研究会・出張報告(2009年度)
研究会- ハサン・バンナー読書会(2009年8月22日~23日ホテル明日香)
日時:2009年8月22日(土)~23日(日)
場所:ホテル明日香
○8月22日
SIASグループIでは現在、「イスラーム主義運動と民衆運動」とのテーマの下、横田貴之氏(日本国際問題研究所)を中心として、報告者も含む10名程度の有志によってハサン・バンナー著『論考集』(Hasan al-Banna, Majmu‘a Rasa’il al-Imam al-Shahid Hasan al-Banna, Alexandria: Dar al-Da‘wa, 2002, 480 pp.)の翻訳・出版プログラムが進行中である。2009年8月22~23日に箱根で実施された本合宿は、同プログラムの一貫として実施された。
本合宿一日目においては、午後の会合でメンバー各々の翻訳担当箇所に関する進捗状況が報告されると共に、夕食後の会合で重要タームに関する訳語の確認がなされた。進捗状況に関しては、最終的に2011年4月の出版(岩波出版より)に向け、2010年5月を暫定的な締め切りとして設定している中、概ね順調に進んでいることが確認された。重要タームの訳語に関しては、バンナー自身が重要ターム(例えば、「ウンマ[umma]」、「カウミーヤ[qawmiya]」、「ワタニーヤ[wataniya]」、「ダアワ[da‘wa]」など)を『論考集』において様々な意味で用いていることから、統一的な見解に達することは当初から困難が予想され、事実、参加者からは訳語に関して様々な意見が出され、活発な議論が展開された。その結果、訳語に関してはある程度のコンセンサスを確立することができたと共に、ある程度の自由裁量の余地を残しつつ各々が翻訳を進めていく中で柔軟に対応していくこと、極力カタカナ表記は避けること、そして、最終的には訳文が全て出揃った後に改めて議論を行うこと、などの方針が確認された。今回の議論した重要ターム・難解表現は、金谷美紗氏が翻訳の指針を取りまとめ、作業用HPを通じて翻訳チームで共有することとした。
全体としては、これまでの進捗状況を踏まえ、有意義な議論が交わされたと総括して良いだろう。同時に、2010年5月の暫定的な締め切りに向け、今後も翻訳に尽力していく必要性を痛感した。
(溝渕正季・上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程)
○8月23日
「ハサン・バンナー論考集翻訳プロジェクト」合宿2日目の8月23日(日)は、今後の翻訳作業の予定と分担者に関して議論を行い、以下のことを決定した。
第1に、今後の翻訳作業方針。本合宿の開催までに翻訳作業が行われていない章のうち、英訳等が存在しない章を優先して作業を割り当てる。
第2に、今後作業を行う章と各章の作業分担者。上述の方針に則り、以下の章につき各分担者が作業を進める。
(論考集掲載順)
・「クルアーンの旗の下のムスリム同胞団」…清水雅子
・「イスラーム体制の状況における我々の課題」…溝渕正季
・「統治制度」…金谷美紗
・「経済制度」…北澤義之
・「ムスリム女性」…吉川卓郎
・「我々は現実主義者なのか」…前半:福永浩一、後半:石黒大岳
・「信仰箇条」…前半:横田貴之、後半:髙岡豊
第3に、翻訳作業の日程。上述の各章の翻訳作業は、2010年度のイスラーム地域研究・上智大学拠点グループ1の第1回研究会当日を締め切りとし、それまでに各分担者は作業用のウェブ上に訳文を掲載する。研究会当日に翻訳グループの会合の時間を設け、作業の進行状況を確認し、問題点などに関して議論を行う。同時に、まだ作業が行われていない章につき分担者を決定する。
第4に、翻訳作業の留意点。今後の作業については、合宿1日目の訳語等に関する議論を踏まえると同時に、ウェブ上で作業における問題点を共有・議論しつつ各自作業を進めることとする。なお、本合宿までに作業が行われた分担分についても、合宿1日目での議論を考慮して各自で適宜修正し、ウェブ上に掲載する。
(清水雅子・上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士前期課程)