研究会・出張報告(2010年度)

   研究会

日時:2010年12月7日(火) 15:15~16:45
場所:上智大学2-630a号室

講師:Mohamed Kacimi El-Hasani (アルジェ大学・社会学部教授、CREAD研究員)
タイトル:「アルジェリアの女性のスーフィー、Lalla Zaynab(d.1904)」

概要:
 本講演会では、アルジェリアのスーフィー教団(ラフマニーヤ教団)の導師の家系に属するムハンマド・カースィミー氏(アルジェ大学社会学部教授)を講師に迎え、19世紀末から20世紀初頭に活躍した女性のスーフィー指導者ラーラ・ザイナブに焦点を当てながら、近現代アルジェリア社会とスーフィズムとの関わりについての講演がなされた。
 ラーラ・ザイナブは、1897年から1904年までラフマニーヤ教団のザーウィヤ(スーフィー修道場)の一つエル・ハーミルの指導者を務めたスーフィーとして知られる人物である。女性がザーウィヤの指導者として活躍する珍しい例であると言えるが、氏によれば、ラーラ・ザイナブ以前にも北アフリカでは女性スーフィーが指導者として活躍する事例がいくつも見られたという。
 カースィミー氏は、ラーラ・ザイナブの受けた教育や指導者としての活動を紹介しながら、彼女がいかにしてスーフィズムの伝統を継承しながら、植民地支配下のアルジェリア社会でスーフィー教団の活動を展開していったのかを解説した。彼女の指導者としての活動の中でも特に重要なものが、先代から引き継いだモスク建設事業であり、彼女は寄進に頼らず自身の財産のみでモスクの建設を進めたという。そして、ドームの形状や内部の装飾など、モスクの随所にラーラ・ザイナブは彼女独自の様々な意匠を凝らしていた。カースィミー氏はこうした意匠の象徴する意味について解説を行った上で、ラーラ・ザイナブが、先代から継承したスーフィズムの理念と女性としての美徳を兼ね備えた「生きる」模範を体現する存在であったと結論付けた。
(高橋圭)