研究会・出張報告(2009年度)

   研究会

*文部科学省委託事業との共催
日時:2010年3月13日(土)15:00~17:00
場所:上智大学2-630a号室
講演:
ハリーファ・シャーテルKhalifa Chater(チュニス大学)
 “Nationalism and Islam in Tunisia under the French Colonial Period”
アリフィン・マンスールIik Ariffin Mansurnoor(ブルネイ・ダールッサラーム大学)
 “Nationalism and Islam in Southeast Asia: Genesis and Outgrowth”

概要:
 最初に行われたシャーテル氏の発表では、チュニジアにおけるアイデンティティ形成について明らかにされた。植民地化以前のチュニジアでは、イスラームがアイデンティティへ多大な影響を及ぼした。その影響は国家の基盤を形作り、フランスからの独立後に国家建設を行ったブルギバも、チュニジア人共通のアイデンティティ形成を目的とした際イスラームをその中核として採用するなど、イスラームは国の支柱をなすものとなった。今回の発表では、植民地化以前と植民地時代に焦点を当て、独立運動やその指導者の言説などの分析を通じて、チュニジアでどのようにアイデンティティが形作られたのかが議論された。
 マンスール氏は、東南アジアのナショナリズムの形成過程に関して発表した。東南アジアのアイデンティティは地域色が強く、高地や川辺などの比較的孤立した地域においては緊密に結びついた小規模なもの、人口密度が高い地域ではより大規模で、国王や皇帝、スルタンの政治的、宗教的権力や言語、宗教、慣習などに基づいた複雑なアイデンティティの存在を確認することができる。これらのアイデンティティは普遍的なモラルであり、共有される宗教、言語、法律、そして習慣などを通じてある範囲において権力を行使するものとして認識され、君主を中心として政治の縮図や承認行為として発展した。その例として、マレーシアやビルマ、シャム、ヴェトナム、ジャワなどが挙げられた。
 (堀内彩・上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士前期課程)