研究会・出張報告(2012年度)

   出張報告


期間:2012年12月8日(土)~17日(月)
国名:インドネシア
出張者:菅原由美(大阪大学大学院 准教授)

概要:
 まず、スラウェシ島南部に位置する南スラウェシ州の州都マカッサル(Makassar)において当地で出版されているキターブの収集をおこなった。マカッサルでは、ジャワ特に、スラバヤから多くのキターブが流入し、販売されていたが、ブギス・マカッサル語(ロンタラ文字/ブギス文字)のキターブがまだわずかに販売されていた。ロンタラ文字のみで書かれたもの、またはローマ字やアラビア語が併記されたものなどがあった。ただし、それらもすべてかつて出版されたものの残部であり、新しく出版されたものはないと説明を受けた。ロンタラ文字の出版物は、キターブ以外においてもほとんど見られなくなってきているようであった。マカッサルから約140キロ北上したところにある町、センカン(Sengkang)周辺は古いプサントレン(イスラーム学校)があることで有名であるため、訪問し、そこでロンタラ文字のコーランの出版者と会い、一部を購入した。残念なことに、そのコーランも現在は出版されておらず、全巻を入手することはできなかった。
 次に、スマトラ島東部リアウ州の州都プカンバル(Pekanbaru)を訪問し、キターブ収集をおこなった。プカンバルで出版されているキターブはなく、当地のプサントレンではアラビア語のキターブを使用していたが、ミナンカバウ人が開いている書店で、ブキット・ティンギなどでかつて出版されていた古いキターブが販売されていたので、それを購入した。また、リアウ州では、小学校・中学校でジャウィ文字教育をおこなっており、その教科書とジャウィを用いた郷土文化学習教科書が数多く販売されていたので、それを購入した。

(菅原由美:大阪大学大学院 准教授)