研究会・出張報告(2014年度)

   出張報告


日程:2015年3月14日(土)~3月20日(金)
用務地:インドネシア・ジャカルタ
用務先:宗教省イスラーム教育局、宗教省研究開発局
出張者:服部美奈(名古屋大学・教授)

 本出張は、インドネシアの学校教育で新しく施行された2013年カリキュラムにおける宗教教育の位置づけと新政権発足後のイスラーム教育の変化に関する資料・情報の収集を目的とした。宗教省イスラーム教育局マドラサ教育課、宗教省研究開発局を訪問し、関係者へのインタビューを行うとともに、スナン・カリジャガ国立イスラーム宗教大学、インドネシア教育大学の研究者へのインタビューを行った。また、宗教省研究開発局において、宗教省が刊行している数種類の学術雑誌・書籍等の収集を行った。
 2013年カリキュラムにおける宗教教育の時間数は従来の2006年カリキュラムよりも増加しており、人格教育に果たす宗教教育の役割が重視されている。これは宗教省管轄のマドラサだけでなく教育文化省管轄のスコラも同様である。マドラサではアラビア語のほか、イスラーム宗教教育科目として①クルアーン・ハディース、②アキダー・アフラック、③フィクフ、④イスラーム文化史が教えられる。従来のカリキュラムとの間に科目名の変化はないが、イスラーム文化史、アキダー・アフラックはより多くの学年で教えられるようになった。またインタビューによると、異なる宗教・文化に対する寛容や平和、中庸の教えが強調されるようになっているとのことであった。新政権後の変化としては、2014年度(学校暦では2014年7月)から2013年カリキュラムを導入した一般学校に対して、2014年12月、現教育大臣は、同カリキュラム導入の一時停止を決定し、それらの学校の非宗教科目については2006年カリキュラムが適用されることになった(これ以前に導入した学校については継続)。一方で、一般学校で教えられる宗教科目およびマドラサにおける2013年カリキュラムの停止はなく、2013年カリキュラムを採用する学校数を段階的に増加させ、2020年には完全実施となる予定である。
 宗教省で刊行されている学術雑誌には、HARMONI-Jurnal Multikultural & Multireligus, PENAMAS-Jurnal Penelitian Keagamaan dan Kemasyarakatan, EDUKASI-Jurnal Penelitian Pendidikan Agama dan Keagamaan, DIALOG-Jurnal Penelitian dan Kajian Keagamaan等がある。これらの学術雑誌には、プサントレン(イスラーム寄宿塾)やマドラサを対象とした現地調査の成果が掲載されており、近年のイスラーム研究の動向を把握することができた。


文責:服部美奈(名古屋大学・教授)