授業紹介:東南アジアのイスラームと社会
FGSの学生は普段どのような科目を履修し、どのようなことを学んでいるのでしょうか。
今回は久志本裕子先生による科目「東南アジアのイスラームと社会」をご紹介します。
教員からのコメント Comment of Professor
この授業では、主に文化人類学の視点から東南アジアのイスラームと社会に関わる様々な事象を論じています。イスラーム、というと中東の宗教と思う人が多いですが、人口では東南アジアのムスリム(イスラーム教徒)は世界のムスリム人口の約15%を占めていますし(中東・北アフリカは合わせて約20%)、一つの国家という単位でムスリム人口が世界で一番多いのはインドネシアです。
イスラームが誕生したのは7世紀ですが、東南アジアにイスラームが本格的に広まったのは14~15世紀以降とされているので、東南アジアには「あとから」情報が来る、というイメージも正しいのですが、インターネットで世界がつながる現在では中東がイスラームの学問などが進んでいて東南アジアが遅れている、という図式は必ずしも成り立ちません。東南アジアから発信される新しいイスラームの実践のあり方や、考え方も多々あるのです。この授業では、こうしたダイナミックな東南アジアのイスラームと社会の関係を、できるだけ日常の個々のムスリムの生き方や考え方のレベルに寄り添う形で(=ここでいう、文化人類学的な視点で)考えていくことを目指しています。
このため、授業の中ではほぼ毎週、みなさんに文献を読んで予習をしてきてもらい、それにもとづいて少人数グループでディスカッションをしてもらうということをしています。また、マレーシアのムスリムの大学生とインターネットでつないでライブで質疑応答をしたり、今学期はちょうど前半が断食月にあたっていたので、東京ジャーミイでのイフタール(断食明けの食事)と講演会に10人くらいずついくつかのグループに分かれて参加してもらうなど、直接ムスリムと関わってもらう機会を作っています。「聞いているだけ」ではないので学生の方々には大変なところもあるとは思いますが、イスラームについてニュースなどで見聞きする事柄がいかに限られているのか、ムスリムの視点でみるとこう見えるのか、といった、新しい見方をする実感を得てもらえたらと思います。
学生からの声 class interview
・必修科目のキリスト教人間学を通じて、信仰の力の強さ、宗教の意義に気付き、もっと深く考えたいと思っていました。そんな折にムスリムの友達が出来て、彼女の信じるものがなんなのか、知りたくなりました。また、イスラームといえば中東というイメージが強かったので地理的にも日本と近い東南アジアで生きるムスリムがいることが意外で、関心を持ちました。
予習で身につけた知識を授業内で掘り下げ、他の受講生と共有し、フィードバックする、という体系だった学びによって思考が深まります。また、現地の学生との会話やモスク訪問によって自分の中にあった宗教への偏見に気付き、考えが変わっていきます。その実感に自分で感動しました。ひとつの文化について一度きちんと学ぶことは他の分野の学問や研究にも役立つと思います。
(総合グローバル学部4年生 蔵内靖恵)
・今までFGSの授業では、イスラム教をトピックとして扱った授業はいくつかありましたが、「東南アジア」というアジア地域かつイスラム教に焦点をおいた授業の開講は初めてであり、自身がアジア専攻という点とマッチしたので履修を決めました。
基本的に毎回予習教材が用意されており、文献を読んで自分で要約、年表を作成したりすることで授業に対する理解が深まります。また、授業中にディスカッションの時間も設けられているため、自分では気づかなかった新たな視野を獲得できます。
(総合グローバル学部3年生 八巻夏葵)
・(授業を履修しようと思ったのは、)もともと東南アジア地域に興味があり、将来的には東南アジア地域研究をメジャー分野として知識を深めようと思っているため。また、東南アジア地域における宗教にも興味があり、特に関心を持っているインドネシアではイスラームが広く信仰されており、この授業を受講すればこれまで知らなかったインドネシアのことについて知ることができるのではないかと思った。さらに、この授業を担当していただいている教員の久志本先生が昨年までマレーシアにいらっしゃったとのことだったので、かなりフレッシュな情報を得られるのではないかと考えた。
(この授業の魅力は、)マレーシアの学生とテレビ電話をつないで、同年代のムスリムの生活について質問をする機会があったり、フィールドワークとしてモスクに行って講義を聴いたりと、座学だけではなく、実際にイスラームを信仰している人に話を聞くことができるところ。また普段の授業でも、イスラームの基礎(イスラームはどのような宗教なのか、何を信じているのか)から、それが東南アジアにおいてどのように広まり現在に至るまでにどのような歴史的事象が起こったのかということまで広く学ぶことができる点も魅力だと思う。
(総合グローバル学部2年生)