研究会・出張報告(2010年度)

   研究会

日時:2011年2月26日(土) 15:00~17:00
場所:上智大学2-630a号室

発表:
 Marc Toutant (CETOBAC, EHESS-CNRS, France)
“Approaches to the Literary Imitation Process in Timurid Central Asia: ‘Ali Shir Nawa‘i’s Khamsa and the Persian Tradition”

概要:
 バルセロナにおける第3回中東研究世界大会で、本グループが主催した部会で発表を行ったトゥタン氏は、中東アジアのスーフィー文学、とくにアリー・シール・ナヴァーイーの文学活動を専門とする研究者であり、さらに研究協力を推進すべく上智大学アジア文化研究所が同氏を招聘したところから、研究所およびKIAS4との共催により、氏の中心的なテーマについて研究発表をお願いした。
 アリー・シール・ナヴァーイーはペルシア語による文学表現を主流とするディムール朝期にあって、チャガタイ文学の確立者として知られるが、トゥタン氏はペルシア語で書かれた先行する五書(ハムサ)ナヴァーイーのそれとの関係の考察から、ナヴァーイーには脱ペルシア語を狙った民族主義的な意図があったわけではなく、むしろ言語を変更しつつも知的伝統の継続に重きが置かれていたという新たな解釈を提起した。
 残念ながら、本グループの研究への参加者には文学を専門分野とする研究者の数が少ないが、幸いにして複数の専門家の参加を得ることができ、グループ参加者にとっては新たな視点からノンスーフィズムへのアプローチについて知るよい機会となると同時に、トゥタン氏の解釈の斬新さと論証面での問題点を中心に当該分野の研究をめぐる議論としても深みのある研究会とすることができた。
(赤堀雅幸)