授業紹介:演習(国際協力論1・2)
FGSの学生は普段どのような科目を履修し、どのようなことを学んでいるのでしょうか。
今回は田中雅子先生による科目「演習(国際協力論1・2)」をご紹介します。
教員からのコメント Comment of Professor
「ゼミと他の講義は何が違うのですか?」という問いに、私は学生から見て次のような違いがあると答えています。講義は教員の話から学ぶInputの時間、ゼミは自分の学びを発表や論文という形に変えてOutputし、仲間と深め合う時間だと。そのために、教室を離れて映画館や資料館に皆で出かけ、考え方や感じ方の違いを確認する時間を大切にしています。
2016年は「自治体、外国からの移住者、日本の地域住民から見た「多文化共生」―NPOや相互扶助組織の役割と社会資源の活用―」をテーマに群馬県大泉町で、2017年には「本土で暮らす私たちの当事者性を問う―沖縄で考える軍事主義と暴力、排除」と題して沖縄でフィールドワークを行いました。
ゼミには貧困や差別をなくす手段としての国際協力に関心をもった学生がやってきますが、最初は遠い世界で実践する「他人事」としてとらえがちで「自分事」として考えるのを避ける傾向があります。私自身、南アジアや西アフリカで教育や保健、災害対策、平和構築などの実務に関わりましたが、帰国後、外国にルーツをもつ住民への相談援助や、ホームレス状態にある人たちへの訪問ボランティア、ジェンダー差別をなくすための運動に市民として関わるようになって、ようやく根底にある構造的な課題が理解できるようになりました。外国に出かけていかなくても、国際協力は日常生活の中でも実践できること、また、自分が変わらないと世界を変えられないことを学生にも体感してほしいと考えています。
ゼミを通じて、情報を読み解くメディア・リテラシーや権利について敏感になるリーガル・リテラシーを鍛え、性別、性自認、性的志向、年齢、障害の有無、民族、国籍や母語の違い、婚姻関係や家族構成、就労状況による立場の違いに起因する差別や格差に気づくようになることが3年次の目標です。さらに、その克服に向けて、ジェンダーや多様性に実践的配慮ができるようになり、勇気をもって社会を変える行動に踏み出す市民となって巣立っていく学生を育てることが私の目標です。
学生からの声 class interview
・私は「身近な国際協力」といえるフェアトレードに関心があり、市民運動とそのアクターについて深められる点に魅力を感じて、このゼミを選択しました。ゼミの特徴のひとつは、実践的な学びの機会が多いことです。2017年6月には、人身売買の被害に遭ったネパール人女性のチャリマヤ・タマンさんを授業に招きました。彼女はサバイバーの当事者団体シャクティ・サムハの設立メンバーのひとりで、被害に遭った女性や少女を支える活動をしています。日本でもJKビジネスやAV出演の強要など、性が商品化されていることを彼女が提起してはじめて、私たちは「自分たちの身の回りにこんなにも多くの問題が潜んでいるのだ」と気づかされました。「被害に遭っている人が身近にいたら、そのことを言い出しやすいような環境をつくり、解決策を提示する」など、自分にできることは何か、彼女との出会いから深く考えさせられました。このようにゼミで取り上げるトピックを通じて、自分と社会をより密接に結びつけて考えることができます。(米原槙子/総合グローバル学科3年)
・「外国語学部生なのに総合グローバル学部のゼミなの?」と友人に驚かれることがあります。私は語学力を高めたいと考えて英語学科に入学しましたが、国際協力に携わりたいという思いを捨てることはできませんでした。そこで総合グローバル学部のゼミを選びました。この決断によって外国語を学びながら国際協力について学ぶことができています。ゼミでは、国際協力の中でも特にジェンダーに起因する問題についての発表や、学生同士の意見交換によって、最終的に自分が何を研究していきたいのか問題意識を深めていきます。関心が近いメンバーが集まっているので、自分の発表に対しても的確な指摘をもらえます。私は健康とジェンダー格差について調べ始めたところですが、自分と違った視点をもった仲間の意見に耳を傾けることの大切さを感じています。ゼミの時間には、普通の講義とは全く違う緊張感があります。(田村柚菜/外国語学部英語学科3年)