査を行うことで、当時のイベリア半島東海岸地域の地理的状況と町の構造を理解することが出来た。
デニアの城塞Castillo(外観)
デニア城塞遺跡
アルメリアの城塞alcazabaでは、入り口に11世紀にアルメリアで独立し、同城塞を築いたハイラーンKhayrān al-‘Āmirī(1028年没)の銅像が建っていた。パルマ・デ・マジョルカではイスラーム期のものがほとんど見受けられなかったのに対し、アルメリアではイスラーム期を称えるモニュメントが確認でき、同じスペイン国内でも対照的なとらえ方をしており興味深い(なお、アルメリアはイスラーム期の史跡が数多く残るアンダルス自治州に属す)。
アルメリア城塞とハイラーンの銅像。
足下の銘にアルメリア王国成立1000年を記念して2015年に当時の首長により設立されたとある。
移動中には、上記の都市以外のロルカなどでも、これまで認識していなかったイスラーム期の要塞を確認したため、今後の調査・研究の足がかりとなった。
以上に加え、マドリードでは市内書店において前近代のマグリブ・アンダルス史に関する研究文献、史料校訂等を購入した。
文責:野口舞子(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科・博士後期課程)