研究会・出張報告(2013年度)

   出張報告


期間:2014年1月20日(月)~28日(火)
国名:アメリカ
出張者:濱中新吾(山形大学・准教授)

概要:
 本出張ではハーバード大学図書館に所蔵されている、(1)対外政策と国内世論との関連についての国際政治理論、(2)イスラエルおよびパレスチナを対象とした、和平ないし戦争に対する政策的態度の実証分析、の資料調査を行った。
 ハーバード大学図書館は大小様々な図書館からなる蔵書システムの総称である。図書館の利用はあらゆる研究者に開かれているが、本務校の図書館から利用を依頼するレターを発行してもらうと調査がスムーズになる。レターをLibrary Privileges Officeに提出すると訪問研究者(visiting researcher)の利用カードを発行してくれる。カードがあれば、セキュリティゲートを通過することができる。
 ハーバード大学図書館の蔵書はHollisという統合検索システムを使って探すことになる。出張者の専門分野から、実際の調査はワイドナー図書館、ケネディ図書館、ラモント図書館の3つで行った。ワイドナー図書館は中央館であり、ケネディ図書館は公共政策・国際関係大学院であるケネディ・スクールの資料室、ラモント図書館は学部生向けの学習図書館という位置づけである。
 ワイドナー図書館は蔵書システムの中核に位置する最大の図書館である。ただし訪問研究者に対しては閉架利用となっている。資料のタイトルやナンバーを専用サイトに入力し、図書館員に運んできてもらい、閲覧室で読むことになる。ケネディ図書館とラモント図書館は開架式であり、訪問研究者でも自由に書架から取り出して読むことができる。ケネディ図書館のコレクションは外交実務に直接アプローチするスタイルの文献が多く、計量分析や数理分析を駆使する国際政治研究はあまり目立たない印象を受けた。
 ハーバード大学図書館について特筆するべきは、電子化への対応である。ハーバード大学に所属する研究者であればScan & Deliverというサービスによって、著作権の範囲で書籍の電子ファイルを届けてもらうことができる。訪問研究者の場合は自分でスキャナーを操作し、PDF化した書籍の一部を利用料無料で入手できる。電子ジャーナルや電子ブックのコレクションが充実していることは言うまでもない。
 ハーバード大学図書館には「ユダヤ研究セクション」や「中東研究セクション」といった専門調査研究セクションが存在する。各セクションには研究者や専門図書館員が配置され、体系的な資料収集を行っている。こうしたセクションが収集する資料には、イスラエルやパレスチナの独立系研究機関が発行したワーキングペーパーや会議録といった流通度合いの低いものが多く含まれている。
 なお今回の文献調査では私市研究室で博士号を取得し、ケネディ・スクールで博士研究員を勤める溝渕正季氏の助力を受けた。記して感謝したい。

 文責:濱中新吾(山形大学・准教授)