授業紹介

授業紹介:(特講)人の移動と在日コリアン

担当教員:権 香淑
カテゴリ:特講(400シリーズ)
レポート日:2020/01/07

FGSの学生は普段どのような科目を履修し、どのようなことを学んでいるのでしょうか。
今回は権 香淑先生による科目「(特講)人の移動と在日コリアン」をご紹介します。

教員からのコメント Comment of Professor

日本の外国人のなかには、大きく分けると、ニューカマーと呼ばれる、近年に来日した人々と、オールドカマー(英語ではオールドタイマー)と呼ばれる、戦前にさかのぼる旧植民地出身者がいます。この講義では、両者の歴史的、文化的なバックグラウンドの違いを踏まえつつ、戦後最大のマイノリティ集団といわれた在日コリアンの形成過程について取り上げています。
「人の移動と在日コリアン」と題しているとおり、この授業では、グローバルな現象である人の移動という観点から、個別具体的な在日コリアンの事例を捉えなおすことを試みています。そのような作業を通して、在日コリアンを多角的に理解することはもちろん、日本社会や世界のありようの縮図を読み取るという狙いもあります。
特講(400シリーズ)として、ある程度はこのテーマの基礎知識がある学生を対象としていますが、「知っていること」と「理解すること」は異なります。講義のみならず議論や発表の時間も多く取り入れながら、在日コリアンという他者、そして履修生自身である自己を理解し、自他をめぐる深い気づきや学びが得られるような授業を目指しています。

学生からの声 class interview

・ジェンダー研究の中で「慰安婦」問題に出会い、強い興味を持っていた。しかし日本による植民地支配責任についての議論はとても複雑で、1人で学ぶことに限界を感じていた。そんな時、今期からこの講義があることを知り、在日コリアンというイシューを通して、朝鮮に対する支配と差別の歴史を正確に学びたいと考えて、履修を決めた。また、在日コリアンといえば日本社会で今に至るまでずっと人種差別の最前線に立たされてきた存在というイメージがあった。だからこの講義を通して、差別や排除、偏見や暴力が起きる仕組みについても学びたいと思った。
日本の学校教育でタブー視されがちな植民地支配や戦後処理について、知識として真正面から知り、整理することができる。そして、在日コリアンを「身近に共生する存在だ」と認識し、差別や排除を「彼ら自身ではなく、マジョリティである日本社会側の問題である」と自覚していくことができる。また映像鑑賞や、学生同士の意見交換の機会が多く設けられており、1つの問題について色々な視点を持つ力や、能動的に考える力が身に付く。
ムードルを通して小課題を提出する機会が多く、自分の考えを簡潔でわかりやすい文章にすることの訓練になる。論文の書き方について、先生が授業内でオススメ書籍を提示してくれるのだが、これを愚直に読んで実践するとかなり「書く力」が付くので騙されたと思って真面目に取り組んだ方が良い。総合グローバル学部開講の授業だが、移民などに関して最低限必要な知識は授業内で扱ってくれるので、特講ではあるが他学部生でも問題なく受講できると思う。
蔵内靖恵さん(総合グローバル学部総合グローバル学科4年生)

・この授業を履修したのが2019年秋ですが、その少し前から日韓の外交問題に関する報道は増えていました。あいちトリエンナーレで慰安婦像の展示が非難されたこと、その他たくさんの日韓関係を巡るニュースの情報量に圧倒される中で、正しいことだけでなく明らかに事実関係が間違っているものや、書店に並ぶ「嫌韓本」と呼ばれる本や雑誌にあるような差別的思想も以前より目に付くようになりました。「誰が発信しているか」に頼ってニュースを読むだけではなく、まずは在日コリアンについてもっとよく知り、テーマについて自分の考えを持った上で流れてくる情報を判断できるようになりたい、目の前で横行する差別には対抗するための根拠と言葉を持ちたい、と考えるようになりこの授業を履修することに決めました。
「在日コリアンの歴史をもっと知りたい」と考えて履修した人がこの授業では私以外にも多くいました。近代史をマイノリティの視点から学ぶことで、高校時代の日本史では習わなかった知識を新たに得ることができるのでこの点では非常に満足しています。また、複数回あるディスカッションでは総合グローバル学部の学生と議論をすることが多いので、普段の授業とは違った雰囲気があり新たな考えを知る機会に恵まれて非常に刺激を受けています。
授業中に何度か、在日コリアンの人々が今日まで抱えてきた問題はあらゆる面で今の日本の問題も現わしている(凝縮している)、といった言葉を耳にしましたが、確かにこの授業を履修したことで、日本国内にいる在日コリアンだけでなく、ほかの在日外国人の処遇の問題や日本の歴史教育の問題など多方面に目が向くようになりました。この授業で学んだことがきっかけとなって、自分なりに関心の幅を広げることができるのもこの授業の魅力だと感じています。
歴史的史料からつい最近撮られたドキュメンタリーまで、授業で使われる映像・写真資料がかなり豊富です。その感想から今までの自分では想像もつかない考え方や疑問点がたくさん出てくるので、学科やそれまで受けてきた教育・バックグラウンドが異なるだけで、一つの映像についてもこんなに見方が違うのか、と驚くことも少なくありません。
(文学部新聞学科4年生)

・この授業では、在日コリアンをめぐる歴史的事実や現在の状況を様々な側面から捉えていきます。中でも、国籍や人権、法的地位の問題などから、日本社会が直面する課題について考えを深める事が出来ます。
総合グローバル学科の授業を受ける中で、国を超えた人々の移動に興味を持つようになりました。そしてこの授業のタイトルを見た際に、移民というグローバルな問題をより身近な例から考えられるのではないかと興味を持ちました。また日本社会の中で在日コリアンが経験してきた過去や現状を学ぶことで、今後の日韓関係はもちろん、包摂的な社会の在り方や世界の移民問題を考えていきたいと思い、履修を決めました。
私は今まで、在日コリアンの歴史を学ぶ機会がほとんどありませんでした。そのため授業で扱われる内容に衝撃を受けたり、問題意識を強く持ったりと、毎回の授業がとても刺激的です。とりわけ自分が学校教育で学んできた歴史というのは、過去の出来事のほんの一部分であることを強く意識するようになりました。様々な立場に立って、多角的に歴史を捉えることが重要だと考えるようになったのです。
また先生が紹介してくださる映像資料や文献では、在日コリアンの生の声や実体験に数多く触れていきます。それにより、彼らが経験してきた苦悩や差別は決して他人事ではなく、自分たちが解決すべき社会問題であると認識するようになりました。そしてこれは、日本や世界が共生社会を築くうえでも取り組むべき課題であると考えています。
さらに受講生同士のディスカッションが多いことも魅力の一つです。総合グローバル学部生だけでなく、他学部の学生とも意見を交わす中で、新たな気づきや価値観を身につけることが出来るのです。インプットだけで終わらずに、それぞれの知識や考えをアウトプットできる実践的な場であると感じています。
堀井満里奈さん(総合グローバル学部総合グローバル学科3年生)

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