研究会・出張報告(2009年度)

   研究会

日時:2009年5月23日(土)15:00~17:00
場所:上智大学11-320号室
発表:若桑遼(上智大学)「独立前チュニジアのザイトゥーナ・モスクとウラマー―al-Majalla al-zaytuniyyaの分析を通じて」
コメンテーター:横田貴之(日本国際問題研究所) 

概要:
 若桑氏の報告は、チュニジアのイスラーム教育機関の一つでナショナリズム形成にも重要な影響を与えたザイトゥーナ・モスクのウラマーたちの思想傾向と、1950年代前半を中心に、とくに独立後の主流になる世俗主義との関係を、彼らの雑誌al-Majalla al-zaytuniyyaに掲載された論稿を史料として考察、分析したものである。その主要論点は、ネオ・ドゥストゥール党に代表される世俗主義(政教分離)の潮流が主流になっていく過程で、ザイトゥーナのウラマーたちが、とくにカリフ制を主張しつつ、イスラーム体制の擁護の論陣をはったこと、しかしナショナリズム運動、独立運動がネオ・ドゥストゥール党の主導権のもとに大きなうねりになっていく中で彼らが埋没せざるをえなかったこと、などであった。
 一次史料に基づくザイトゥーナ・ウラマーと世俗主義、ナショナリズムとの関係を論じた初めての研究であり、大きな関心をよび、活発な議論が交わされた。またコメンテーターからはエジプトなどとの比較の視点の重要性も指摘された。
 (私市正年)