授業紹介:国際安全保障論1
教員からのコメント Comment of Professor
「安全保障」という言葉を日常で目にする機会が増えてきているのではないかと思います。国際政治において、世界の国々が自国の安全や利益を確保していくこと、他国の追求する価値を尊重すること、国際社会全体の平和と安定を維持していくこと、これらを同時に実現するのは簡単なことではありません。他方、日米や欧州のように、かつて敵対関係にあった国同士においても戦争の可能性が著しく低下したり、対立はしていても戦争にはならなかったり、あるいは部分的にではあっても軍縮の取り組みが進んだりするケースも見られます。いったいなぜ、こうしたことが起こるのでしょうか。「国際安全保障論1」では国際政治学/安全保障論の分野でこれまでに積み上げられてきた理論と歴史的事例に触れながら、このメカニズムを理解するための基本的な考え方を学んでいきます。
この講義では、安全保障の問題について「学術的に考え、表現する」ということを重視しています。たとえば戦争をすべきでない、核兵器を廃絶すべきである、防衛費を増額すべきだ、同盟を強化すべきだ、といった議論はしばしばみられます。これらはもちろん現実に大事な問題ですが、まずはなぜそのように考えるのかということを、思い込みや信念ではなく、論理と証拠によって判断する力を身につけてほしいと思っています。なお、「国際安全保障論2」では、同様の問題意識から出発しつつ、日本の安全保障政策や日米関係の事例を中心に、より具体的な政策課題についても考えていきます。
学生からの声 class interview
本講義では、国際政治の理論やメカニズム、歴史を学んだ上で安全保障とは何かについて考えます。安全保障と聞くと軍事色が強く感じられるかもしれませんが、最近ではサイバー、経済、エネルギーなどにまで射程が広がっており、それらについても認識を深められる講義です。
一年生のときに必修で受けた授業のおかげで国際政治学に関心を持ち、さらにその中でも最近の国際秩序に大きな影響を与えている米中関係に最も関心を持ちました。この2カ国に限らず、最近の国際関係の中では経済や技術など何もかもが安全保障として重要視されており、この問題について理解を深めたかったため履修しました。
毎回授業後にリアクションペーパーを提出しますが、その解答が次の講義で行われる上、示唆に富んだ学生の意見も共有されるため、より意欲的に授業に参加できます。さらに、最近安全保障を揺るがすものとして新興技術がよくあげられるようになってきましたが、これらの問題に関しても先生の研究分野であることから、深い学びを得ることができます。
グローバル化が進んだ現世界では、他の国と関係していくことは必至であり、その中で安全保障が問題に取り上げられるのは今後も続く傾向と考えます。その中で私はキャリアとして日本と他の国をつなげるような仕事や貿易などに従事したいと考えているため、安全保障や国際関係について知識を深めることで将来、社会においてに貢献していくことにつなげたいと考えています。
(総合グローバル学部 3年生 藤山萌)
国際安全保障について、政治学的理論や政治的イデオロギーを踏まえた上で、現状の国家間のパワーバランスを各国の安全保障政策によっていかに維持し安定させるかということが焦点となっています。加えて安全保障論で基礎的概念となる軍拡や抑止の原理、武器輸出などの具体的な内容についても学習します。
イスラム国などが例に挙げられるように、テロ組織などの非政府アクターによる非合理的な国家へのアプローチに国家単位でいかにして安全保障政策をとり対抗するのかという自身の関心や、履修登録時タイムリーにロシアによるウクライナ侵攻が勃発し、そこでの「抑止」の失敗に衝撃を受けたため、履修することとしました。
内容がとにかく面白く、近年話題になっているサイバー攻撃や宇宙空間における安全保障など、ファンタジーのような現実の話が安全保障分野では多くあり興味深いです。安全保障と一括りにいってもあらゆる事象と関連づけることができ、自身の興味分野と絡めて考えることができる点が魅力であると感じています。
齊藤准教授のゼミに所属しているため、安全保障論の基礎知識を身につけた上で自身の関心のある非政府アクターと関連づけて卒論につなげたいと考えています。
(総合グローバル学部 3年生)