授業紹介

授業紹介:中東研究概説

担当教員:赤堀雅幸
カテゴリ:基礎(200シリーズ)
レポート日:2017/07/12

FGSの学生は普段どのような科目を履修し、どのようなことを学んでいるのでしょうか。
今回は赤堀先生による科目「中東研究概説」をご紹介します。

教員からのコメント Comment of Professor

必修科目である「地域研究入門」を踏まえて、社会人が中東について知っていて当たり前のことがらを学ぶとともに、より専門的に学ぶ地域を選択する材料を提供し、中東についてさらに高度な学びへと進むためのステップを示すのが「中東研究概説」です。「中東研究概説」という講義は、どんな大学にもありそうで実はなかなかありません。1970 年代に日本人が「中東」という地域に政治と経済の両面から大きな関心を惹かれた時代には「中東」を理解するための様々な試みがなされましたが、やがてそれは「イスラーム」理解の問題へとすり替わっていき、現在、多くの大学では「イスラーム入門」や「イスラーム文明論」は盛んに講義されていますが、「中東」をイスラームに限定せずに広く捉える講義はめったに見なくなってしまいました。2014 年に地域研究を柱の一つとする総合グローバル学部を開設するにあたり、「中東イスラーム」ではなく「中東」について総合的に語る授業を展開してみたいと思ったのが、この講義の始まりです。この講義では、イスラーム以前からの数千年にわたる歴史の積み重ねと、現在の豊かな文化と多種多様な問題のありようを、諸々の学問分野からの視点を絡めて順に説いていきます。それともう一つ。この講義は、じっくり話を聞いてもらうことに力を注いでいます。人の語りに耳を傾け、基礎となる知識や考え方をある程度蓄積して初めて、能動的学修(アクティブ・ラーニング)は意味をなすからであり、いたずらに能動的であることを求めるばかりが知を磨く方法ではないからです。

学生からの声 class interview

・そもそも「中東」とはどの地域を指すのか、なぜそのような地域概念が生まれたかという根本的なところから始め、歴史、地理、政治、経済、宗教など多くの視点から中東にアプローチしていくのがこの授業です。履修を決めたきっかけは、大学入学前にアラビア語とイスラームに興味を持ったことでした。その後、中東に関する情報を自分なりに収集したのですが、グローバル社会において無視することのできないこの地域についての報道や周囲の人のイメージは、「戦争」、「テロ」、「過激派組織」などといったマイナス要素ばかり。このような偏見にとらわれず、中東地域やそこに住む人たちの本当の姿を理解するためには、正しい知識を身に着ける必要があると考え、この授業を履修しました。この授業の魅力は何といっても先生が繰り広げるトークです。現地の人たちと生活を共にしながらおこなったという調査など、豊富な経験をもとに余談やユーモアを交えながら、わかりやすく、そして熱く中東地域について解説してくださいます。また、近代における「国家」の定義、中東の近代国家の成立過程、イスラーム主義などの思想についても触れるので、国際関係、政治制度、政治思想に関心を持っている人にとっても、この授業はとても魅力的だと思います。(上地虎太朗/外国語学部ロシア語学科1年)

・この授業では、中東について、宗教や文化だけでなく、産業や気候、政治や経済の分野に至るまで広い範囲が扱われます。近年の中東情勢は、いわゆる「イスラム国」の台頭などテロや紛争が相次ぎ、それが国際問題となりつつあります。そのような情勢について大学入学前から興味があり、この授業を履修しました。日本人にとって「中東」のイメージといえば、沙漠の真ん中でラクダに乗っているムスリムの遊牧民が悠々自適に生活しているか、紛争などで怖い場所、というものかもしれません。しかし、この授業を受けると先ず初めにそれが如何に誤ったイメージであるかを知ることになります。この授業をとおして、幾度となく現地に渡っている先生の実体験などを踏まえながら中東に関する幅広い基本知識を身につける事ができ、中東という日本から離れた地域を身近に感じられるようになります。また現在の中東が抱える諸問題の原因について、国際政治学など、様々なディシプリンを結びつけながら学ぶことができます。たとえば、先日(6月29日)はパレスチナ問題について西暦60年頃まで遡って学んだのですが、その際、パレスチナ問題の背景として思われがちな民族紛争や宗教紛争だけではなく、世界大戦や近代的な国際政治の形成において思想的背景にあるナショナリズムをめぐる議論や中東の地域的特徴など、様々な角度からパレスチナ問題の原因を考えました。(西本拓海/総合グローバル学科1年)

・中東の地理的な概念から始まり、歴史や経済、社会などについての基礎的な知識を学び、また、パレスチナ問題など、「今」の中東の情勢について、先生の豊かな語りを中心に行われる授業です。関心を持っている領域がアジア地域のため、1年生の頃はほとんどアジア関連の講義のみを履修していましたが、アジアについてだけ学ぶのはもったいないと感じ、友人のすすめや赤堀先生の講義自体に興味を持ったことがきっかけとなり、履修しました。指定のテキストなどはなく、レジュメもそこまで詳しいものではないのですが、雄弁な赤堀先生の豊富な知識や経験から、中東について多角的に、楽しく学ぶことができます。また、毎回の講義を通じて、先生をロールモデルとして、人類学者とは、研究者とはどんなものであるのかを知るきっかけにもなるのが、この授業の大きな魅力です。話が膨らみ、授業計画から大幅に遅れることもありますが、赤堀先生の楽しそうな姿が印象的で、講義を受ける学生側も、楽しく引き込まれながら講義に参加できます。(沼崎暉/総合グローバル学科2年)

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