出張報告

国名:トルコ
出張者:荒井 康一(上智大学アジア文化研究所・客員所員)

概要:
 本出張において、出張者はアンカラで開催された第4回中東研究世界会議WOCMES(Fourth World Congress for Middle East Studies)に参加し、またアンカラとイスタンブルにおいて、トルコの社会経済状況およびマイノリティ問題に関する文献調査・現地調査を行った。


 8月18日から22日まで開催されたWOCMESは、世界各国から中東研究者が参集し、394のパネルが設置されるという、非常に大規模な大会となった。そのうち、現代トルコに関するものとしては、特に与党AKP(公正発展党)やギュレン運動などに関して、ネオリベラリズムやポスト・イスラミズム論といった観点からの研究が増加しているという傾向がみられた。また宗教的マイノリティであるアレヴィ派についての報告では、スンナ派中心のAKP政権がアレヴィ派の宗教的シンボルを積極的に活用しようとしているのに対し、アレヴィ派の側は引き続き世俗的な傾向を維持しているため、ミスマッチを起こしていることなどが指摘された。



トルコ統計局(TUIK)


トルコ水利庁(DSI)

 アンカラでは、このほかに国家統計局および水利庁を訪問し、トルコの社会経済状況や、今年行われた地方選挙および大統領選挙などに関する統計類などの情報を入手した。



旧市街クムカプにある16世紀から続くギリシャ正教会、Panayia Elpida Rum Kilisesi


アルメニア教会主教座


アジアサイド・カドゥキョイ繁華街のギリシャ正教会、Aya Eufemia Kilisesi

 また、イスタンブルではギリシア正教・カトリックおよびアルメニア正教の諸教会を訪問した。アジア側にあるカドゥキョイ地区は、かつて単性論が異端とされたキリスト教公会議が行われた舞台であるカルケドンであり、現在も多くの教会が残されている。また、新市街およびカドゥキョイの古書店街等で宗教マイノリティ問題および社会経済問題に関する文献収集をおこなった。


カドゥキョイ地区の古書店街

文責:荒井 康一(上智大学アジア文化研究所・客員所員)