研究会・出張報告(2014年度)

   研究会報告

日時:2015年3月17日(火)14:30~17:30
場所:上智大学四谷キャンパス2号館6階615-a会議室

 2015年3月17日、フランスのIREMAM(地中海アラブ・ムスリム研究センター)研究員である政治学者ムハンマド・ハシュマーウィー氏を招聘し、日本の若手研究者との交流を兼ねて、研究会が行なわれた。報告者は、高橋雅英氏(上智大学大学院・博士前期課程)と白谷望氏(同大学・博士後期課程)の2人で、これらの報告に対し、ハシュマーウィー氏からコメントがなされた。
 まず初めに、高橋氏が「ブーテフリカの炭化水素政策―2005年炭化水素法がもたらした制度変化(Bouteflika’s Hydrocarbon Policy: Institutional Change Effected through the 2005 Hydrocarbon Law)」というタイトルで、報告を行なった。この報告では、アルジェリアにおいて2005年に制定された「炭化水素法」に注目し、ブーテフリカ大統領が炭化水素部門と国営石油会社「ソナトラック」を自身の管理下に組み込む過程が検討された。これまでの研究では、2005年炭化水素法は市場志向型の自由化政策として捉えられてきた。しかし実際には、同法の制定には幾つかの制度変化が伴っており、結果的に炭化水素部門と国営石油会社は、大統領の直接管理下に置かれることになったと、高橋氏は説明した。
 続いて白谷氏は、「モロッコにおける名目的民主主義の新たな戦略―与党・野党のローテーション(A New Strategy under the Name of Nominal Democracy in Morocco: The Rotation of the Ruling Parties and the Oppositions)」というタイトルで、隣国モロッコに関する報告を行なった。この報告では、「アラブの春」によって再確認されたモロッコ王制の安定性を、議会と選挙の役割に注目し、「与党・野党のローテーション制」という新たな概念を提示して分析を行った。 両方の報告に対するハシュマーウィー氏の指摘として、個別の事例を分析する際、その前提条件となる国家における政治ゲームのルールを丁寧に理解することの重要性が共通して挙げられた。それは例えば、政治ゲームの真の統治者、支配勢力/エリート間関係、政策決定の手続き、そして政治ゲームのルールが構築された歴史的背景などである。
中東諸国と比較して、マグリブ研究は日本ではまだ専門家が少ない。しかし、「アラブの春」や、2013年に起きたアルジェリア南部のイナメナス・ガスプラント人質事件、そして最近のチュニジアでの国立バルドー博物館の襲撃事件など、その政治動向に注目が集まっている。今回、日本のマグリブ地域を専門とする若手研究者が、その第一線で活躍するハシュマーウィー氏から直接コメントを頂き、また出席者を含め活発な議論・意見交換が行なわれた。そうした意味で、本研究会は今後さらなる発展が期待されるマグリブ研究において、大変貴重な機会になったと言える。

文責:白谷 望(上智大学グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻博士後期課程)