研究会・出張報告(2008年度)
出張報告- ヨルダンにおけるイスラーム運動の調査(2009年2月12日~22日)
期間:2009年2月12日~22日
国名:ヨルダン
参加者:吉川卓郎(立命館アジア太平洋大学兼任講師)
概要:
本出張では、ヨルダン政治・社会情勢、中でもイスラーム主義を巡る動向を中心に調査を実施した。また、2008年秋以降の世界金融危機、そして同年末からのガザ危機という特殊な状況に鑑み、これらがヨルダン社会に与えた影響についても留意した。主な訪問先は、以下の通りである。
1.イスラーム、イスラーム主義関係
(1)イスラーム行動戦線党(アフマド・アブーアーイシャ党事務局部長):
国民議会での党活動、党を取り巻く情勢、ガザ支援活動について取材。
(2)ムスリム同胞団
本部、系列施設の見学等。
(3)当地イスラーム法学者(ハムディー・ムラード元ワクフ省ムフティー)
各種のイスラーム関連法が成立した背景、ムスリム同胞団系ウラマーの活動について取材。
2.大学・研究所関係
(1)ヨルダン大学戦略研究所(ファーレス・ブレイザート副所長)
民主化・イスラーム主義関連の社会調査の計画、共同調査の可能性について意見交換。
(2)国際情勢・地中海研究所(ムスタファ・エイエダート所長)
大衆動員におけるイスラームの役割について意見交換。
(3)ウルドゥン・ジャディード研究所(ハニ・ホーラーニー所長、他)
近年のヨルダン社会の動静について取材。その他、同研究所が主催する、政府情報の市民への公開に関する専門家ワークショップに出席。
(4)アルフセイン・ビンタラール大学(アーデル・アルハッターブ准教授)
南部地方における社会情勢、イスラームを含むアイデンティティの変遷について取材。今後の共同研究の可能性について意見交換。
3.所感・今後の課題
イスラーム主義に関する取材が主であったものの、大半の訪問先で経済問題が話題となるなど、金融危機の影響が強く感じられた。またガザ危機以降、ムスリム同胞団を含めた社会諸勢力による街頭行動や言論活動が緩和された向きがあり、興味深い。
今後の課題としては、政府系イスラーム機関・関係者との関係強化にも努めたい。また、現地研究者との共同研究についても、前向きに検討したいと考える。
(吉川卓郎)