研究会・出張報告(2012年度)

   出張報告


期間:2013年2月23日(土)~3月28日(日)
国名:インドネシア
出張者:服部美奈(名古屋大学・准教授)

概要:
 以下、3つのテーマを中心に調査および研究者との交流を行った。
 第一のテーマは、子どもの通過儀礼にみるイスラームと地域文化の融合に関する調査である。大学および各地域の文化観光局で資料収集を行うとともに、現地調査は西スマトラ州タナ・ダタル県と中部ジャワ州スマランで行った。通過儀礼は、①新生児誕生に際しての儀礼、②アキカ、③剃髪の儀礼、④割礼、⑤ホッタム・クルアーン(クルアーン読誦修了式)を中心に、子どもが誕生してからバリフ(男子は精通、女子は初潮)に至るまでの時期に行われる儀礼を調査対象とした。調査の結果、儀礼の型には共通性がみられる一方、実施時期や儀礼の具体的内容には多様性がみられた。
 第二のテーマは、プサントレン(イスラーム寄宿学校)におけるイスラーム指導者養成の現代的課題に関する調査である。西ジャワおよびチルボンで訪問したプサントレンは、プルサトゥアン・イスラム・タロゴン(ガルット)、ファティア・イドゥリシヤ(タシクマラヤ)およびダルル・タウヒード・アルジャウィナグン(チルボン)である。調査では、どのような指導者であるべきか、あるいはどのような指導者を養成すべきかについて主宰者を対象に聞き取りを行った。イスラーム指導者養成に関して、個々のプサントレン主宰者の教育観・指導者観が教育活動に反映されると同時に、共通する現代的課題が浮き彫りとなった。
 第三のテーマは、インドネシアで展開するトルコ系学校に関する調査である。ジャカルタではトルコ人の実業家が組織するパシアド・インドネシア(PASIAD Indonesia)を訪問し、学校展開の方針や背景となる思想・教育観を尋ねた。同時に、パシアドと現地の学校法人あるいは地方政府との共同で設立されたトルコ系学校を訪問した。具体的には、カリスマ・バンサ・バイリンガル・ボーディング・スクール(デポック)、スラゲン・バイリンガル・ボーディング・スクール(中部ジャワ州スラゲン郡)、スメスタ小学校(中部ジャワ州スマラン市)である。
 これらの調査の他、国立イスラーム大学(ジャカルタ、ジョグジャカルタ)および国立イスラーム専門大学(パダン)、ディポネゴロ大学人文学部、アンダラス大学人文学部を訪問し、研究者との意見交換を行った。

 (服部美奈:名古屋大学・准教授)